タイムリープ
「あっつ!あっついよシグマ爺!」
「もうちょいでございますよ姫様」
「なんでこんな事に…」
AM1:00、あたし達はマシンに乗り込んで真夜中の登山をしていた。
タイムマシン・Σ零式はタイムリープするのに莫大なマナを必要とする事がわかったからだ。
途方もない程のエネルギーを得るためあたし達はとあるモンスターの住む火山にやってきた。
「雷竜帝ジルレウス……そいつの放つ莫大なマナをどうやって手に入れるっての?シグマ爺?」
「あそこにジルレウスの巣があるのが見えますね?」
「うん」
「おっきい卵がありますね」
「うん」
「奴の卵を盗んで怒らせて、雷撃を食ら……」
「出きるかっ!」
この爺、頭上に見えるあのドラゴンが見えねぇのか?
あたしが見上げると、マグマ色と言う言葉があるのならそれを表したかのような体膚をした竜が電撃放ちながら飛行しているのが見えた。
あんな奴からこのタイムマシンのアンテナに電撃を浴びようなんて狂気の沙汰である。と言うかマシンがバラバラになりそうである。もっと別な方法を考えるべきである。
「シグマ爺…やっぱり他の方法を……っていねぇ!?」
後に乗り込んでいたシグマ爺は既にそこにおらず
目の前の岩窟の中の巣にそろりそろりと忍び足で近ずいていた。ピンク色の卵がそこに何個か見えた。
「卵、捕ったどーー!!!」
「馬鹿野郎おおおおおお!!」
「ギャアアアアアアス!!(怒)」
卵を捕ったシグマ爺に向けて、ジルレウスが電撃を放つ。右に左にとシグマ爺が華麗に避けながら、あたしのほうに走ってくる。シグマ爺は卵を足元に投げてボレーシュートを放った。
「シュートおおおお!」
シグマ爺が卵を蹴ってタイムマシンにぶちこんだ。あぶなっ顔面にあたるぅ!?
「はっ!キャッチ!じゃねぇ!この糞爺!」
「ギャアアアアス!」
怒りに狂ったジルレウスはあたしの乗り込んだマシンを攻撃してくる。あわわわわ。
「わ、わ!ひええええ!」
タイムマシンの右手左手を使ってガードする。
「姫様!もっとジルレウスの奴を煽って!ほら!プギャーって!」
「出きるか!」
「ギャアアアアス!」
私を崖っぷちにまで追い詰めたジルレウスは羽を大きく広げて雷を帯びて……ってあわわ!あんなの食らったら死ぬ!
一番ヤバそうな攻撃をしそうな気配を感じたその時!シグマ爺が手を広げて、私の前に立った。シグマ爺!盾になってくれるのね!?
「Yo!Yo!お前の母ちゃん!デーべそ!お前のものは姫様のもの!お前の卵は姫様のもの!」
「火に油注いでんじゃねー!!」
「ギャアアアアスス!」
怒りに狂ったジルレウスが咆哮した。
そして私とタイムマシンは莫大な電撃を浴びた。
青く光る電撃がタイムマシンにぶち当たると、タイムメーターがぎゅるるると回転を始めた。
「まだ生きてる!?えっなんかメーター回ってるんだけど!?シグマ爺!どゆこと!?」
シグマ爺の姿は見えなかった。電撃を浴びた私とタイムマシンはあの瞬間、光の渦に呑み込まれたのだろう。これがタイムリープ……
「時の流れが逆行してる……」
光の渦を遡るように景色が逆行していった。これはあたしが10才の頃…父さんと遊んでいるわ…5才…3才…ここからは…分からないわね…
あぁシグマ爺…これ……
「取説教えてもらってねー!!止め方わかんねーわよ!!」
タイムマシンの中で、あたしは絶叫した。