七日目『私の魔王なお父さん』
へぁ!? のんびりしてたら、前回との間が空きすぎちゃった!?
遅くなりすぎたけど、心城さんちの変な家族、はっじまっるよー。
あれは、私が16歳の誕生日の時だ。
高校に進学して、友達も出来て、クラスの皆と馴染み始めた頃だ。
うちに帰ったら、父が私の誕生日を祝う為のサプライズを用意をしてると言っていたが、それを私に言ってる時点で最早サプライズではない気がするのだが、
ちなみに、私の母は私を産んだ時に亡くなってしまい、父と二人で暮らしてきた。
故に、父だけが、この世で唯一の肉親。
おっちょこちょいだが、そんな父からのバースデーサプライズに期待を膨らませながら、私は学校を終えて自宅の玄関の扉を開けた。
今思うと、あの扉を開けた時点で、私は『普通』に戻れなくなってしまったやもしれん。
この世に生を受けた時からずっと見てきたあの玄関が、その日だけは異界へと続く門へと姿を変えていたのだ。
パーン! パーン!
「ハッピーバースデー!! 今日からお前は『魔王』となってこの世を滅ぼすのだー!」
「は? 父さん何言ってるの? 頭大丈夫?」
「ひどい!?」
~〇~
「お父さん聞いてる?」
「え? あ、千菜か、すまない、少しボーっとしてた」
......まさか昔の記憶を思い出してしまうとは、あ、『心城 不死義』です。元魔王です。今は心城家の家族全員が朝の食卓を囲んで朝食をとってる最中です。
「あらあら、あなたったら、昨日遅くまで零花の事で反省してたものね」
「う、うむ、確かに反省しすぎて夜も眠れなかったんだった」
『.......確かにお父さんの人望の無さには驚かされたけど、代わりに大切な友達が出来たから許します!』
零花が私を許してくれるとは、しかしあいつら、かつての部下とはいえ、あそこまで堕ちに堕ちていたのか、特に『水山』の奴、あいつは病院から出てきたら、また病院送りにしてやろう。
「むー、それよりお父さん、今日のこと覚えてる?」
「......? 今日って、何かあったか?」
千菜が不貞腐れてる。一睡もしなかったから千菜の話を聞き流していたとは、誠にすまない。
「あなた。今日は千菜と百華の学校で『授業参観』があるんですよ」
「あ 」
そう言えば、前にそんな事を言っていたような.........!?
「お父さん.......まさか忘れて」
「い、いやいや! 忘れてないぞ! 本当だぞ!」
「ふーん?」
うぅ、千菜の眼差しが辛い、忘れていないなんて言っても、完全に忘れてた事なんかバレバレだろう。
だって、いつも通り漆黒の鎧の上からサラリーマンスーツを着て出社する気満々だもんなぁ.......
「まぁまぁ、父さんも悪気はないんだし、許してやれよ千菜」
「......そう言う一にぃは何処に居るのさ?」
「むっふっふ~。愛する千菜ちゃんの慎ましやかなお胸の間ですぞ~。体が小さいと何処にでも潜り込めるからさ、てへぺろ☆」
「......(怒)」
「ほげぇぇ!? 肘! 脳天に肘打ちは死ぬ! 冗談抜きで死んじゃうぅぅぅぅぅ!!」
......私の一番上の息子がまた馬鹿な事をしている。どこで育て方を間違えたのやら。
しかしそうなると、また有休を取らないとな。
「少し失礼するよ」
プルルルルル、ガチャ。
「あ、もしもし心城です。すみませんが今日も休みを......はい、はい、え? はい、今日は子供の授業参観で.......は? そんなことより早く来いだと? そんなこととはなんだ!」
「ちょっ!? お父さん!? 机割らないで!」
「私にとって仕事よりも家族が大事だ! .......あ? ああ辞めてやる! 辞めてやるよ! ではお世話になりましたー!」
ピッ
「......」
「あなた......」
「すまん、クビになった」
~語り手変更中~
どうも皆さん『心城 千菜』です。
朝からお父さんが仕事をクビになる事件が起きましたが、実は良くあることです。
十夜ねぇもそうだが、うちの家族はすぐに仕事辞めちゃうな。
それを思うと、一にぃも同じ末路も辿ってしまいそうだな。
「おはよう千菜ちゃん」
「あ、おはよう『式子』ちゃん......気のせいかな、学校ではよく会う筈なのに、三話振りに式子ちゃんの顔を見た気がする」
「三話? 何のこと?」
おぉっと、さすがにメタ発言が過ぎたか。
「それより、今日の授業参観、千菜ちゃんのところは去年と同じようにお母さんが来るの?」
「いや、今年はお父さんが来ることになった」
「え? おじ様が? ......教室入れるかな? その、鎧の肩当てから伸びるトゲとか、兜のトゲとかが入り口につっかえるんじゃ......」
「大丈夫大丈夫、家でる前にあのトゲへし折ってたから」
「えぇ......」
まぁ、私のところにはお父さん、百華にぃのところにはお母さんが、しかしお父さんが来る授業参観か、小学校以来だな。
あの時はクラスの男子からはロボットみたいでカッコイイと、授業参観が終わった直後に夢見る男子達に囲まれて困ってたっけな。
私のお父さんだけ鎧を着てるから物凄く恥ずかしい思いをしたけど、もう大丈夫。うん大丈夫。
お母さんは私の頑張りを見てくれているけど、お父さんはいつも仕事が忙しくて私を中々見てくれてなかったんだよね。
だから、その、お父さんが今日来てくれることは、嬉しい......かな?
