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引退間際のくたびれたおっさん冒険者がダンジョンで見つけた超古代文明の魔導鎧はバトルスーツで変身ッ!  作者: 坂東太郎
『エピローグ』

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エピローグ


 見せつけるように街の上空を一周したドラゴンの姿と咆哮に、街の住人は震え上がった。

 多くは領兵と冒険者の誘導で避難を始め、一部の住人はそれぞれの役目を果たすために街に残った。


 曇天が太陽を隠した、薄暗い午後。

 避難する人々は、街に残った人々は見た。


 不死の山の稜線を崩したドラゴンのブレスを。

 分厚い雲を貫く黒い奔流を。


 日々の生活を捨てて逃げ出した人々は、山や雲さえ破壊するドラゴンに恐怖した。

 自然さえも凌駕する強大な力を前に、ただ祈ることしかできない。

 どうか助かりますように、と。


 そして、人々は見た。


 曇天の空から流れ落ちる、一筋の青い光を。

 後世に『龍滅の流星』と呼ばれることになる光を。


 流星が落ちて、しばらくのち。

 街に残ったはずの兵士が、人々を呼び戻しに現れた。

 流星によってドラゴンは死んだと。


 街道で、森で、平原で、街で、避難した人々は、残った人々は歓声をあげて涙を流した。

 助かったんだと、長年暮らした街も無事だと、歓喜に沸いた。


 喜びが落ち着くと、人々は流星について口々に噂話の花を咲かせる。


 ある冒険者は言った。

 すげえ偶然があるもんだ、なんにせよ助かったぜ、と半笑いで。


 ある神官は言った。

 これこそ、人々の祈りに応えた神の奇跡です、と。


 またある者は言った。

 きっと領主様が、秘奥の魔法を使ったに違いない、と。


 思い思いに喋り出して、それを聞いた人々は肯定したり否定したり騒がしい。

 それでも人々の表情は笑顔だった。

 命を落とすことも、住んでいた場所を失うこともなかったのだから。


 ただ一人。

 炊き出しのために街に残った、とある宿の看板娘は表情を曇らせた。

 心配そうに空を見上げて、「カケル」と呟く。



 悪しきドラゴンの襲来と龍滅の流星。


 街の危機と街を救った奇跡は、幾世代にも語り継がれる伝説となった。



 ————そこにカケルの、黒い全身鎧の「マギア」の名はない。



 ヒーロー(英雄)は、語られることなく静かに眠る。



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