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世界が終わる『恋の呪い』  作者: 薄 ノロ
6/7

世界が変わるもう一つの出会い

操作を間違って先週分が投稿されていませんでした。すみません。

 ワタシは最初、世界は素晴らしいものだと思ってた。大きくて優しい神木のお父さんがいて。そのお父さんのおかげで周りには綺麗な緑がいっぱいあって、毎日妖精さんや動物さんたちと遊びまわってた。お花は鮮やかだし、果物は美味しい。毎日がホントに、楽しかった。


 でも、お父さんがよく話してくれる世界の方が楽しそうだった。


 緑は鮮やかな赤に変わるらしい。

 花は今よりもっといっぱいあるらしい。

 果物ももっといっぱいあるらしい。

 雪という冷たくて素敵な物があるらしい。

 子供は大人になるらしい。

 大人はやがて寿命で死んでしまうらしい。

 夏というものは今よりもっと暑いらしい。

 秋というものは食べ物がもっとおいしいらしい。

 冬は寒さで生物が死んじゃうかもしれないらしい。

 春は新しい命が生まれるらしい。

 世界はもっと厳しいらしい。


 ホントはもっと、たくさんの色と生命にあふれているらしい。


 ワタシもその世界に行きたいというと、お父さんは決まって困ってしまった。それと同じくらい、寂しそうで、悲しそうだった。


 そんなワタシに道を示してくれたのが、藍斗だった。


 ある日突然やってきて、あの悪人面に邪悪な笑みを引っ付けて、ワタシにこう言ったのだ。


 ――――このクソったれな世界を、一緒にぶっ壊そうぜ。


 ワタシはそれ以来、すっかり悪の手先なのだ。






 六月二十六日 火曜日 九時


「あぁーー…………どーしよ」


 萌黄は現在、取り敢えず先ほどの写真の駅に向かっていた。服装は下から髪色に近いスニーカーにストライプのニーソックスとホットパンツ。厚手のチュニックの上から若葉色のフード付きのトレーナーを着たラフな格好をしている。トレーナーには前面にトンネル型のポケットがついている。


「手がかりないし、お父さんから作った短剣は持ってきたけど、見つかんなきゃ意味ないし。てか、ホントに刺さんのかな…………」


 そう言いながら萌黄は改めて短剣を見てみる。それは刃渡り十五センチちょっとのポケットに入るぐらいのシンプルな作りの木剣で、見事なまでの流麗なフォルムで匠の技を感じさせること以外はなんの変哲もない小物である。だからこそ往来のど真ん中で出したところで問題はない。ちょっとイタい中学生に見えること以外は。

 萌黄は別に、短剣の力を疑っているわけではない。萌黄には詳しいことはわからないが、お父さんは何やらすごいらしい。そして、その枝から作ったこの短剣もすごいらしい。

 だが、相手の力が強大なのは確かなのだ。なんせ、神様の懐刀なのだから。


「はぁ、早まったかなぁー」


 思わずため息が漏れる。


(だいいち! アタシはそんなに強くないのに何で藍斗はアタシにこんなこと言うかな!!)


 一度、不満がよぎればなかなか止まらないもの。萌黄の頭に次々と愚痴が流れる。


(アタシはリセットの影響を受けないと言っても、存在がちょっと変わってるだけで戦闘力なんてほとんどないんだよ! ちょっとだけ植物を出せたり操れたりするだけなんだよ! そんなのただの手品じゃん!! そりゃ、お父さんの娘だからちょっとやそっとじゃ何ともならないけどさ。だからって言ったって相手は天使だよ! あの壁画の通りなら山を持ち上げてなんかすごい速さで動いて何かよくわからない武器を振り回すあの天使だよ!! そんなのに一人で喧嘩売ってこいってやっぱ藍斗は馬鹿なんじゃないの!? そもそも七人のリセットの結界を補強してるやつらをやっつけに行くときも一人で行っちゃうし、そもそもアタシなんて、家でゲームばっかしてる半引き籠りだし……)


 思考がだんだんとマイナスな方面に向かい始める萌黄。それに比例して気分も落ち込んでくる。心なしか、頭についているアジサイの花も萎れているように見える。


(やっぱ、帰ろっかなぁ……怖いし)


 そんな発想に行きついてから、はたと気づく。


(あ、いつの間に改札超えてた…………)


 こんな時ばかりは染みついた習慣が恨めしい。

 ピークが過ぎて人がまばらになったホーム。正直帰りたいというのが萌黄の本音である。


(ついちゃったしどうしよ……。………………。これで帰るのはなんか癪だし、他に手がかりないし、張り込みますか)


 しばらく考えてからそう結論を出す。実際、手ぶらで帰ったらそれはそれで藍斗が怖いのでやったという形だけは欲しいのだ。


(それに、わざわざ天使も戻っては来ないだろうし。きっと。それにたぶん、目的はヒーくんだろうから大学に向かうでしょ)


 と、その時に反対のホームに電車が到着した。


「よし!! 二時間ほど駅でボーっとするだけの簡単なお仕事!! それだけで〇S4!!」


 一人で拳を握って自分を鼓舞してると、向かいのホームの電車から人が降りてくる。それをなんとなく見てると、ひと際くたびれた感じの美人が降りてきた。


(あ、あの人似てるな)


 萌黄はとっさに目を向ける。が、そこで驚愕することになる。


(…………? あれ、てかあれ天使じゃん? なんかめっちゃくたびれてるし目が死んでるけど。……………………?。あ、ていうか天使がここに来たってことは……え?…………うっそぉん)


 あまりに突然のことに握った拳は自然とほどけていた。




「理想郷は………ほど遠かったんですね」


 グランディーネがもとの駅にたどり着いたのは乗り換えを間違え、誤って地下鉄に乗り、満員電車に揉みに揉まれて二時間が経った後だった。

 その目には天使にあるまじき仄暗い闇が宿っていた。


(電車というものは今すぐ無くすべきですね。あんなにややこしくて人がまるで家畜の様に運ばれていく様は見るに堪えません。中には今にも死にそうな目をしてらした方もいらっしゃいましたし。まぁ、あんな所にいればそうもなりましょう。それにあのめとろというのもいけません!)


 グランディーネはメトロに乗った時のことを思い出していた。


(なんですかあれは! 勝手に地下に入るし、元の場所に戻るのも大変ですし、人に揉みくちゃにされるし!…………あんな思いをするのは、きっと人が多すぎるからですかね)


 その瞳の闇が広がり、口元には引きつった怪しい笑みが浮かぶ。常識の歪んだ殺戮者は、きっと今のグランディーネのような顔をしていることだろう。たまたまそれを目にしてしまったサラリーマンは冷や汗を大量に流しながら、急いで電車に乗り込んでいた。


(このお役目が終わったらテレナレク様に人の数を減らしてくれるように上申しましょう。…………。いや、むしろ……)


「イヒ……イヒヒ」

「ヒッ!」


 グランディーネが声につられて振り向くと、フードを被った少し変わった光の気配を纏った中学生ぐらいの少女がいた。フードのせいで目元はわからないが、その口元は引きつっていた。


(この方は、いったいなんなんでしょう?)

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