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第5話 春の大精霊祭 前編

ディアネス国の春の一大行事と言えば、この「春の大精霊祭」である。

聖妃と4人の女官が主役になって、春の訪れを祝うお祭りだ。

つまり、王妃ペルセポネの帰還を喜ぶ祭りである。

ハデス様かわいそうに。

今までは聖妃がいなかったため、代わりにエルがやっていたわけだが、今年から聖霊役はシェレネである。

4人の精霊はララ達。

今その祝祭に向けて準備中なわけなのだが……


「ねえシェレネ、僕もう嫌だよ。あの狸じじぃ達、僕嫌い……」


「陛下……何があったんですか?」


「だってさ、僕が精霊祭の責任者決めるって言ったら、さっさとレスト派とセルヴィール派とその他に分かれて、毎日毎日僕に畳み掛けるんだもん……」


「それは大変ですね……」


レスト大臣はディアネス神国の大臣であり、公爵である。

レスト公爵家は子供6人の大家族で、上からアランドル、オズワールズ、クロフォード、セシル、ゼルディラン、クリスティン。

レスト家の唯一の令嬢、クリスティン·レストはシェレネのお茶友達である。

元は父親のレスト大臣にウィルフルの妃にするために連れてこられたのだが、本人にその気はゼロ。

早々にシェレネと仲良くなった彼女は、王宮に馴染んでそのまま家に帰ったわけである。

まあもちろんあとで父親に怒られているわけなのだが。

セルヴィール大臣はもディアネス神国の大臣であり公爵。

レスト公爵とは対照的で、厳格で威厳のある性格である。。

セルヴィール公爵家の子供は2人。

上からラン、バジルである。

両家は政敵として対立しており、どちらかを選ぶのが大変難しいわけである。


「これはもうその他から選ぶに限りますねぇ……」


「もう、レンで良くないかなぁ」


「レンって、レン·ローランのことですか? あの真面目な官僚の」


「うんそう。だって1番まともだもん」


「そうですねぇ。あ、そうだ、アランドル様ってどうなったんですか?」


アランドルは仕事が大嫌いである。

王宮に勤める官僚なのだが、めったに仕事に来ない。

というか来たことがない。

少なくともシェレネがこちらに来てからは。

この間クリスティンの私邸に行ったときに釘は指しておいたのだが……


「うん、たま〜に来るようになったよ」


「そうですか……まだ期限は大丈夫ですよね? もう少し私も考えてみます!」


「うんありがと」


ウィルフルは満足げに微笑んだ。




「で、聖妃様、責任者はお決まりに?」


クリスティンが、シェレネに問う。


「それが、まだなの……」


残念そうにシェレネが答えた。


「そうなんですか…… でもきっと、お父様にお任せ下さったら素晴らしい宴になりますわ!」


天使のような微笑みを、彼女はシェレネに向ける。


「クリスティン、本当、にお父様が好きね…… でも、私……精霊祭のこと……あまり知らないの。教えて、くれないかしら……」


「もちろんですわ! 精霊祭は昔から行われている有諸正しいお祭りでしてね、聖妃様が春の聖霊役、4人の女官たちが精霊役をして祝祭を楽しむのですわ! 聖霊渡舞踊式(せいれいとぶようしき)という王都を歩く式もあるんです! 聖妃様の聖霊姿が楽しみですわ~」


うっとりとした表情でクリスティンが話す。


「でもこの祝祭、ペルセポネ様のご帰還をお祝いするものでしょう? 送り出す側のハデス様はお辛くないのかしら」


「そうね……」


きっとそう思っていることだろうと、シェレネは思った。




「う〜ん、どうしようかしら……やっぱり……ここは……アランドルとバジルとレンでいこうかしら……」


ウィルフルの政務室に来ていた彼女は、せわしなく動き回る官僚たちを見ながら責任者の選考をしていた。


「どうしたのですか、聖妃様。そこでぼーっとしているのなら、自室に帰って頂きたいものだ」


「……それは、申し訳ありません、バジル様……」


「まあまあ、そんなに言ったら聖妃様が可哀想だろう?」


「アランドル、貴様、珍しく出仕したと思えば……!」


「私はいつだって真面目だよ?」


「どこが真面目だ! さっさと働け! 貴様の仕事だけ1週間分も溜まっているぞ!」


「やっぱり家に帰ろうかな。うん。今日は猫が……」


「猫など今知るものか! 早くしろ!」


つくづく仲のの悪い二人である。


「け、喧嘩は、」


「喧嘩などしていない!」

「喧嘩ではありませんよ」


二人の言い合い見ていた彼女は、さっきまで考えていた「バジル、アランドル、レンを責任者にするという案」はやっぱりやめた方がいいのかを真剣に考えていた。

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