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第三十二話

『新しい恋をゲットしてくるわ!』


……確かにマリアンナにそう言ったけどさ。


だけど、その日の内に、


「ローズ嬢。今宵、あなたに出逢えたことを我が一生の誇りにします。愛しています」


――なんて、跪かれながら愛を囁かれるだなんて……誰が想像できただろうか?



****


「ミランダ!アイリス!」

王宮内にある夜会の会場の入口に到着すると、ミランダとアイリスが私よりも少し先に到着していた。


御者の手を借りて馬車を降りた私は、ドレスの裾を少しだけ上げながら、二人に駆け寄った。


「こんばんは。ミランダ、アイリス」

「こんばんは。ローズ。元気そうで良かったわ」

「……あら。具合でも悪かったの?」

ミランダは苦笑いを浮かべ、アイリスは不思議そうに首を傾げた。


「ええと……、ミランダのお陰でもう元気いっぱいよ。なんともないわ」

「そう。なら良いけど。自分の身体は大事にしなさいよ?」

アイリスの母は身体が弱い為に、健康には一一番敏感なのだという。


「うん。ありがとう。アイリス」

私も健康は大事だと思うので、素直に心に受け止める。


「ミランダもアイリスも素敵なドレスね」

今日のドレスもカージナス様が、婚約者それぞれに合うデザインを見立てたのを贈ってくれている。


舞踏会の時とは違い、皆のドレスの裾は床に着くか着かないかの長さである。

三人共にドレスは、シルクサテンの生地に、オーガンジーを重ねられたベアトップと、ベースは同じなのだが、そこからそれぞれの個性に合わせるかのように若干デザインが異なる。


ミランダのドレスは、オレンジ色のサテン生地に黄色のオーガンジーを重ね、ウエストを絞るようにリボンが結ばれているので、ミランダのスタイルが際立って見えるし、アイリスのドレスは、緑のサテン生地と黄緑色のオーガンジーが重ねられ、胸元とウエスト部分には、同色のスパンコールとビーズが縫い付けられていた。シンプルに見えて手が込んでいる可愛いデザインだ。


「ローズのドレスも素敵よ」

「ええ。淡い紫色があなたによく似合っているわ」

「ふふっ。ありがとう」

私のドレスは淡い紫色のサテン生地とオーガンジーを重ね、胸元に花の刺繍がされているという可愛いデザインだった。


三人で連れ立って会場の中に入ると、カージナス様の姿が見えた。

そして、カージナス様から少し離れた壁際にとミレーヌがいた。


……あれ?

カージナス様の側にミレーヌが立っていないことが珍しいと思った。


私が思ったのと同じように、ミランダとアイリスも考えていたようで……


「ミレーヌ様はどうしたのかしら?」

「珍しいわね」

二人共に首を傾げていた。


私達が会場の中に入って来たのを見つけたミレーヌが胸の前で小さく手を振った。

すぐにミレーヌの元に向かいたいところだが……カージナス様に挨拶をしないわけにはいかない。


「カージナス様は今日もイケメンね!目の保養になるわ~」

両手でガッツポーズのような仕草をしたアイリスに癒されながら、私達はカージナス様の元に向かった。


しかし、カージナス様の元に行くと、先客がいるのが見えた。

邪魔をしたら悪いので、挨拶はまた後からにしようとミランダ達と決め、踵を返してミレーヌの元に向かおうとした私は、ふとその先客がいる方をもう一度振り返って見た。


……あれはまさか。

思わず二度見をしてしまった。


『マイプリ』の攻略対象者の一人である、隣国ブラン王国の第一王子サイガ。その人がいたのだ。


どうして、彼が夜会に出席しているのだろうか?

サイガがメルロー王国の夜会に参加するストーリーなんてなかったはずなのに。


……本物、だよね?

思わずジッと見ていると、サイガと目が合った。


「……っ!?」

しかも、私と目が合ったサイガは、何故か蕩けるような笑顔を浮かべたのだ。


……私を誰かと間違えている?

そうでなければ、私に向かってあんな顔をするはずがない。


表情が変わったサイガに気付いたカージナス様が、後ろを振り返って私を見つけると……なんともいえない微妙な顔をした。


その表情を言葉にするのならば――

『やってしまった』

が、一番しっくりくるだろうか。


どうしてそんな顔をするのだろうか?

私は何かをやらかした?

足を止めて首を傾げると、私が止まっていることに気付いたミランダが急いだように私の元に戻って来た。


「ミランダ?どうしたの?」

ミランダも微妙な表情を浮かべていた。


……そう。カージナス様と同じ顔をしているのだ。

訳が分からない……。


「カージナス!あれがローズだね!」

カージナス様からサイガが身を乗り出して来る。


「サイガ。お願いだから落ち着いてくれ!」

カージナス様はサイガを押し留めようとするが、サイガの動きが一足早かった。


カージナス様の脇をすり抜けたサイガは、そのまま私の元に一直線に向かって来た。


ミランダが私を庇うように一歩前に出たが、そんなミランダをもすり抜けたサイガに右手を掴まれた。


「きゃっ!サイガ様イケメン!」

後ろからアイリスの声が聞こえたが……無視をする。

――イケメン好きのハーレム願望者め。


私はそれどころではないし、そもそもこの状況の意味が分からないのだ。


「ローズ嬢。今宵、あなたに出逢えたことを我が一生の誇りにします。愛しています」


私に向かって跪いたサイガは、掴んだ右手の甲に唇を落とした。


「ローズ嬢。私と結婚してくれ」

顔を上げたサイガは、ニコッと少年のような笑顔を浮かべた。


視線をさ迷わせた私は、珍しくカージナス様に助けを求めた。

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