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刻印の花嫁 〜姫の嫁ぎ先は闇の国〜  作者: 森ののか
第2章 ジルダー勇者伝説
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第68話 遅刻じょーしゅーはん

王宮の一角、近衛騎士団の所持している部屋。

そこに集まった精鋭である団員たちは、神妙な顔つきで団長であるクロフォード・レストの話に耳を傾けていた。


「連日の事件に関して――で――の関与が――」


「おっは~」


そんな空気をぶち壊すべく、ばん、と大きな音を立てて扉が開かれた。


「あ、重要な話してたあ? ごめんねー、昨日ちょっと忙しくってさあ」


それはもう素晴らしいほどの遅刻をかましたというのに、なんの悪びれもなく清々しい笑顔で部屋に入ってきた少女。

遅刻常習犯、女性騎士ビアンカである。


「ビアンカ、遅刻だ」


「じゃあもっかい最初から説明して、団長さん?」


語尾にハートがつく勢いでウィンクしてくる彼女に、これを他の騎士団のやつらが知ったらそれはそれはイメージが崩れるだろうなとその場にいた全員が思った。

彼女はこれでも騎士団全体の中でかなりの人気を集めているのだ。

まあ騎士団に女性騎士、というのが彼女ともう一人、ドロテアしかいないのもあるが。

ビアンカは基本近衛騎士団の面子としか一緒にいないのでそんなことこれっぽっちも知りはしないのだが。


「仕方いな……わが国で――近隣諸国でもだが、起こっている一連の事件に関しての話だ」


「ふーん、そう」


ビアンカは急に冷めた声になった。

しごとするときはするのだ。

一応。


「国王陛下のお話によるとどうやら一番上で操っているのはジルダー王国。ゼオジルド・ヴェザー王子だ」


「あの王子が? 意図のつかめないことをするのね。確か最近きな臭かったわ」


いつの間にかビアンカのそばに移動していたドロテアがきゅっと眉をひそめた。


「仮説だが……こちら側の国の貴族や王族を混乱させその隙に乗じて長年主張してきた宝を取り返そうとしている、と」


長年主張してきた宝。

それはもちろん、昔、光の神ライティル・モートレックが治めていたフェアリフィエ神国で管理されていた世界王の冠だ。


「まだあの冠諦めてなかったの? しつこいわね、戦いなんてごめんよ」


「しかしどうやらゼオジルド王子は奪還……という名目の略奪にかなり力を入れているそうだ。父王の負担が、だの見習いを、だの言って国内政治をかなり牛耳っているらしく、国民の冠奪還への関心も高まっている」


「失礼ね、奪還奪還言って、元はフェアリフィエが持ってたのをフェアリフィエがディアネスになったから今はディアネス神国のものじゃない」


それはそうなのだが、一度手にしてしまったものは歴史を改変してでももう一度自分たちのものにしたくなるのだ。

それが世界を治める者のものなら、なおさら。


「それに創造神が冠を預けたのはフェアリフィエだからな……いずれ返還するときにあの国に奪われていては申し訳が立たないし、信用を失う」


副団長であるペルシオも深刻そうな顔をした。


「最悪の事態になっても近衛騎士団が動くのはかなり後になるが、万一に備えてしっかり鍛錬を怠るな。少し鍛錬重視の業務内容に切り替えた方がいいかもしれない」


全員がその言葉に賛同し、一同は各々の業務に向かっていった。



「さあーてここで恒例!」


「団長の妖精姫関連報告ターイム!」


さっきまであんな真剣な空気だったのが嘘のようだ。

クロフォードは手にしようとしていた書類をさっと取り上げられ、ビアンカとドロテアに囲まれていた。

今から週一程度で恒例になってしまっている妖精姫こと、彼の妻のロゼッタに関する近況報告の時間だ。


「はあ……今週もするのか……」


彼は最悪だ、とでも言わんばかりに長い銀髪の横髪を耳にかける。


「せっかくだんちょーが言ったんだしぃ、鍛錬でもしながら話しましょうよお」


女性とは思えないほどの強い力で引っ張られ、クロフォードは渋々立ち上がった。


「私は鍛錬と言っても相手が……」


「それに関してはそれはもう最強にやりたくないけど、俺が相手になるよ」


名乗り上げたのは副団長のペルシオだ。

そんなにいやならなぜやることにした。

クロフォードはあまりにも強すぎて対等にやりあえるのが国一番の剣の使い手、ゼルディラン・レストと国王であるウィルフルのみである。

ペルシオはその次だ。

対等とは言えないし勝てもしないけれど、そこそこやりあえる関係。


「ほら、俺も妖精姫の話聞きたいしさ。俺の鍛錬だと思って付き合ってほしいな、団長」


「……まったく意味が分からん……」


そんなこと言いながらちゃんと行ってくれるので、近衛騎士団の面々から好かれるのだと思う。

あけましておめでとうございます! 書初めです。今年もよろしくお願いいたします。ぴーすはーと


さて、愉快な近衛騎士団ですが、以下の四人さえ押さえておけば楽々です。

・クロフォード。近衛騎士団の団長。男。公爵。ロゼッタの夫。

・ビアンカ。近衛騎士団の騎士。女。遅刻常習犯。テディベアが好き。

・ドロテア。近衛騎士団の騎士。女。あだ名はテディ。

・ペルシオ。近衛騎士団の副団長。男装女子。侯爵令嬢。一人称は俺。

騎士団全体に女性騎士は三人しかいないのですが、その全員が近衛騎士団に大集結してます。なので団長の周りが女性騎士だけになるんですね。そのほかの男の騎士は重要じゃない名無しです。


次の更新予定日は一月五日です!

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