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刻印の花嫁 〜姫の嫁ぎ先は闇の国〜  作者: 森ののか
第2章 ジルダー勇者伝説
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第46話 庶民って強い。

「でも……どうしましょう……この国は……優しさ、の国……ですから……少量、の毒でも……大変、な……問題です……」


ウィルフルを見上げ、シェレネは困ったように小さく首を傾げる。

ここリデュレス王国は神々に愛された優しさの国。

何としても災いから遠ざけたいところだ。


「そうだな……何か対策を立てねばならぬか……」


考え込むように、彼は眉間にしわを寄せる。

すると、シェレネが彼の目線の高さぐらいまでふわりと浮き上がった。

そっと白い腕を彼の額に伸ばす。


「しわ……」


「ん、ああ……」


どうやら彼女は眉間にしわが寄っているのが気になったらしい。

きゅっと細い指で彼のしわを伸ばすと、満足したように下に降りた。

周りが一気にほのぼのとした雰囲気になる。


「仲いいのねえ」


「あ……」


王妃にそう言われて、今気が付いたというようにシェレネは口元に手をやる。

感情が全く見えないせいで分からないが、おそらく赤面しているのだろう。

恥ずかしそうに彼女は隣のウィルフルの軍服の端をぎゅっと握った。


「可愛い……」


多分レイはレスト公爵家の妹大好き兄弟にも引けを取らないと思う。



「ふむ……一人で考えるより誰かの意見を聞いたほうがいいと思うのだが我が妃はどう思う?」


だんだんウィルフルの陰に隠れて行っていたシェレネに、彼は声をかける。

すると彼女は彼のマントを掴んだまま彼を見上げた。


「その、方が……いいと……思います……」


何か思いついたのだろうか。

それとも何も思いつかないから他の意見を聞きたいということなのだろうか。

おそらく前者だが、これは重大な問題だ。

一人で決めてしまうのは違うと思ったのだろう。


「でも……」


思いついたようにシェレネが口を開く。


「その間……どう、しましょう……また……毒を……入れられ、たら……」


少しの時間も、やる側からすれば好機だ。

何もしないはずがないだろう。


「そうだな……ならばとりあえずディアネスに来てもらう……」


「あら、そこまでしてもらわなくても大丈夫よ」


王妃がウィルフルの言葉を遮った。

隣で国王とレイがあり得ないという顔をしている。


「誰か別の人がお料理を作って、また別の人が運んでくるから隙だらけになって毒を入れられたりするんでしょう? なら自分たちでつくればいいじゃない!」


「「……は?」」


彼女の言葉に生粋の王族四人が思わず口をそろえて聞き返した。

彼らにとって誰か別の人が料理を作り、また別の人が運んでくるのは当然のこと。

今まで疑ったことなんてない。

その途中で毒を入れられたら入れた誰かに焦点が当たって、どうして入ったかは気にもしない。

だから王妃の言葉はあまりにも衝撃的だった。


「食材なら王都でもたくさん売ってるでしょう。私は元庶民なのよ? 料理の腕を舐めないでいただけるかしら?」


「え、あ、いや……」


彼らが混乱している理由はそこではない。


「ミーナちゃんもそう思うわよねえ?」


「ええ、二人もいればなんだって作れますよ」


お互い王家に嫁いだ庶民の身。

謎の信頼関係が築かれている。


「ちょ、待って、待ってください母上! いくら何でも王妃が自ら料理するなんて……」


「じゃああなたが作ってみなさいな。無理でしょう? なら庶民の腕の見せ所を奪わないでちょうだい」


王族として至極真っ当なことを言っているのに、あっさり切って捨てられるレイ。

どうしてなんだ、とぶつぶつ呟きだす。

そんな彼にミーナは笑いかけた。


「ほらほら、そんな不貞腐れたような顔しないの。私も一緒に作るのよ? それともあなたは私の手料理が食べたくないの?」


「食べたい」


即答した。

どうやらこれで決定のようだ。

王妃が強すぎて国王の影が薄い。

一回も発言していない。


「数日ならこれで乗り切れるわ。だから安心してね~」


にっこりと微笑んだ王妃に、ウィルフルは間髪入れずに告げた。


「出来るだけ早く対策を講じます」

王妃様とミーナちゃんのコンビは最強です。

無表情でウィルフルの陰に隠れちゃうシェレネちゃん可愛いね

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