「にやにや」
目の前にセクハラ淫獣発見。抹殺する。
「......ふん!」
「無言チョップッ!?」
この馬鹿ウサギは、また人の心読みやがって、プライバシーの侵害だ。
「学校にお帰り、ここは貴方の居場所じゃないわ」
「え? ま、まだ千菜さんの即死ハメコンボが続くんですか? さすがにそれh、ナウ○カァァァァァァァァァァァ!!」
~語り手変更中~
「......すみませんが、その鎧は脱いでください」
「え? 鎧? 何のことやら、私は見ての通りスーツしか着てませんが? なにか?」
「なにかじゃありませんよ。さすがにそんな格好の人を校舎には入れられません」
なんてこった。ちゃんと鎧の上からスーツを着て来たのに、千菜の学校の教員に捕まってしまった。
何がおかしいと言うのだ?
「あらあらうふふ、この人は私の夫で、私達は二年生の心城 千菜と三年生の百華のご両親よ」
「あ、あぁ、心城のご両親でしたか、それならそう言ってくれれば良かったのに、てっきり例の不審者かと」
はぁ、古都音さんのお陰で校舎に入れたものの、例の不審者ってなんだ?
「もうあなたったら、もう大人なんだからしっかりしなさい」
「す、すまない古都音さん。この鎧姿に慣れてしまったもので......」
「......ふぅ、それじゃ、私は百華の方に行くから、千菜のとこは任せたわよ?」
「安心しろ、何があっても大人しくしてるから」
「そ、じゃぁまた後でね」
さて、千菜の教室に向かうか......お、あそこか、他の親御さん方が見える。少し緊張するな。
よし、ここは良いお父さんアピールを、
「あ、どうもこんにちは、心城です。今日はお日柄もよ━━」
バゴォン!!
「あ」
しまった! 教室の入り口を壊してしまった!?
この入口狭いよぉ! せっかく鎧の邪魔な部分をへし折ってきたのに!
「......あーその、そちらのお父さん? 教室は壊さないでくださいね?」
「す、すみません! 今直します!」
くっ! 私としたことが! すぐに魔力で修復を!
「......」
「あ、千━━」
「......(ふぃ)」
ガーン!! 目が合ったのに反らされた!?
うぅ、他の親御さんからは白い目で見られるし、は、恥ずかしい......
~語り手変更中~
もー、いきなり何してんのよお父さんはー。
「あ、あーコホン、では授業を始めます。日直さん、よろしく」
「起立、礼」
「「お願いします」」
うぅ、気まずい、お父さんのバカー。
.......でも、お父さんもわざとじゃないし、ここは大目に.......。
「(ヒソヒソ)ねぇ、あの鎧の人なんだろ?」
「(ヒソヒソ)すっげー目立つなー。コスプレ感満載だわ(笑)」
早速クラスに不穏な空気がががががが。
「さーて、今日は昨日の続きからだ。まずはここをだな......」
~20分後~
「じゃあこの問題解ける人は居るか?」
来た! よし、ここは私が!
「はい!」
「よし、では山崎に解いて貰おうか」
あ、他の人に当てられた。ま、まぁ、まだチャンスはあるはず。
「と、思ったが心城に解いて貰おうかな?」
「え?」
何故に切り返したし.......ハッ!
