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刻印の花嫁 〜姫の嫁ぎ先は闇の国〜  作者: 森ののか
第2章 ジルダー勇者伝説
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第36話 闇の所有物

商人がにやりと笑った。

誰も気がついていない。


「えっと……お似合い、ではあるのですが……」


ララはシェレネを正面から眺めて眉をひそめた。

そしてもう一度、それに触れる。

ひんやりとした宝石がきらりと光った。


「っ! だめ、外してください!」


ララが控えていた場所の、もう少し奥。

そこで控えていたエラは無礼を承知でそう叫んだ。

何事かと驚いているシェレネ達をよそに、彼女は駆け寄って首飾りを外そうとする。

だが、どう頑張っても飾りが外れないのだ。


「ど、どうしましょう、外れないわ……!」


焦って泣きかけている妹に変わってララがなんだか分からないまま外そうとする。


「なに? なんなの? 外れない……」


そっとその場から出ていこうとする商人をウィルフルは睨みつけた。


「その商人を捕らえよ」


「おや、気付かれてしまいましたか」


宝石の真ん中に、色水のような何かが現れる。


「あああ……」


シェレネの心臓の音が、大きく聞こえた気がした。


「なに……?」


いつの間にか真っ黒に染まってしまった宝石に彼女は困惑する。

そしてその中心から出た何本もの鎖が彼女の体を縛り付けた。


「我が妃よ!?」


「聖妃様!」


黒い靄がうっすら辺りにかかる。


「おやおや」


商人は笑顔を見せた。


「ここまで強い効果が表れるとは」


「貴様、何をした!」


怒鳴りつけるウィルフルにエラが小さな声で答えた。

彼はエラに話しかけた訳では無いのだが、何となく彼女が答えたのだ。


「陛下、あれは、普通の宝石では無いのです」


「は?」


普通の宝石では無い?

ならなんだと言うのだ。

彼は眉をひそめる。


「名前だけならご存知のはず。あれは、封印石、と、言うのです」


その場にいた全員の顔つきが変わった。

封印石とは、お守りのようなものだ。

本当に本当に小さい粒ひとつで自分の心の闇を身につけている時だけ封印することが出来る。

その石は初めは透明で、所有者の感情によって色が変化するのだ。

人々は誰かと仲直りしたい時などに身につけたりする。

小さくて比較的安価なので意外にたくさんの人が持っている。

なら、どうして今のシェレネのようになるのか?

シェレネは心に闇などないはずで……


「闇を封印する石。では聖妃様が身につければどうなりますか?」


少し悩んだあとララはゆっくりと告げた。


「聖妃様は無意識の女神様。無意識、無表情、無感情だから石は……無……だから黒くなる……?」


「そう。それで、聖妃様は闇の神である陛下のお妃様です。"闇"の神の聖妃です。それがたとえ心の闇でなくても、聖妃様の全てが封印されてしまうのです。あの封印石は見た事がないほど大きなものですから……! それゆえ封印する力も強いのです!」


言い終わってエラは泣き崩れた。

なんで初めに見た時に気が付かなかったのでしょう、と自分を責めながら。

要約するとこうだ。

闇の所有物であるシェレネは闇を封印するものに封印されてしまう。

この状況をどうしたらいいのだろう。

誰も彼女の助け方が分からない。

鎖はかたくてとても切る事が出来ない。

その場にいた誰もが途方に暮れた。


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