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刻印の花嫁 〜姫の嫁ぎ先は闇の国〜  作者: 森ののか
第2章 ジルダー勇者伝説
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第69話 軽く打ち合いから始めようか?

「ってことでえ、まあ軽く準備体操に打ち合いしつつはなそー!」


近衛騎士団所有の練習場の端に立てかけてあった練習用の切れない剣を四本放り投げて、ビアンカが笑顔を向ける。

練習用と言っても刃先を丸くしただけの実際の剣なので、重量はかなりある。

が、三人はものともせずそれを綺麗に受け取った。


「まああくまで今は話が重要ってことで」


彼らはすらりと鞘から剣を抜くと、相手の前に立った。


「始めようか」


ペルシオのその一言で、練習の打ち合いが始まった。


「で? どうなの、だんちょー」


「はあ……特に変わったことはない……」


カンカンと軽い金属の触れ合う音が響く。

その場には何人か別の近衛騎士たちもいたのだが、もはやみんな練習をしていない。

なぜって?

軽い打ち合いだって言ってるのにもはや練習試合だし、なのに当人たちは平然と話しているから。


「なんでもいいから教えてよ~、ほら、どこに行ってたとか何してたとか!」


因みにぶつからないように二組離れて打ち合っているのは声はじゃなり大きくないと聞こえない。

とんだ羞恥環境である。

団員は全員クロフォードとロゼッタの話に興味津々だからあきらめてもらって。


「……三日ほど前は……聖妃様のところに行くと言っていた。頻繁に聖妃様に会いに王宮へきているらしい」


「そうなの? じゃあ聖妃様とは仲がいいのかしら」


衝撃の事実かっこ笑いだが、彼女はその半分以上、実はクリスティンのところに遊びに行っている。


「確かクロフォードの妹のクリスティン嬢とも仲が良かったよね。違った?」


そしてここぞとばかりに貴族であるペルシオが、そちら関係の情報を持ってくる。


「そうだな。そのようだ……いつもティが訪ねてきたときは仲睦まじそうにしている。本当にごくまれにしか姿を見せないから分からないが……兄上の伴侶のナイチンゲール嬢ともかなり打ち解けているらしい……」


「確かレスト家のお姫様と妖精姫と謎の少女は同い年だったでしょ? 打ち解けるのが早いのかもね」


その言葉を聞いて、クロフォードは動きを止めずに首を傾げた。


「謎の少女、とはナイチンゲール嬢のことか?」


「そうそう。レスト公爵家の長子のところに嫁いだ人なんて気になるに決まってるでしょ? ちょっと私とテディで調べてみたんだけどねえ、何にもないの! 情報が少ないとか隠蔽されてるとかじゃなくって、本当に何一つ情報が出てこないのよ。だから謎の少女」


当たり前である。

ナイチンゲールって偽名だし。

ナイーリア家なんてないし。

正真正銘彼女は、ただのぽっと出の正体不明の少女なのだ。

正確には人間でさえない、鳥。

これには前公爵もびっくり。

彼は知らないが。


「まあ確かに、よくわからないのは確かだ。レスト家では何もないので逆に何もないだろうという方向で行っているな」


それでいいのかレスト公爵家。


「まあ兄上の伴侶ならば信じるほかないだろう」


「団長はレスト家の泡沫の夢の君のこと大好きだもんねえ」


「なぜお前たち二人は兄上のことを泡沫の夢の君と呼ぶんだ……名で呼んだ方が呼びやすいだろう……」


泡沫の夢――誰のことかというと、アランドルである。

とてもありえない。

だが彼はいくら変人と言えども、その容姿は儚く美しい。

外面に騙されたよく彼のことを知らない人々は、彼のことをそう呼びがちなのだ。


「だってお名前で呼ぶのは恐れ多いんだもの。ねえビアンカ」


「団長は公爵家の人間で副団長は侯爵家の人間だから偉い人でも名前で呼べるのかもしれないけど、私たちは貴族でも何でもないんだから無理に決まってるでしょ」


そうなのか、とクロフォードは呟いた。

おそらくこの顔は何もわかっていない。


「よっ、よっと。打ち合いもこんなもんでいいでしょ。話はいったん置いといて練習試合しない?」


ビアンカが一度空中に放り投げた剣を綺麗に持ち直して、にっこりと笑った。

他の三人もそれに賛同して練習用の剣を鞘に納める。

そして、ビアンカはドロテアと。

クロフォードはペルシオと向き合った。


「まあ、ゆるーく行こうか」


ざっと地面を蹴る音が響いて、それに続いて各々が所有している自らの剣と剣とが勢いよくぶつかった。

レスト家のお姫様はクリスティン、妖精姫はロゼッタ、謎の少女はルールーリア、泡沫の夢の君はアランドルとなっております。どうぞ、お召し上がりください(お願いだから名前で呼んでくれ)

次の更新予定日は一月九日です。

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