第1話 闇の神の聖妃
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とあるところに、リデュレス王国という小さな王国がある。
リデュレス王国の王と王妃はとても仲が良く、その間には王子が一人いた。
そして今度は王女が生まれるところである。
この王女の名前はシェレネ。
本名シェレネ・リーリアスである。
このリデュレス王国の隣の国は、闇の神、ウィルフル.モートレック神が治める闇の国だった。
正式な名前を、ディアネス神国と言う。
鋭い眼光を持ち戦に強かった闇の神は、強くて恐ろしい神として世界中から恐れられていた。
闇の神には妃が一人もいなかった。
闇の神は国王であるが、その前に神である。
そのため、彼の妃の地位は上から聖なる妃の聖妃、正しい妃の正妃、そして、妾妃。
中でも聖妃は、選ばれた者しかなることのできない妃だ。
右腕に闇の刻印がなければならなかった。
リデュレス王国では王女の誕生を祝って誕生祭が開かれていた。
その小さな隙を狙ってウィルフルは、シェレネの右腕に闇の刻印を刻んだのである。
なぜシェレネが闇の神の聖妃に選ばれたのか。
理由が分からないだろう。
まずウィルフルはリデュレス王国の国民のうちの誰かを選ぼうと思っていた。
リデュレス王国は小国と見下されがちなのだが、謙虚で優しい国民性だったからである。
だから、ウィルフルはリデュレス王国の娘がいいと思ったのだ。
だが、そう簡単にちょうどいい娘が見つかるわけがなく。
彼は困り果て、姉である結婚と貞節と母性の女神ヘラに相談を持ち掛けた。
彼女は今年の4月の初めに生まれた娘がいいと告げた。
シェレネは、4月2日産まれ。
そのため、闇の神の聖妃に選ばれたのだ。
その上、シェレネはとても可愛らしい容姿をしていた。
彼女はウィルフルに気に入られたのである。
闇の刻印は幼い頃はほとんど影響力がない。
刻まれた刻印は本当に小さいので、目に留まらないのである。
しかし、生まれた時から続く影響がたった一つだけあった。
彼女は、決して笑うことがないのだ。
常に虚ろな目をしたまま。
感情がほとんど欠落しているのである。
そしてこの力を弱められるのは闇の神であるウィルフルのみ。
そんな彼ですら、一度付けた闇の刻印を消すことは出来ない。
闇の刻印の力はシェレネが10歳になった瞬間に発動する。
だが、この「いつも無意識である」という力は生まれた時から続くものである。
他には両目の失明、足が動かなくなる、というものがある。
それでも、聖妃になることはそれほど悪い事ではない。
闇の神の聖妃になると無意識を司る女神になれるからだ。
つまり、天界の神々の仲間入りを果たすことができるのである。
そんなこともつゆ知らず、各国の王子達はまだ10歳にも満たない幼いシェレネに求婚をしだした。
だが、彼女が応じるはずがない。
まるで操り人形のように、ただただ首を横に振るだけだった。
幾年かが過ぎ、彼女は次の日で10歳、というところまで成長していた。
すっかりシェレネが眠りに落ちたと思い部屋をのぞいた国王と王妃は、唖然とした。
寝ていると思った彼女は、寝台に腰かけぼんやりと月を眺めていたからである。
どうしたの?
王妃が声をかけようとしたその時だった。
真夜中12時を告げる鐘がなった。
その音に引き寄せられるように、彼女は国王と王妃の間をすり抜け部屋から出て行く。
ふらふらと、部屋から出た彼女はそのまま大広間へと続く階段に向かっていた。
右腕からは黒い霧が立ち上り、小さな双葉の形だった刻印はいつの間にか成長して黒い花を咲かせている。
とん、とん。
彼女が1歩階段を降りるごとに、左目には眼帯が結ばれ闇の刻印は黒い包帯で封印されていく。
小さなティアラは銀色で大粒のネオンピンクスピネルとブルーダイヤモンドで装飾された豪華なティアラに変わり、長い水色のヴェールがふわりと舞った。
ドレスの形も変わり、下の方から真っ黒に染まっていた。
首を絞めるように巻き付いた赤い糸がくるくるとドレスに巻き付いていく。
そして階段の最後の1段を降りきると、彼女は力が抜けたようにそのまま床に座り込んでしまった。
驚いたのは国王と王妃である。
幼い頃から笑わない娘だとは思っていたが、まさか闇の神の聖妃になるだなんて予想だにしなかったからだ。
各国の王子達も求婚をやめ、そそくさと自国へ帰っていった。
そんな中、闇の神がリデュレス王国を訪ねた。
話の内容は、14歳になったらシェレネをディアネス国に住ませたいというものだ。
王と王妃は快諾した。
そして、彼女は14歳になったらディアネス神国に行くことが決まったのである。