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刻印の花嫁 〜姫の嫁ぎ先は闇の国〜  作者: 森ののか
第2章 ジルダー勇者伝説
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第59話 四姉妹わちゃあ

「聖妃様、精霊祭の衣装を合わせるお時間ですよ」


やることがないので部屋で虚無をしていたら、女官長のララが呼びに来た。


「去年と……身長、も……体格も……変わってな、いから……別に、いらな……」


「さて行きましょうか」


さすがにもう二年もいるからかシェレネはすっかり慣れていて、同じようにララも慣れたので彼女は笑顔でララに抱き上げられた。

抜けようとしても足が動かないのでびくともしない。

シェレネは諦めた。


「じっとなさっていて下さったら早く終わりますよ」


にっこりと笑って去年も一昨年も着た真っ黒いドレスを着せ始めるリラ。

表情には出さない、というか出せないが、もし感情があって表情が出せたならシェレネは今うえー、と退屈そうに眉をひそめていただろう。

さすがにそんなに行儀悪くはないかな。

ウィルフルならしそうだ。

お、似てきてる。


「どこか苦しいところは?」


「胸、元……」


「ほら、言ったではありませんか」


そう言われると返す言葉がない。


「では精霊祭までに直しておきますね。これぐらいでしたら簡単に調節できますから」


裁縫上手なサラがそう言うと、あっという間に印をつけてドレスを持って行ってしまった。

嵐みたいだ。


「あなたた、ちは……ドレス……あわせ、たの……? 私、ばっかり……理不尽だわ……」


そう言えば、ララ達だって精霊祭に登場するのだ。

主役ではないけれど、四人で脇役の枠を埋めている。

すると、隅の方にいたエラがあははー、と笑った。


「まだです……」


「じゃ、あ……私が見てあげ、るから……あわせたら……?」


ぴくりと三人の頭上の星が動く。

そしてあからさまに目をそらした。


「着なさい……?」


「「はい」」


さすがに聖妃の命令には逆らえないのだ。



「うう、私は変わってませんよお」


シェレネにはあれだけ嬉々として着せていたドレスを嫌そうに身にまとう青い星のエラ。

その名の通り水色のドレスを纏った姿はとても可愛らしいのに、大きな目はへにょりとたれている。


「可愛い、わよ……?」


「いつものが落ち着きますう~!!」


ぴょこぴょこしている青い星が可愛らしい。

それでもシェレネに着ろと言われたので脱げるはずがなく、むす、と頬を膨らませながら彼女は隅に立った。

他の三人を比べてエラは少々ふわふわしている。そのくせしてふとした時に見せる表情がそれはそれは美しいのだ。

例えば箒を持って床の埃を掃除していたら小鳥に気が付いて少し振り向いた時、とか。


「にゅ……」


もはやリラから変な声が出ている。

リラは白い星だから、例外で黄緑色のドレスだ。


「どうも袖のあるドレスは……」


我慢してほしい。

だって長くて広がった袖のハイウエストのドレスはディアネス神国のドレスの型なのだから。


「ああ……」


とうとうララまでも変な声を出した。

これはサラに期待である。

赤い星なのでピンク色。


「聖妃様、簡単に調節してみましたからもう一度ご試着を……あれ?」


サラが部屋に帰ってくる。

そして、扉のところで首を傾げて動かなくなってしまった。


「何をされて……?」


理解できたないや。

なんとなく腹いせに彼女に飛びついた三人は、笑顔で無言で手早くサラのドレスを脱がしだす。


「な、なになに?? 何なんですか!?」



「サラだけ例外なんてないんですよ」


いきなり精霊祭のドレスを着せられ再度固まった彼女に、ふふ、と勝ち誇ったような微笑みを浮かべてララが言った。


「みんな、にあって……るわ……わた、し……だけ着なきゃ、だなんて……公平……じゃない、もの……」


「そんなあ……」


黄色い星のサラ。

黄色いドレスが眩しいほどよく似合う。


「春の精霊なのにあなただけ星のままだわ」


くすくすとリラが笑い声をあげた。


「笑い事じゃないのよ、リラったら」


大きな身振り手振りで話すサラに思わずシェレネはふふ、と声をもらす。

別に、笑っているわけではないのだけれど。


「あなたたち……本当……に、見ていて……飽きないわ……」

久々に女官ちゃんたちにわちゃわちゃしてもらいました。きゃわ。

次の更新予定日は十月三十一日です

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