「ぬぅぅぅん」
背後でお父さんが変な唸り声を上げてる。まさか、お父さんが何かしたんじゃ.......。
「はぁぁぁぁ」
めっちゃしてる!? なんか手のひらを前に突き出して変なポーズ取ってる!?
「心城どうかしたか? 答えらりゃ、、、、、、なくてもいいから前に出なさい」
おい、一瞬先生の言動が変だったぞ!?
「(ひそひそ)あのお父さん何してるんだろ?」
「(ひそひそ)なんかめっちゃ念じてるように見えるけど」
「こぉぉぉぉぉぉ」
やめい!!
あーもう、娘に見せ場を与えようと余計な事をして、まったく。
確かお父さんは、自分の中にある魔王の力が無くなるまであの鎧を脱げないと言ってたっけ?
それなのにめっちゃ使ってる。魔王のよくわからない力使ってるよ、おい。
~授業参観終了~
噂になってしまった。
「あの鎧の人なんだったんだろう?」と、この町ではお父さんの鎧姿は普通になってしまってるけど、さすがにこの町以外から来た人にとっては、ただのコスプレに見えただろうなぁ。はぁ。
「HAHAHA! 千菜! 見事な解答だったぞ! お父さん感動しそうになった!」
「.....お父さん」
うせやろ? 放課後、家に帰ろうとしたら校門にお父さんが待ってた。先にお母さんと帰ったんじゃなかったの?
「お久し振りです伯父様」
「おぉ、式子君かね! いつも千菜と仲良くしてくれてありがとう!」
何このお父さん。やけにテンション高いな。
「お父さんテンション高いね?」
「そりゃそうさ! 久し振りに娘の授業参観に出られたんだ! それだけでも仕事を辞めたかいが........げふんげふん」
「え? 伯父様、仕事を......」
「んんんんんんんおおおおおおおおおお!! 何のことかな?」
誤魔化すだけで変な唸り声上げないでよ。
「で? なんで放課後まで待ってたの?」
「あ、そうそう、千菜に式子君。最近ここいらで不審者が出ると今朝教員の人から聞いたんだが」
「それがなに?」
「あ、いや、娘が心配で、それで、ずっと待ってました。はい」
........はぁ、親バカだなぁ。
どうせ私がピンチになったとしても、あの馬鹿兄貴が助けに来るだろうに、まったく。
「じゃ、帰ろっか、お父さん」
「う、うむ」
「......」
「せ、千菜? お父さんが待ってたこと、その、怒ってるか?」
「怒ってない」
「で、でも.......」
「怒ってない。でもお父さん」
「はい」
「心配してくれてありがとう」
「!」
ここまで過保護にされると、正直鬱陶しい気もしなくないけど、でも、ここまで娘の為に仕事クビになって、そして放課後まで待っててくれたんだ。
それだけでも感謝を........ハッ!?
「(o^-^o)」
式子ちゃんが微笑ましくこちらを見てる、しかも冷静に考えたら、ここ校門の前だ、うわ、恥ずかしい。
「(*´∀`)」
式子ちゃんの頭に淫獣がいつの間にか乗っててニヤニヤしてる。
「ちょ、うぇぇぇぇ!? 千菜さん! まってまって!」
「待たない」
「照れ隠しで暴力振るわないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
こんなバカな家族ばかりだけど、私は嬉しいです。なんて、口が裂けても言えない、恥ずかしいし。
「━━だってさぁお父さん! 良かっt ふんす!?」
「だから人の心を勝手に読み上げるなー!!」
~おまけ1~
心城 不死義です。
今日は娘の授業参観を見に行けて良かったです。
ただ、やっぱり例の不審者が気になるので、独自に調べていたらこんな情報が出てきた。
『最近、昼の時間帯に市役所の職員らしき人物が女子生徒に猥褻な行為をする事件が多発している。犯人は未だ捕まっておらず、なんか体から変な液体を出したり、自身も液体になって警察の包囲網を掻い潜ったりして、犯人が捕まっていない事に近隣住民が不安を覚え━━━』
........。
『被害女子生徒からの証言によって描かれた人相書きがこちらです。この顔にピンッと来たら110番にご連絡を━━━━』
プルルルル、ガチャッ
「あーもしもし水山か? この間は私の娘のお見合いに来てくれてありがとう。まだ入院中かね? え? 何、そう遠慮するな、私が直々に怨見舞いに行ってやるよ。あぁ、今すぐな、それじゃ」
