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刻印の花嫁 〜姫の嫁ぎ先は闇の国〜  作者: 森ののか
第2章 ジルダー勇者伝説
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第75話 順番ですから!

お久しぶりです

「お久しぶりですヘラ様」


本日の主催。

ゼウスの妻であるヘラににっこり笑って、シェレネは挨拶をする。

その仕草があまりにも可愛かったのでウィルフルは静かに顔を手で覆って悶ていた。

退散してくれ。


「久しぶりだなシェレネ。来てくれて嬉しいぞ」


姉上(ヘラ)、先日の協力感謝する」


「義妹の頼みを断るとでも?」


先日の協力、それはあのリデュレス王国への加護の話だが、どうやらヘラは弟は眼中にないらしい。

可哀想に。

彼女はさっさとウィルフルからシェレネを引き離すと、そのまま上機嫌で連れて行ってしまった。

あまりにも流れるように奪い去られたので、彼はその場でぴしりと固まってしまった。


「シェレネ、口を開けよ。そなたが気に入りそうな菓子を見つけておいたのだ」


「本当ですか? ん……美味しい……」


口の中に放り込まれたお菓子を噛めば、ふわりと薔薇が香る。

シェレネは花が好きなので、こういう花の香りや味のお菓子は大好きなのだ。


「お母様、昨日からずっと悩んでらっしゃいましたものね?」


ふんわりと笑って、ヘラの娘エイレイテュイアが隣に腰を下ろした。

それを聞いて、ヘラは大きく目を見開いた。


「な、なぜ言ってしまうのだ!」


「いけませんでしたか?」


「うう……」


実の娘に純粋な目でそう言われてしまえば言い返せない。

そんな様子を見てシェレネは楽しそうに笑い声をあげる。


「ねえ」


と、そこに誰かが声をかけた。

この中に入っていくとはなんと勇気のある……


「あなた主催の宴会でもないのになんでその子を独り占めしようとしてるわけぇ? 私にも貸しなさいよぉ」


「アフロディーテ様」


納得の人物である。

彼女はシェレネの腕を掴むと、ぐっと引っ張った。


「ねえシェレネ、そんなところにないで私のところに来なさいな」


「ちょっと待った」


ここにさらに割り込もうというのか。

いったいどれほどの猛者……


「私だってこの子と話したい。ニケだってあっちで話せることを楽しみに待ってるんだ。この子は譲れないね」


「アテナ様まで!?」


真の猛者だった。

勝てない。


「何言ってんのよ、シェレネは私のところに来るのよ!」


「そなたも割り込んできたくせに偉そうな!」


「そもそもアフロディーテ、アレスはいいのかい? いつも夫をほったらかして真っ先に彼のもとに行っているくせに」


嫌みったらしくアテナが笑う。

そう、アフロディーテといえば、いつも一番にアレスのところに行って楽しんで、一通り気が済んでからシェレネのところにやってくる。

なのに今日といえば、気が済むおろかそもそも会っているところすら見かけなかったのだ。

アテナの言葉を聞いて、アフロディーテはその美しい顔を少し歪ませた。

ぐっと唇をかみしめてアテナを睨みつける。


「だってアレスったら今日来てないんですもの! ううん、今日だけじゃない。ここのところちっとも私のところに来てくれないの。何か知らないの? どうせあんたとの勝負に明け暮れてるんだと思ってたんだけど」


「知らないな……よく考えれば私も最近アレスを見かけていない。他の女のところに行っている可能性は……」


「だったら私が気が付かないわけがないじゃない!」


なら、いったい彼はどこにいるというのだ。

血気盛んな彼のことだから、人間界で誰かとやりあっているのかもしれないし、負けてその辺に転がっているのかもしれないが。


「最悪よ。アレスはせっかく私というものがあるのにすぐにどこかに行ってしまうもの。というわけで私、今日は一人なの。シェレネは私に貸しなさい」


「あわわ、ま、待ってください~!!」


再度アフロディーテにぐい、と腕を引っ張られたところで、シェレネはとうとう声を上げた。


「もう、ヘラ様もアテナ様もアフロディーテ様も言い争わないで? ちゃんと皆さんのところに行きますから! 私はまだまだ帰りませんから、順番です! 最初はヘラ様、次にアフロディーテ様、最後にアテナ様。皆さん公平におんなじ時間だけです!」



「我が妃は強いな……」


そんな四人の様子を遠巻きに見ている者たちが三人。


「ヘラ様にまで順番です、なんておっしゃれるなんて……ふふ、シェレネ様らしいです」


「彼女のいいところだ」


ヘラに見向きもされなかった我らが国王陛下様と、誰にも声をかけてもらえないのですでに諦めている冥王と、なんとなくそこにいる春の姫である。

黒ずくめで変な集団だ……

遠巻きに見られているのは彼らの方ではないかというのは黙っておこう。


「いつになれば私のところに戻ってきてくれるのか……」


「順番ですよ、ウィルフル様」


それじゃあおそらく、一生順番は回ってこないことだろう。

長らくお待たせしてすいません、うう、急によくないことが起きて塞いじゃってたので予定がすっかりずれた……ほんとは現実の年数と揃えたかったのに! まあいいでしょう(は?)

いつまでもうだうだやってても仕方がないので更新再開します!これからもなにとぞよろしくお願いいたします。


次の更新予定日は五月二十九日です!

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