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刻印の花嫁 〜姫の嫁ぎ先は闇の国〜  作者: 森ののか
第2章 ジルダー勇者伝説
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第31話 喧嘩

昨日は生々しくなってごめんね!! 今日明日はおふざけ回(?)!

はでぺるだああああああああああああああ!

「シェレネ様あ……」


うるんだ目でシェレネを見上げる花と春の象徴。

と、その視線に耐えられなくて目をそらす無意識の女神。

ぎゅっとシェレネに抱き着いたコレーは大きな声で叫んだ。


「うわ~ん、ハデス様と喧嘩しましたああああああああああああ!」


どうやら夫である冥王ハデスと喧嘩したようである。



「ふえ、ぐす、しぇれねさまあ……」


「ほらほら落ち着いてください。なんで喧嘩したんですか?」


優しく頭を撫でながらシェレネはコレーに喧嘩の理由を問う。

少しの間泣いていた彼女はぽつりぽつりと話し出した。


「今日、ハデス様が裁判に行かれるときに、」


「うんうん」


シェレネは相槌を打ちながら聞いている。


「ハデス様の裁判してるところを見に行こうと思って、覗いてたら向こうの裁判が終わってない死者たちの中に一人の女の人がいて。とっても悲しそうな顔をしてたんです。だから声をかけたら新婚だったのにって。もうあの人に会えないって……」


そこで、泣き止みかけていたコレーはまた声を上げて泣き出した。


「かわいそうだと思ったから生き返らせてあげたの。だってまだ二日もたっていないのにというんです。愛し合っていたそうなの。なのにね、ハデス様ったら『簡単に人を生き返らせすぎだ』って怒ったんですよ!」


「すいません冥界事情について行けないです……」


まったくである。


「いいえ、それだけじゃないの。ハデス様が、まだ冬じゃないから私は地上のデメテルの娘だって。その私に生き返らせる権限はないし可哀想だからって生き返らせれば平等ではなくなるっていうんです。ハデス様だって愛を知っているはずなのに、抑えの利かない強い愛を叶えてあげた私を非難するなんて」


まあつまり要約すると、ハデスの職場をのぞきに行って、そこで可哀想な女性を見つけ、生き返らせたら怒られたというわけだ。

とはいえあのハデスが怒る、というのは少し想像し難いものだ。


「どうしましょう。そろそろ冥界に下らなくちゃいけないのに下るに下れない……そうするとお母様は喜ぶけれど私は今年女王として冥界にいることができなくなるし、春になってもずっと地上にいれば誰も帰還を祝ってくれないです……! それじゃあいけないの! 何のために私は……」


「大丈夫ですよ、ハデス様ならきっと話せばわかってくれますから」


必死に彼女を慰めながら、シェレネはどうしたものかと困り果てていた。



「ウィルフル」


「兄上? なにか?」


いきなり一人きりの政務室にやって来た兄にウィルフルは少しだけ驚いたような顔をした。

近くにあった椅子に座った彼ははあっとため息をつく。


「ペルセフォネと口論になった」


「それはまたどうして」


「死者のことで少し」


そうか、と、ウィルフルは呟いた。

そして大好きな兄のほうを向く。


「もう彼女は冥界に下る時期だろう? どうするんだ?」


「どうしたものか……私から頭を下げるしかないか……」


ハデスはペルセフォネとずっと一緒にいたい。

だから彼は彼女を怒らせるわけにはいかなかった。

彼女の後ろにはデメテルがいる。

言いつけられてしまったらそれで最後だろう。


「彼女の死者への優しさは素晴らしいものだが……私はいったいどうしたらよいのだ……」


冥王の悩みを聞きながら、ウィルフルは難しいものだ、とため息をついた。

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