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第9話 下町デートは唐突に 後編

「りんごにピザにセレン(シェレネ)! 王都は最高だね!」


「陛下、じゃなくてウィルフレッド様、最後のはおかしいと思います!」


「ええ? いいじゃん〜」


ウィルフルいつにも増して上機嫌だった。

そんなにデートがしたかったのか……

この様子なら、彼がこの国の国王だなんて誰一人として気が付くことはないだろう。


「そんなことより、夜ご飯何にするー?」


「えーっと、さっきフィナって子がいたでしょう? あの子のお店のお料理美味しいので、行ってみませんか?」


「そうなんだ。じゃあそこにしようか」


ウィルフルは彼女に微笑みかけると、そのまま歩き出した。



「いらっしゃいませー! あ、セレン! きてくれたの?」


「フィナ! さっきね、ウィルフレッド様にフィナのお店を教えたら行こうって言ってくれて。いい?」


「もちろんよ!」


フィナが二人を席に案内する。

その時、彼女は()()()を感じた。

いつか感じた、あの殺気のような何かを。


(王宮を出た時はいなかったはずなのに……貴族の密偵だとしたら、誰の……?)


ウィルフルは気が付いていない。

彼女の杞憂だといいのだが。


「セ〜レ〜ンっ、どうしたの? そんな顔して。何か悩み事でもあるの?」


そのせいで浮かない顔をしていたシェレネに、フィナが声をかけた。

心配そうに彼女を覗き込む。


「みてみてこのお菓子、私が父さんに教えてもらって作ったんだよ。あげるから元気だして!」


「うん、ありがとうフィナ」


取り繕った笑顔で、彼女はお礼を言った。


「セレン、ちょっといい?」


唐突にウィルフルが話しかける。


「はい?なんですか?ウィルフレッド様」


「プレゼントしたいものがあるんだよ。はいこれ」


にっこり笑ってからが差し出たのは、


「わあ、綺麗な首飾り!」


希少な宝石パパラチアサファイアの首飾りである。

しかも天然の。

おいどこで買った。

もしくはどこで入手した。

幻の宝石だぞ。


「あ、いいな〜! 私も早く恋人見つけなきゃ!」


そんな二人の様子を見て、フィナが声を上げる。


「頑張ってね、フィナ」


「ぜったいあなたに負けないぐらいの人を見つけてくるわ! ふふっ!」


自信ありげにフィナが言った。


「そう?」


にっこりと笑ったシェレネだったが、きっと「絶対に陛下は誰にも負けない」と思っていることだろう。



「フィナのお店のご飯、美味しかったですね」


「そうだね。王都にあんなに美味しい店があるなんて知らなかったよ」


帰路についた二人。

彼女たちの後ろには暗い人影が落ちていた。


「ちょっとまてー!」


「なんだお前たちは」


無駄に元気な掛け声とともに、二人の青年が目に前に現れた。


「覚悟しろ!」


「賊か?」


なんだかあまりにも間抜けなので、ウィルフルは呆れている。

先程の暗い影はこの二人のものである。

だが、地上で多分1番強いと思われるウィルフルに勝負を挑んだところで負け確定である。

しかも、シェレネには勝利の女神ニケの加護が付いているため、めったに負けることなんてないのだ。


「なっ!? つ、強い……」


「た、助けてください!」


よってあっさり負けた二人は……


「俺、親分裏切るわ」


「うん俺も」


自分の上司?を裏切った。


「「すいませんでした! 弟子にしてください!」」


あまりの呆気なさにウィルフルどころかシェレネも驚いている。


「陛下……この二人、密偵、とかじゃなくて……ただの……その辺の……」


「そのようだな、我が妃よ」


密偵を疑っていた彼女だったが、どうやら殺気もこの二人の上司?のものであるようだ。


「なら……まあ、いいんじゃないですか……? 監視……も兼ねて、そうですね……常営騎士団の……前線……第5小隊にでも……入れときませんか……?」


「そうだな」


特に何かしたわけでもないし、大体がそうなので問題ない。

ということで、彼らの騎士団への入団が決定した。

だが、この二人のやり取りを見ていた彼らは震えあがっていた。


「ちょっと待て。あの2人、もしかして国王陛下のウィルフル様と、聖妃様のシェレネ様なのか?」


「うそ! どうしよう、俺らの首が飛ぶ……」


後日、絶対に殺されると思っていた彼らとその仲間たちは騎士団に放り込まれた。

以後、更生して頑張るように。

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