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刻印の花嫁 〜姫の嫁ぎ先は闇の国〜  作者: 森ののか
第2章 ジルダー勇者伝説
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第40話 団長をどうにかしたい

本日よりクロフォードたちのお話が始まります!

彼のへたれ具合をしかとご覧ください!

「はあああああ……」


近衛騎士団の部屋の一室で団長であるクロフォード・レストは盛大なため息をついた。

氷の王子と呼ばれている彼は、ここ最近ずっとこれだ。


「団長まだ妖精姫に誤解されてるのー?」


特に敬意を払うわけでもなくずかずかと目の前にやって来て自分のことを覗き込んだビアンカを無視するように彼は横を向く。


「かわいそうにー」


と笑いながら言うドロテアを睨みつけて彼はまたため息をついた。

少し時間がたてばもう少しロゼッタと仲良くなれるかと思ったが、進展はなし。

主に自分のせいである。


「何をどうしたら彼女の眼中の端ぐらいには入れるんだ?」


「目指してるところが低い……」


いや夫なんだからせめて眼中の真ん中にはいようよ。

そう言おうとしてビアンカはなんとなくやめておいた。

ここが凍り付きそうだな、と思ったからなのと、眼中の真ん中って何だと冷静になり始めたからである。


「まあまあ、明日は休みだろう? 彼女をデートにでも誘ってみたらどうだ?」


そばで話を聞いていたペルシオがクロフォードに提案した。

明日は久々に休日だから。

まあクロフォードは明日も仕事に来ようと思っていたのだが。

彼は少し考え込んでからこちらの予想を裏切る斜め上の答えを返してきた。


「……でーととはなんだ? 初めて聞いたぞ」


「うそぉ……」


そう、彼はデートなどしたこともないしそもそも言葉も聞いたことがない。

その氷のように冷たい表情ででーと、などとひらがな表記で言われても全く可愛くないのだが。


「うーん……妖精姫と二人で喫茶店とかに行く、みたいな?」


「二人で? 彼女に何かあったらどうする」


「団長がいたら大丈夫だよ」


失礼なほど適切なつっこみを入れてしまいはっとするドロテアだったが、気づいていないので大丈夫だろう。


「しかたない。どうせ暇だし団長のデートプランを考えてあげるよ」


「さんせーい!」


ということで仕事の真っ最中であるのに団長に副団長、女性騎士二人は真剣にデートプランを考え始めた。



「でー、じゃあお屋敷出たらさりげなーく恋人つなぎとか!?」


「こいびとつなぎ……?」


「いやそれも知らないの!?」


恋愛に疎いとはわかっていたがここまでとは。

一つ上の兄は国内きってのプレイボーイと呼ばれているのに、一体前公爵はどう彼らを教育したのだろう。

あまりにも差がありすぎる。


「恋人つなぎは、こう!」


仕方なくドロテアとビアンカはわかりやすいよう繋いだ手を組んでクロフォードの前に持っていった。

それを見て彼は焦る。


「女性の手を握るなど、私は……」


「奥さんでしょ!?」


「彼女と踊った時しか触れたことは無いぞ」


結婚式のあれは数に入れないのか。


「じゃあ口付けも?」


「できるわけあるか!」


夫婦だろ、もうちょっとどうにかしろと言いたいところだがそれをぐっと堪える三人。

妥協案としてせめて普通につなごうということになった。

それでも彼はありえないという顔をしていたが。


「よし、昼食を食べ終わったあとだが。少し王都を散策してからこの喫茶店に来い。大抵の女子は甘いものが好きだ。決して人気があるわけじゃないが名店にも劣らない。明日は近衛騎士団員が占領しておくから」


「どれを食べるか迷うと思うから団長は妖精姫が迷ってる中でひとつ選ぶんだよ」


「あ、ああわかった……」


団長のデートのために近衛騎士団が動くなどと前代未聞では……

一通りの予定を書いた紙を渡してドロテア、ビアンカ、ペルシオは口を揃えて言った。


「明日は私達もデートしてる雰囲気だしながら見守っとくから頑張ってね!」



「いらっしゃいませ」


王都の少し奥まった場所にある喫茶店。

そこに近衛騎士団の団員がいた。


「すいません、近衛騎士団のものですが……明日このお店を貸し切らせていただいてもよろしいですか?」


「それはまたなぜ……?」


いきなりそんなことを言われ、困惑しながらも理由を尋ねる店長。

彼女達は真剣な目付きで店長を見つめている。


「明日うちの団長が奥さんとデートするんです。ただ団長デートが何かも分からないほど恋愛初心者なんですよ。こちらにお邪魔させて頂きたいんですが周りが一般客だと固まって動かなくなると思うので……」


「はあ……」


最後の最後でペルシオがその整った顔を店長の女性に少し近づけ、にこりと笑った。


「どうか団長のために、お願いできませんか?」


「は、はい、全然大丈夫です……」


「ありがとうございます。この店、俺のお気に入りなんです」


この喫茶店の店長は、イケメンに弱かった。


近衛騎士団の団員は全員で二十人ちょっと。

みんなして仕事を休むわけにはいかないので最低五人は留守番である。

明日仕事がなしでいい団員たちが、ビアンカたちの周りに集まっている。


「良い? 明日は団長と妖精姫のデートの日なの。そこで喫茶店に行くからみんな妖精姫にばれないように庶民の格好して、男子ばっかりじゃ怪しまれるから彼女でも奥さんでも連れてきなさい。女性なら誰でもいいから。彼女いない人はお母さんとかお姉ちゃんとかでもいいから。あ、何人か女装してきてくれてもいいよ。わかった?」


「りょうかーい」


団員たちののんきな返事が部屋に響いた。


「俺彼女いないから母さん確定だ……」


「まだましだぞ俺姉ちゃんだから……」


「クジ引きではずれだった四人は女装な」


どうやら近衛騎士団に彼女や奥さんがいる人はいない。


明日は更新の日ではないので今日が書き納めですね。今年も一年ありがとうございました。来年も刻印花姫をよろしくお願いします!

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