九日目「私の.....パン.......」
今回はTwitterで、とある御方の小説ネタから着想を得て、それをお借りし、ご本人の許可も得て書きました。
今までよりもハッチャけてる? かもしれないが、まぁご覧ください。
『いけないわ.......』
こんにちは、『心城 零花』です。
今は家に一人で居ます。
他の兄弟達は学校に、お母さんは忍者のお仕事、お父さんは職安に行ってしまったので、現在家には私しかいません。
『もう.......がまん.......できない.......』
一人で暇だからリビングでイラストを描いていたら、私はある衝動に支配されてしまったのだ。
『今.......無性に.........食べたい.........』
そう、食欲、私は今、食欲に支配されてる。
ただし、あるもの限定の食欲だ。
『パンが.......食べたい........!!』
そう、パン。パンが食べたくなったの。
あー、別に女の子のパンツ描いていたからパンを食べたくなったわけじゃないからね?
けっして疚しい気持ちなんてこれっぽっちもないんだからね!
私は純粋にパンを食べたくなったの!
『んー、何かパンあったかな? 菓子パンでもいいや♪』
と、思ってキッチンや冷蔵庫の中を探したが、うちにはパンの一欠片もなかった。
『あるぇー? 確かお母さんが買ってきたのがあったような......あ、さては十夜ちゃんが食べたなー。まったく』
むー、どうしよー? 私、基本外には出たくないしなぁ。
そもそも幽霊がパンを買いに行くこと自体おかしくない?
いや、そもそも、絶体に店員さんがびっくりするよ。昼間に幽霊がコンビニに行って買い物するなんて、
『でも食べたい......もういっそのこと、パンツを食べ、ん、んん、何でもないです』
そんなことしたら、妹達に怒られちゃう.......あ、そうだ!
『私がパンを作ればいいんだ!』
とか言ってみたけど、私パンを作った事がない。
そんな時こそネットのレシピで調べよ~。
~お姉ちゃん検索中~
よし! やるぞ!
パンはなくても、幸い材料はちゃんと揃ってた。
........あーでも、これ勝手に使っていいのかな?
お母さんになんか言われないかな~?
恐いし、ちょっと連絡して聞いてみよ........
━━その時であった。お姉ちゃんはこう思ってしまった。
今お母さんは国からの指令で極秘利の隠密作戦をしてるはず。
もしここで電話とかメールを送ったら、その着信音でターゲットにバレてお母さんがピンチになるかもしれない!
お母さんに怒られるのはいい、それよりも、お母さんが帰ってこなくなる方が嫌だ!
なので、電話もメールもli〇eもしません。
※お姉ちゃんはお母さんの忍者としての仕事内容は知りません。この考えに至ったのは昨日見たスパイ映画の仕業。
『まぁまぁ、仮に材料勝手に使ったとしても、私のお小遣いで代替えできる、と思うし。まぁやってみますか!』
さっそくお母さんのエプロンと三角巾を着けてって、え? 幽霊なのにエプロンとか要るのかって?
ふふん、こう言うのは見た目重視です!
『私が言うのもアレだけど、黒髪ロングなお姉さんがエプロン姿で三角巾頭に巻いてパンを作るこの姿! これはこれで需要があるのではなかろうか!?』
........一人、一人の時はどうして変なテンションになっちゃうんだろ?
皆さんもそう言う事ありません?
私は一人の時はしょっちゅうです。
『.......気を取り直して、えーと材料の確認をしよー』
~材料~
・強力粉...200g
・インスタントドライイースト...3g
・塩...3g
・砂糖...14g
・スキムミルク...12g
・水...136g
・無塩バター...10g
『え、えぇと、まずは何をすればいいの?』
・作り方1
材料を計量します。
大きめのボウルに粉・砂糖・塩・インスタントドライイースト・スキムミルクを計量します。
もうひとつ小さめのボウルに仕込み水を計量します。こちらも必ずデジタルスケールを使ってください。
また、別にバターも計量しておきます。
『.......デジタル.......スケール.......だと?』
なぁにそれ? 分かんないし。後、私計量のやり方知らないから、全部『適当』にやりました。
それをボウルに入れてっと、次に小さめのボウルに水136g......なんて分からないし、コップ一杯分でいいかな?