ガチャ、ツーツー。
「......」
私は深夜に家を出て、水山が入院している病院へと向かった。
その後、元魔王四天王の一人『水山 徹』の姿を見た者は、誰もいなかった。
~おまけ2~
「なぁ百華」
『なんだい十夜姉ちゃん?』
「いや、お前ってさ、あたしが淹れたコーヒーをよく飲んでくれるよな?」
『それがどうしたの?』
「あーいや、コーヒー以外だったらどうなるかなーと」
『? .....( ; ゜Д゜)!?』
「あ、おい! 何鉢植えから出てンだよ!」
『なんてものを鉢植えに注ごうとしてんだよ!』
「安心しろ、これはノンアルだ!」
『僕未成年んんんんん!!』
あぁ、百華の奴が逃げてしまった。
単純に親父以外の飲み仲間欲しかっただけなのになー。ぐびぐび。
「あらあら、十夜ったら、弟に何勧めてるの?」
「!? お袋!? いや、これは......」
まずい、また叱られ.......。
「.......はぁ、しょうがない子ね。代わりにお母さんが相手してあげるわ」
「.......え? なんか珍しいな。どういう風の吹き回しだ?」
「そうね。いつまでも叱ってばかりなのもアレだし、たまには相手をしてあげましょう、と思っただけ。あ、私はお酒飲むけど、貴女はノンアルよ?」
「おう! 分かってらぁ!」
~30分後~
「う~ん、十夜やぁ」
「お、お袋、まずいって、あたし達親子だろぉ.....そう言うのは親父とやれよ」
「ん~、いいじゃない別に、貴女は私にとって可愛い可愛い愛娘なんだから♥」
「あ、う」
お袋ぉぉぉぉぉぉぉぉ!! え、何!? お袋って、酒に酔うとこうなっちゃうの!?
絡み酒よりタチがわりぃ! いつも夜中にお袋と親父が隠れてやるような『アレ』をあたしにやるのか!?
「んちゅ~」
「ちょ!? やめぃ!」
お袋、力強ッ!? 鬼のあたしより強いってなんなの!? 腕力だけで押し倒されて両手首を押さえられて逃げれなくなってしまった!?
ぐぁぁぁぁぁぁ! や、やだぁぁぁぁ! あたしのファーストキスをお袋にあげたくないぃぃぃぃ!!
「ちょ、やめ、うぅ、ご、ごめんなさい、ごめんなさい、もう弟や妹にノンアルは勧めないから、ゆ、許してぇ.........」
うぅ、泣いた、久し振りに泣いてしまった。こんな所、他の家族には見せたくないよぉ.......。
「ん、よろしい」
「え?」
な、なんだ? お袋が急に正気に戻った?
「ウ・ソ・よ。私酔ってないわよ?」
「へぇ? じゃぁ、なんであんな......」
「ふぅ、こうまでしないと貴女、どうせ止めてくれないでしょ? だから荒療治」
「はぁ!?」
え? 今までの全部......演技!?
「こう言うのは『房中術』って言うの、真似してもいいけど、真似するなら貴女が大人になってからね?」
房中術って、確か女が男をその......ごにょごにょ、するやつだよな。さすが忍者、やることが汚い。
「反省した?」
「......はい、しました」
「うん、それじゃ許す。あ、でも」
「?」
「キスをしたかったのは本当よ?」
「んん!?」
えぇ!? やっぱりそっちの気が.......。
「ふふ、じょーだん。ホント、貴女って初ねぇ。いい加減男の一人や二人、作りなさいな」
「お、大きなお世話だ!」
「くすくす、顔を赤くしちゃって、貴女ってば可愛いわね~」
く、くそ~、どこからどこまでが本気だったんだ?
実の母親ながら、ホント掴み所がないから困るぜ。
~おまけ3~
↑の、やり取りをこっそり見てしまった次男の百華君はその後、色々と悶々としながら夜も眠れなかったそうな。
続く。
房中術って、本来は男と女が性交して、陰陽の気を交わらせて不老長生を図ろうとした一種の養生術の一貫らしいですね。
くノ一が男を(ピー)するのは、後生になった後の後付けらしいっすよ。
......なんでこんなことを語ってんだ? 語ってる僕がなんか怪しいぞ?
次回は、いよいよ心城家最後の強敵『お母さん』の話。
と、思ったかアホがッ!!
今までが家族全員の紹介みたいなものだったが、次回から好きなように書いてやるぜー。ふぅーはははは!
お母さんの話はいつかします。
では、さらば!