友香の家・神津探偵事務所
主な登場人物
・反町友香(ソリマチ ユウカ
中華街に暮らす探偵少女。中学2年生。
ピンク味の帯びた白い髪に、赤い瞳を持つ。
茉莉花茶が好き。
・青山清花(アオヤマ サヤカ
神奈川県警の刑事。友香の姉的存在。
英国人と日本人のハーフ。
灰色の髪色に青い瞳という身体的特徴を持つ。
・神津柳(カミツ ヤナギ
中華街で探偵事務所を営む女性。
カールしたショートボブと眼鏡が特徴。
友香の叔母にあたる。
「で?まーた危ないマネしてきたわけね?」
手を腰に当てた小柄な女性が、ソファに座った友香を見下ろしていた。
「あら?ちゃんと清花に連絡したわよ?」
「あのねぇ、いくら清花に電話したからって、人が殺されたところをウロチョロしてたらダメでしょうが」
彼女は神津柳。友香の叔母にあたる人物だった。
柳の風貌は若く、20代中盤に見えるが32歳。身長は160センチほどで、カールしたショートボブをハーフアップにしており、楕円形の眼鏡が理知的な雰囲気を醸し出していた。
彼女は、探偵業を営んでいる。今日は非番だったからか、ポロシャツにジーパンとラフな格好をしていた。
清花と別れた友香は、下宿先である柳の事務所へと戻っていた。
買い物から帰ってくるのが遅かったことを訝しんだ柳は、当然彼女を問い詰める。そんな叔母に、友香はサラッと事の顛末を話した。その結果、友香は柳の小言を聞く羽目になっていた。
「何かあったらどうするのよ」
「まぁ、結果良ければ全て良し、よ?」
「よくないわよ。全く……」
テーブルを挟み、友香の向かいのソファに座った柳は頭を抱えた。
友香はいつもこうなのだ。年頃のせいなのか、性格なのか彼女は好奇心旺盛で、気になることがあるとすぐ首を突っ込んでしまう。彼女自身は、危ないことはしないと言っているのだが、柳は心配でたまらないのである。
また、今回のように、進んで事件に関与してしまうことも以前に何度かあり、その度に友香に苦言を呈するのだが、どこ吹く風と軽く流されてしまう。柳が友香にいいようにあしらわれてしまうのは、お約束だった。
「あ、そうだ。はい、お釣り」
ふと思い出したように、スカートのポケットを弄る友香。花の模様が刺繍されたガマ口の財布を取り出すと、柳に釣銭を差し出した。
「ああ、そういえば買い物頼んだのよね……ありがとう」
お金を受け取り、ソファから立ち上がる柳。
「買った物は台所に置いておいたわよ。ほうれん草は冷蔵庫の中ね」
「ん。助かったわ」
柳が頷くと、友香はソファから立ち上がり、
「じゃあ、私、またちょっと出かけるから」
「またどこか行くの?夕飯までには帰ってくるのよ」
「ええ、餃子楽しみにしてるわよ」
「はいはい……ってなんで知ってるのよ」
小走りに自宅を出て行く友香には、柳の声は聞こえていないようだった。
一人になった事務所で、彼女は割と真剣な表情をして呟いた。
「今晩は小籠包にしてやろうかしら……」