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刻印の花嫁 〜姫の嫁ぎ先は闇の国〜  作者: 森ののか
第2章 ジルダー勇者伝説
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第45話 心配事

「お兄様……お義姉様……ご結婚、一周……年……おめでとう……ございます……」


ほんの少しだけ宙に浮いた状態で立っているシェレネが、手に持っている花束をぎゅっと抱えて上目遣いでそう言う。

にっこりと優しい微笑みをうかべるミーナの横で、レイが妹の可愛さに悶えていた。


「まあありがとう、シェレネ姫。綺麗なお花ね、まだ冬なのにどうやって?」


「ペルセフォネ……様、に……分けて……もらいました……」


それを聞いてミーナが口元を押える。


「ペルセフォネ様? 冥界のお妃様よね? そこまでして頂いたなんて恐れ多いわ……」


当たり前だ。

神などあまりにも遠い存在。

まあ目の前にいるのも神だが。


「でもとっても素敵ね、冬にこんなに綺麗な花が見られるなんて、滅多にないでしょう?」


「お義姉様、が……喜んで……くれたなら……私、も……嬉しい……です……」


なぜ周囲の人間たちは感極まって瞳を潤ませているのだろう。



「義父上、義母上、お久しぶりです」


「いらっしゃい、よく来てくれたわね〜」


身長が高くて普通にしていても威圧感があるウィルフルに少しも怯まず、朗らかな微笑みを向ける王妃。

隣で国王が唖然としている。

元庶民たちは王族より強いのかもしれない。


「シェレネー! ちょっと大きくなった? 髪触ってもいい?」


「お母……様……身長、は……変わって……ません……」


シェレネはそう答えたがどうでもいいようだ。

既にシェレネの背後に回って髪で遊び始めている。

それからなにか思い出したのか、再びウィルフルの方を向いた。


「そうだわ、会ったら言おうと思ってたんだけど、なんだか最近物騒よね」


「物騒?」


この国の人々から滅多に聞かない言葉に、彼は思わず聞き返す。


「そうそう、最近食事に毒が入ってることがあるのよ。王族だから仕方ないのはわかってるんだけど、毒味が何人も死んでしまって可哀想で仕方がないわ」


そこで毒味役を思いやるというのがこの国のいいところだが、問題はそこではない。

リデュレスは平和な国だ。

暗殺だとかそういう類のものは滅多にない。

つまり、何度も食事に毒を入れられている、というのは異常すぎる。


「怖いわよねえ、一体何なのかしら。誰がやったのか調べたんだけど全然わからなくて」


「妹のニーナは王族でも貴族でもないし、そんな耐性がないから一番心配なんです。私は一年かけてだいぶならしたけど、あの子の身分は庶民のままでしょう?」


ミーナの妹、ニーナはよく姉に会いに城にやってくるらしい。

ほとんどの場合はすぐに帰るのだが、たまに国王たちと食事をしてから帰ることもあるそうだ。

だから、彼女が触ったり食べたりするものにはより気を使わなければならなかった。


「そう、なんですか……陛下、最近……はやって……るんですか、ね……」


少し困ったようにシェレネがウィルフルを見上げる。


「そうだな、他国と比べて控えめなのが不幸中の幸いか」


「あら、他の国でもなの?」


不思議そうに王妃が聞いた。どうやら他国の情報は入ってきていなかったらしい。


「ええ、王族や高位の貴族が何者かから階段から突き落とされたり、切りかかられたりしたという報告が最近多いですね」


「そうなの……あなたは? 大丈夫だった?」


心配そうに王妃がシェレネに聞く。

シェレネは若干迷ってから、口を開いた。


「えっと……部屋、から……突き落と……されたり……お茶、に……毒が……入ってたり……手を……切りつけ……られ、たりは……しましたけど……神なの、で……特に……なんの……問題、も……ないです……」


「あ、大丈夫じゃなかったのね」


散々色々やられておいてなんの問題もないなんて彼女はどうなっているのだろうか。

たった一年半でもう不死になれてしまってるという事実にその場にいる全員が驚きを隠せていない。


「え……大丈夫、ですよ……?」


いい加減シェレネは、大丈夫だと思っているのは自分だけだと理解した方がいい。

リデュレス王国の圧倒的平和感。

ミーナさん好きです。

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