表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/42

第十六話

……逃げた。

私は逃げ出してしまった。

告白をしたまま……返事も聞かずにシャルル様の前から逃げ出した。

最低だ。


そうして逃げ帰ったゲストルーム。

部屋のほぼ中央に置かれた少し大きめなベッドに突っ伏した私。

自分の晒してしまった醜態が……恥ずかしくて、恥ずかしくて……泣いてしまった。

泣き疲れてそのまま眠れるはずもなく、気付いたら朝になってしまっていた。


……今日もミレーヌの代理としての公務があるというのに……私の顔や瞼はパンパンに浮腫んでしまっていた。

顔だけが取り柄のローズの顔がとても酷い事になっている。

このままお化け屋敷のお化けにでもなれそうである。


こんな顔じゃ誰にも会いたくないし……とても会える状況ではない。

自分の邸であればエルザが何とかしてくれただろうが、ここにはエルザはいない。

このゲストルームにも侍女さんはいるが……こんな顔を晒すのは流石に抵抗がある。


代理として失格だ…………。

シャルル様に合わせる顔もない。


あーあ……。今度こそ本当に呆れられただろうな……。


自嘲気味に微笑んだその時。


トントン。

誰かがゲストルームの扉をノックした。


一瞬だけ『まさか、シャルル様?』と身構えた私だったが、『入るわよ』ドアの外側から聞こえたのは私が良く知っている女性の声で……。

私の返事も待たずに部屋の中に入ってきたのは、なんとミレーヌだった。


「ミ……レーヌ?」

私は部屋に入った来た彼女をポカンと見上げた。

ミレーヌがここに来れないから、私が来たはずなのに……何故彼女がここにいるのだろうか?


「……酷い顔ね」

眉を寄せ、困った様な顔で笑うミレーヌ。


これは……夢?

「夢じゃないわよ?」

頬をつねりかけていた私の顔に温かい物が押し付けられた。


……ホットタオル?


「カージナス様に話は聞いたわ。……こうなっているだろうと思って持って来たの。しばらく顔に乗せときなさい」

ミレーヌに言われた私はそのまま素直に従う事にした。

これで顔の浮腫みが多少はなんとかなるだろう。


「どうしてここに?」

顔面に乗せたホットタオルを両手で押さえながら、私はミレーヌに尋ねた。

ミレーヌが今ここにいてくれる事はとても嬉しいし、心強い。

だけど……意味が分からない。


「……ごめんなさい」

「どうして謝るの?」

「今回の視察はカージナス様と私がお膳立てした事なのよ」

「……え?」

「ローズとシャルル様をもっと仲良くさせてあげたかったのよ」

「私と……シャルル様?あれ……ミレーヌも知って……ってそうか。知ってるよね」

私は苦笑いを浮かべた。


カージナス様がミレーヌに言わないはずもないし彼女の聡さがあれば、私のおかしな言動から察知する事だって可能だ。


「でも、私に用事があった事は確かなのよ。そこは嘘じゃないの」

「そうなの?ミレーヌがそう言うなら私は信じるけど」

「良かった……!早めに用事が済んだから合流しちゃったのだけど……来て良かったかしら?」

「勿論!……私、色々とやらかしちゃったから……ね」

小さく溜息を吐きながら笑うと、ふわっと柔らかい物に身体が包み込まれた。


「……ミレーヌ?」

ミレーヌが私を抱き締めてきたのだ。

その温もりに癒やされた私は、昨日の事をミレーヌに説明した……。


**


「そうなのね。ねえ……治るって言ったら治したいと思う?」

「え……?」

「シャルル様がいる時にお酒を飲むとローズが色々と失敗しちゃう事よ」

「……それ、治るの?」

「ええ。多分だけど原因が分かったの」

「本当!?」

私は顔に乗せていたホットタオルをむしり取ると、そんな私の行動に驚いたのか、ミレーヌがキョトンとした顔をしていた。


「治るの?……というか病気だったの?」

「病気ではないわ」

「違うの?では……どうして?」

「うん。いつもの可愛いローズに戻ったわね」

私の頬を撫でながら微笑むミレーヌ。

百合っ気はない私だが……カージナス様の気持ちが少し分かった。


うん。やっぱりミレーヌは可愛い。

というか見た目の派手さとのギャップって……萌え要素がバリバリじゃないか。


「ローズ?聞いていた?」

「……ごめんなさい。聞いていなかった」

「もう!カージナス様みたいな顔になっていたわよ?」

……それは嫌だ。一緒にはされたくない。


「だからね、ミランダ様にお会いしてくると良いわよ」


ミランダ様……?


「ミランダ様って……四番目の婚約者候補の『ミランダ・バン』侯爵令嬢の事?」

「そうよ。他にいるかしら?」


……私の知り合いの中にはいないけど……ミランダ様?

今の私の頭の中は『?』マークが大半を占めている。


三番目の婚約者候補者のアイリス様を飛び越えて四番目?

って……そういう話ではない。


どうしてここでミランダ様の名前が出てくるの?

聡明でとても頭の良いミランダ様だが……どうして彼女に私の事が分かるのだろうか?


口に出していない私の疑問を何故か正しく理解してくれたミレーヌがニッコリと笑った。


「ミランダ様は魔法使いなのよ」


……と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