・作り方2
最初はゴムベラで大きなボウルの中の材料をぐるぐると混ぜます。一生懸命混ぜる必要はありません。均等に材料が混ざればOKです。
そこへ仕込み水を一気に入れ、ゴムベラでぐるぐると混ぜます。
『よーし! 混ぜちゃうぞ~』
ぐーるぐる、ぐーるぐる。で、次はさっきの水を入れ、ひゃ!?
『あわわわ、勢いよく入れすぎて材料が飛び跳ねちゃった~』
飛び散った材料は私の顔面に飛んで来た!
.......けど、私霊体なのでスルーして床に落ちてしまいました。
『.......空気読め! もし私がちゃんとした肉体だったら、今のは明らかに読者サービスシーンでしょー! お姉さんの顔面に白くてとろみのある液体が掛かるだよ!? それを━━━━━』
※すみません。お姉ちゃんは一人でいるせいで、かなりテンションがおかしいです。そもそもこれ小説だからサービスシーンは読者には見れません。こんなところ、他の人には絶体にお見せ出来ねぇ。
せっかく混ぜた材料が少し減っちゃった。けどお姉ちゃん挫けない!
えーと、次は......
※ここでカット、何故かって? 今お姉ちゃんが作ってるパンは『丸パン』。作り方は全部で1~14の手順があるが、その度にお姉ちゃんの下ネタ全開のハイパーテンションをお見せするのは、こちらとしてお見苦しい次第でして、
下手したら皆様のお姉ちゃんのイメージがかなりぶっ壊れる程の惨事が起こることが予想される。
取り合えず完成までカット。
~4時間後~
『はぁ.......はぁ.........』
レシピ通りにやれば2時間で終わる予定だったのに、まさかこんなに掛かった上に、キッチンを半壊させてしまうなんて~。
こんなの漫画でしか見たことないよ~。なんでキッチンが半壊するの~?
それもそうか、作ってる最中にエッチな妄想が膨らんで、変なテンションになって狂戦士の如くパンを作ったものねぇ.......。
「ただいまー」
『!?』
あの声は千ちゃん!? え! もう夕方なの!?
「うわ、焦げ臭い、一体どうしたの?」
『あわ、あわわわ、パ、パパパパパ、パンがががががが』
「ちょ、落ち着いてよ零花ねぇ!?」
~お姉ちゃんのかくかくしかじか~
「はぁ、パンが食べたくなったからパンを作ったらキッチンが壊れた? なんでそんな漫画みたいな事が起こるの?」
『あ、あーいえ、その、な、なんでかなー、あははは~』
「.......(じー)」
『うぅ、お、お姉ちゃんをそんな冷たい目で見ないで~』
「別に責めてないよ。お父さんが帰ってきたら、またよく分からない力でキッチン直してくれるだろうしさ。それより」
『それより?』
「パンはどうなったの?」
『こ、こここここ、こちらにございます~』
「いや、そんな王様に献上するみたいに出されても.......食べていい?」
『ど、どうぞー』
うぅ、ふ、不安だぁ......キッチンを犠牲にしてまで出来た人生初のパンだしなぁぁぁぁ。
ぺろっ、これは、青酸カリ!? て、言いたくなる程のマズさよきっと~。
「......おいしい」
『ふぇ?』
「表面はサクサク、中はもっちり、これは市販のパンと変わらないクオリティだ.......!」
『そ、そんなまさか.......じ、じゃあ、私も一口.......』
ぱくっ、これは、モチモチパン!?
表面は噛めば噛むほどサクサクと良い音を奏で、表面が割けて中の柔らかな生地が歯に当たった瞬間、歯全体を柔かな生地が羽毛布団のように優しく歯を包み込む。
そう、これはまさに、まさにこれは........!?
女の子のお尻......ッッ!!
そう、例えるなら、レンジでこんがり焼けた表面の生地は女の子のパンツを表現し、焼けた生地の向こうに広がる柔かな生地の楽園。それこそまさに、パンツの向こう側にある女の子の花園、柔らかなOSHIRIそのものではなかろうか.......ッッ!!
こ、この柔らかさを別のものに表現するには、もうOSHIRIしか思い浮かばん!!
