花藍色の瞳 3
ダリオは再び、砂漠に現れる森を探し求めた。
今は全てが色彩に溢れ美しく感じられる。
初めて目にしたフェンネルの姿を思い出していた。
森の中で彼は黒髪をなびかせ、一本の枯れかけた古木の幹に掌を当てていた。
もう片方の手には、ナキウサギの首を掴んでいた。
ナキウサギは絶望的に彼の手の中でもがいたが、彼はその首筋を噛み裂き、滴る血を木の根元に振り撒いた。
なおも彼は容赦なく血を絞り、死骸を木の根元にうち捨てた。
すると間もなく木は緑に生い茂り、木の根元から緑の草木が生えてきて、血を振りまいた地面からは水が湧き出て来た。
彼が溢れる湧き水で口をすすぎ血に染まった手を洗い清めると、湧き水の周囲には様々な野花が咲き始め、時の流れを無視してたちまち生い繁った。
ダリオは静かに残忍に振る舞う彼にただ魅入られていた。
その時、頭上を赤く陽にきらめくショウジョウトキの群れがよぎり、彼が振り返ってダリオの姿を認めたのだった。
花藍色の深く美しい双眸、血の色を感じない石膏のような白い肌に黒髪。
背が高く痩せて見えるが骨ばった逞しい体つき。薄く光を放つかのようだった。
深く響く声で彼は言った。
「見たのだな」
彼はダリオを見据えて緋い唇だけで微笑みながら、その姿は空気に溶け込むように薄れ、やがて消えた。