きみと空の旅を
「風船」
私は、君のことが好きなのだろうか
今まで友達としてしか見ていなかった
そしてこれからも友達でいようと思ってた
だから恋をするなんて受け入れられなかった
今までの距離感が心地よかったのに
突然欲張りになってしまったのだ。
これは、青春などではない。
自分で出口を作らなければならない、迷路。
でも、今はゴールするつもりはないよ。
私はまだ、恋を知らない。
「ねぇ、恋ってなんなの?」
〝え!?現在進行形で恋してんのまだ気付いてないわけ!?〟
「だから…あんただけ分かってても意味無いでしょって言ってんの。」
〝あのねぇ、君の首にぼくが巻きついてる以上、きみはまさに恋をしてるの!あの子のこと、好きなんでしょ?〟
好き、とは?
「好きだよ?でも恋愛の好きってわけじゃないと思うんだよ」
〝いーや、そんなことないね。まず一つ、きみは今日何回嫉妬したの?〟
「嫉妬〜?」
〝あの子が他の人と仲良さそうにしてるところ、羨ましいなって思ったでしょ?〟
「まぁ、うん…」
好きとは、嫉妬するものらしい。
〝二つめ。あの子の隣に座ったとき、どんな気持ちだった?〟
「……………………」
〝正直に言いなさーい?ぼくに嘘付いても意味無いからねー?〟
「チッ……、…もっと傍に寄り添えたらいいなって思ったよ…」
〝うんうん。今まではそこまで思わなかったよねえ〟
好きとは、寄り添いたくなるものらしい。
〝そんで三つめー。傍にいるにも関わらず、話が途切れて静かになるとどんな気持ちになる〜?〟
「…気まずい、というか、なにかしちゃったかなって、不安になるよ」
〝でしょう?〟
「でもそれって、友達でも同じことじゃない?突然静かになったら誰に対してもなんとなく気まずくなるよ」
〝そうだよ?でも気まずく思えるってことは、それほど相手の事を想ってるってことだよね。それを確かめるための質問だよ〟
好きとは、気まずく思う時もあるらしい。
「でもさ……私ってほら、自分で言うのもなんだけど、その…甘えたがりっていうかさ、そういうところあるじゃん?」
〝まぁね?あの子がよくスキンシップしてくれるのすっごく嬉しそうだもんね〜。今の季節じゃ、単に寒くて暖とってるだけなのかもしれないけど〟
「それ以上喋るな。…まあ確かにそうなんだけど、それってようは、スキンシップしてくれるのが嬉しいから、恋してるのかもって思うわけじゃん?それじゃぁいつもの甘えたがりと変わらないよ」
まるで、自分がぬいぐるみを抱きたがる子供のように思えてくる。好きな人をぬいぐるみのように扱って良いのだろうか?そして、それは本当に恋と言えるのだろうか。
〝ただの甘えんぼで、心の底からあの子を求めてるわけじゃないかもってこと?〟
「…うん」
〝なぁるほど。どうりでぼくもなかなか完成しないわけだよ。確かにそこは今のとこ、区別がつかないね。なんたってきみの甘えんぼ要素ずっと前から存在していたんだから〟
「(なんかうざいな…)あんたでもわかんないの?」
〝ぼくはあくまで君の本心がわかるだけであって、君も分からないところはぼくも分からないんだよ〟
「へぇ、なぁんだ」
〝む、ごめんなさいねー、御期待に添えられなくてー。〟
「はいはいどんまーい」
あなたに恋をしたと肯定するには、まだ時間が足りないようだ。しかしそうしている間にも、嫉妬や不安は募る一方である。
いち早くこの気持ちを整理しないと。
と思う自分と、
いや、今の関係のままでいい。我慢すればいい。
と首を絞める自分。
私は一体、どこへ向かっているのだろうか?
女の子
恋がわからない。
好きな人はいるけれど、自分の感情を受け入れられないままでいる。
風船さん
女の子の首に巻きついた、ピンク色のハート型をした風船。一部が雲のようにふわふわかけている。女の子がその人の事を強く思うほど形はハッキリして、膨らんでいく。
割れても紐を切っても、女の子が微かに恋をしている限りは何度でも蘇る。