「あ、あれ? 零花ねぇ、急に泣き出してどうしたの?」
私は、ある答えを得た。パンは女の子のパンツとOSHIRIを表現できると、まさに芸術、私はもっと知りたい、パンの可能性を、その先にある真理を........ッッ!!
「いい加減にしろぉぉぉぉぉぉぉぉ!! それ以上変な方向に行くなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『ひゃい!?』
「あ、一にぃ、おかえり」
『一兎!? ま、まさかお姉ちゃんの心を......』
「.......聞きたくなかったよ。でもあんなに心の力が暴走しちゃうと、聞きたくなくても聞こえちゃうよ」
『━━━━━━ッッ!!』
「うわっ!? 零花ねぇ!? 何処に行くの!?」
『し、しししし、知らなぁぁぁぁぁぁぁい! お姉ちゃん暫く旅に出ますぅぅぅぅぅぅぅ!!』
~語り手変更中~
「........出てっちゃった。一にぃ、零花ねぇは何を考えていたの?」
「あ、あーその、千菜ちゃんは知らない方がいいと言うか、その.......」
何だったんだ? まぁ零花ねぇの初めてのパン美味しいな。モグモグ。
「ま、まぁ何にせよ。零花姉ちゃんの事だから、明日には帰ってくるでしょ。うん.......それより、俺も食べていい?」
「いいよ」
「では、ぱくっ、これは、千菜ちゃんのお胸(の、ような柔らかさ)!?」
「.......」
「あーごめんなさいごめんなさい! ちょっと魔が差しただけと言うか、い、いやー、姉ちゃんのパンは美味しいなー、なははは、は........(チラッ)」
昨日までだったら、すぐに一にぃを殴っていたかもしれない。でも、もうこの程度で暴力は振るわない。
「そうだね。確かにこれは私のお胸みたいに柔らかいかもねー(棒読み)」
「あ、あれ? 怒らないの?」
「別に、その、昨日の夜の事もあるし、ある程度の事なら、許してもいいかな.......と、思っただけ」
「!? せ、千菜ぁぁぁぁぁぁ! だいしゅきぃぃぃぃぃぃぃ!! ぶご!?」
「だからと言って、全てを許したじゃないんだからね! 今明らかにキスしようとしたでしょ!?」
「ぐ、おおおお、さすが我が妹、察しがいいなぁ、では久し振りにやるか、兄妹喧嘩を!」
「なんでそうなる!? ........別にいいけど、私負けないから」
ちなみに、ここで言う兄妹喧嘩はテレビ格闘ゲームで決着を着けるという事です。なんせ家の中では私闘禁止なので。そもそも私がガチで一にぃと喧嘩して勝てる気がまったくしない。
「よぉし、ではではー、テレビON! それじゃ手始めに......」
「ただいま」
「「ッ!? お、お父さん!?」」
お、お父さんがいつの間にか職安から帰ってきて背後に立っている!? 玄関が開く音すら聞こえなかったのに!?
「.......これ、お前たちがやったのか?」
これとは、零花姉ちゃんが壊したキッチンの事であろう。
すっかり忘れてた。
「キッチン壊した挙げ句。それを放置してゲームをするとは......」
「ちょ、ま、お父さん、これには事情が......」
「そもそも、これは零花姉ちゃんが......」
「HAHAHA! .........言い訳無用ッ!!」
「「ひゃい!?」」
お、お父さんが、お父さんが怒った!? お父さんが怒ると、かつての魔王としての雰囲気でもって説教するから、かなり恐い、メチャクチャ恐い! 昨日一にぃと観たホラー映画以上に恐い!
だって、あれはこちらが安全な所から恐怖を疑似体験するもの。
一方、私達の目の前には、かつて世界を滅ぼそうとした本物の魔王。悪の帝王が怒りに満ちている。格が違いすぎる.......。
「お母さんの代わりにお前たちを叱ってやるぞッ!! 命を捨てる覚悟で臨むがいいッ!!」
「「キャアアアアアアアアア!!?」」
~おまけ1~
こんばんは、僕は『荒井 玲』です。戸籍上は女の子ですが、中身は男です。初見の方には混乱を招くような事を言ってしまい。すみません。
この間は僕の初恋の人『心城 零花』さんのお見合いに出席し、僕の想いを伝えたのですが、残念ながら想いは届かず、代わりに彼女の友人になることができました。
そんな零花さんから先程連絡がありました。
『玲くーん。今夜だけそっちに泊めて~。うえーん』
零花さんが泣いている!? これは一大事だと思い、僕はあっさり二言返事で了承しました。
ご家族の方と何かあったのか?
