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【短編集】無題の自由帳  作者: あぼだ
8/12

懐かしい風の音がする

「ねえ、私の恋が終わったら、あなたはどうなっちゃうの?」

〝ん?終わるっていうのは、ハッピーエンド?それとも…〟

「それはいいから。質問に答えろ」

〝へーへー。〟


風音、実はね、ぼくはとあるキューピットから依頼を受けた道具に過ぎないのさ。役目が終わったら、必要なくなる。所詮風船だからね、使い回しもできない。お別れってこと。


「道具…?どういうこと?」

〝ねぇ風音、きみは昔、ぼくの持ち主になった時間が少しだけあったんだよ。覚えてる?〟

「さぁ…どういうこと?」

〝遊園地。ジェットコースターが壊れる少し前。〟

「…………あ」


幼い君が強い風に吹かれて、ぼくから手を離してしまったあの後、天使がぼくに言ったんだ。「あの子を幸せにしたいでしょ?」ってね。もちろん、遊園地の風船としての任務を果たしたいと思ったよ。そしたら天使がぼくを地上に下ろしてくれて、きみのそばにある木に結びつけてくれたんだ。

でも、ぼくは任務をこなせなかった。だってきみはそれどころじゃなくて、ぼくを忘れてしまったから。

それから天使の道具として過ごしていたけど、君のこと、ずっと考えていたんだ。生まれて初めての持ち主だったから、かわいいきみがとても愛しくて。


〝あの頃、恋をしてたのはぼくのほうだったんだからね?またきみのそばにいられる!って思ったら、まさか恋愛成就のお手伝いだなんて。〟

「夢みたいな話だね…」

〝夢であってほしかったさ。でも、ぼくは風船。あくまでおもちゃ。結ばれないことなんか分かってた。〟

「………」

〝まあまあ落ち込まないで。きみはきみの好きな人を、ずっと好きでいたらいいのさ。〟

「…うん、ありがとう」


ただのゴムの膜だったぼくに宿されたのは、幼い頃のきみの心。好きなものにまっすぐだった、純粋で澄んだ瞳をしていた、宝石のような思考回路。


「だからやけに好きなものに対して素直になれるんだね。…てことは、その声はもしかして」

〝うん、小さい頃の君の声だよ〟

「どうして自分のことをぼくって呼ぶの?」

〝その天使さんの一人称がそれだったから、テキトーに真似したんだ。〟

「あっそう…それで?その任務はいつこなしてくれるの?」


〝は?〟

「え?」

〝あのねえ、ぼくはあくまでお手伝いって言ったでしょ!そんな、ワークの答案冊子じゃないんだから、半分くらいは自分でなんとか努力なさい!〟

「えぇえ〜〜〜〜っ…」

恋する17歳の女の子

春藁風音(はるわら かざね)


自分が恋をしていると分かってしまったので、ひたすら我慢することに精神を使っている。


風船さん


とある天使学校のキューピットから送り出された、恋の成就のためのお手伝いさん。

遊園地で、小学生の風音に貰われたが、すぐに風で飛ばされてしまった。それ以来、風音のことを忘れずにいた。

我慢なんてしないで、早く素直になりなさい!


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