と、とととと、取り合えず想い人の零花さんが、こ、今夜うちに泊まりに来る!?
父上も「オーケー。仲良くやりまたまえ。あ、でもお前はまだ16歳なんだから、一線は越えるなよ?」
なんか変な事思われてるけど、うわー、う、嬉しい。
そ、そそそそそ、粗相のないようにおもてなししなくちゃ。
ピンポーン。
「わ!? も、もう来たの!?」
あーどうしよ、僕変な格好とかしてないよね? あ、部屋片付けたっけ?
ピンポーン。
「は、はーい! 今行きまーす!」
え、ええい! そんなことより早く零花さんをうちに上がらせなきゃ!
「お待ちしておりました零花........さん?」
「あら? どうかしたの? 玲くん」
玄関を開けると、そこには零花さんが居ました。
ですが、違う、何かが違う、何かがおかしい。だって、目の前に居る零花さんは.........『霊体じゃない!』 ちゃんとした肉体を持った零花さんがそこに立っていた。
「どうしたの? 早く玲くんのおうちに入りたいなー」
「.......誰ですか。アナタは?」
つい、そんなことを聞いてしまった。なんかいつもと雰囲気が違う。なんと言うか、かなり異質。目の前の零花さんは幽霊じゃないのに、幽霊以上の寒気を感じる。
それに、目付きが違う、あの穏やかで優しい目でなく、冷めきったような、なんの温もりもない氷のような眼差しが、僕の双眸を釘付けにしていた。
「......おかしな事を言うなー玲くんは、ふふ、アハハハ」
「......ッ!!」
恐い、目の前の零花らしき人が、恐い.....ッ!
「ごめんね。猿芝居もここまでにして、本題に入りましょうか。確かに私は『心城 零花』ではない。ただし、この肉体は心城 零花のものよ?」
「あ、アナタは一体、うっ!?」
か、体が、動かない!? なんで!? 石のように、体が固まって.......
「『荒井 玲』くん。私は君が持つあるものを頂きに来たの」
「あ、あるもの......だと........?」
「そう、それは━━━━━」
━━アナタが今履いてるパンツよッ!!
「........え?」
「アナタのように、半分人間、半分魔物、その上肉体が女でありながら心が男。まさに、まさに陰陽の究極形とも言える存在なのアナタはッ!!」
「......バカですか?」
「いいえ、私は至って真面目。アナタのような存在が履いてるパンツ。それこそがある儀式に必要な重要アイテム。ゲームで例えるなら、ストーリー進める上で必要なキーアイテムなのよ! それがなきゃストーリー進まないのよ!」
「この人バカだぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
突然現れてパンツくれってなんだよ!? 零花さんの顔でそれは止めて.......あ、本人と大して代わり映えはないかも。
「そんなわけで、いざ! 儀式が終わった後は我が家の家宝にするわ!」
「やめてぇぇぇぇ!! 零花さん助けてぇぇぇぇぇぇ!!」
~おまけ2~
零花です。勢いで家を飛び出して玲くんの家に向かったら、玲くんが自宅の前で倒れていました。
『れ、玲くん!? どうしたの!?』
「れ、零花......さん.......良かった......本物だ.......」
『い、一体、何が起こったの!? 誰がこんな.......ハッ!』
介抱していたら、うっかり玲くんの股間の辺りを触ってしまった(わざとではある)が.......ない。
そんな、玲くんの........下着がない!?
「も、持ってかれた.......パン........(がくっ)」
「玲くん? ねぇ、返事して、玲くん、玲くぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」
次回、パンツ争奪戦が始まらない。
これは酷い。書き終わった後に読み返してもなんか酷い。なんか唐突なシリアスに見せ掛けて、次回はシリアスにはならないと思う。たぶん。
では、さらば!