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心城さんちの変な家族  作者: 心之助
4/9

四日目「私の天使な妹」

 待たせたな、今日は心城家の四女、天使の『万璃』ちゃんの話だ!

 おはようございます『心城 千菜』です。


 今日は学校お休みです。なのでマイエンジェルな妹『心城 万璃(まり)』にスポットを当てようと思います。


 万璃、私は普通に万璃と呼んでる。私より四つ歳が離れた小学生。


 性格は少し内気ではあるが、誰に対しても優しくでき、小学生ながら礼儀正しい一面がある。


 見た目は日本人離れしたアルビノの少女。まるで外国の子ではないかと思うくらいに顔立ちが整っている。こりゃ将来確実に美人になるな。


 そして『天使』だ。うん、私の可愛い妹は天使なのです。普段は羽を収納して隠しているが、広げると全長2mにまで達する大きな羽を持っています。しかも、なんか時々頭に輪っかのようなものも現れる。


 もし、こんな子が空から舞い降りたら、誰もが天からのお迎えだと思ってしまうだろうが、本人は天国に行ったことないので、いくら期待しても天国には行けません。


 ......それにしても、私達のお父さんは魔王なのに、なんでこんな神々しい娘が生まれるのやら、不思議だ。


「お、おはよう、せ、千お姉ちゃん」


「うん、おはよう万璃」


「は、ぅぅ」


 ただ挨拶しただけで恥ずかしがってる、なんで? だがいい!


「ねぇ万璃、今日は休みだし、お姉ちゃんと何処かにお出掛けしない?」


「は、はい! せ、千お姉ちゃんとお出掛けし、たいです!」


 いやっほぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 休日に妹とデートだ!


 ......今の私、あの変態兄貴に似てるな。


「呼んだ?」


「呼んでな......て、何処から顔出してんだぁぁ!!」


 ウサギで淫獣な兄貴が、寝間着のズボンの中から顔を出してきた。


「ちょ! 出てけ......ひゃわ!?」


「ふぅはははは! 朝の活力補充じゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 淫獣が私のズボンの中で、私の股の間で高速回転をする。ふ、ちょ、やめ、て、毛、毛が、うわひゃぁ!!


「うひょぉぉ! ご馳走さ......ま?」


「まぁたく一兎ったら、妹が嫌がることは、もう止めなさい」


「か、母さん......はん!?」


 淫獣が私のズボンから逃げ出そうとした矢先、お母さんに捕まってしまい、そこから淫獣が瞬間移動で逃げようとしたが、コンマ数秒でお母さんの最速の当て身を数百発喰らってKO。


 超能力を使ってもお母さんの拳から逃れられないのか......この人に勝てる人なんて、この世に居るのか?


 ぬいぐるみのように動かなくなった兄を放置して家族全員で朝食。

 暫くしてから私はお出掛け用の私服に着替えて部屋を出ると、何やら百華にぃが鉢植えから出て廊下を行ったり来たりと、何やらそわそわしていた。


「どうしたの百華にぃ?」


 と、百華にぃは近くにあったメモ用紙とペンを持って落ち着かない理由を語る。


『じ、実は今日、栞さんと初デートなんだ。き、緊張する(´Д`|||)』


 栞さん。神埼さんの事か、昨日告白して恋人同士になったばかりで、もうデートですか、お熱いですな~。にやにや。


『!? な、何ニヤついてんだよ! (# ゜Д゜)』


「いやー、ごめんごめん(・∀・)ニヤニヤ」


 ピンポーン。


 と、どうやら百華にぃのマイハニーが来たようだ。


「やぁ、おはよう千菜ちゃんと百華......君」


 まさかの第二の天使が舞い降りた。普段は制服姿しか見ていない神埼さんの私服姿を見るのは新鮮だ。特に神埼さんらしい清楚な服装がなんとも言えん、ふつくしい......ハッ!?


「あ、でもデートとは言え、鉢植えに入った百華にぃを連れて回るの大変じゃないですか?」


『そんなことだろうと考えて編みだした方法がこれだ! (`・ω・´)』


「わわ!?」


 百華にぃが鉢植えから出て根っこを全て捻って神埼さんの髪にくっつくと、


「うわ、凄い! まるで髪飾りみたい!」


 なんと、百華にぃは神崎さん髪飾りに変形したのだ! ......だったら普段からそうしてよ、毎日鉢植えを持ち歩くの疲れるんだから。


「それじゃ、行ってくるね」


『ではまた(^_^ゞ』


「うん、行ってらっしゃい二人とも」


 ......恋、ねぇ。まだまだ私には程遠い単語だな。


「あ、すまない千菜。少し出掛けてくる」


 今度はお父さんが玄関に現れた。その鎧を来たまま外出するのか......暑くないのかな?


 そもそも、日々残業で頑張ってるんだし、今日は数少ない休みなんだから家でゴロゴロしてても許されると思うのに、こんな朝早くに何処に行くんだ?


「お父さんは何処に出掛けるの?」


「え? あ、その、なんだ、『お見合い』の相手を探してくる」


「え? 誰の?」


『わー!? お父さん! それは内緒ー!』


 今度は慌てた様子の零花ねぇが現れた、ふぅ、やっぱり零花ねぇが来ると涼しいなぁ。


「いやでも......」


『恥ずかしいものは恥ずかしいの!』


 はっはぁん。なるほどなるほど、やっと零花ねぇも決心してくれたか、生前の零花ねぇは恋がしたいしたいとか言っていたクセに誰とも付き合わなかったし、実際に学生時代に告白されたりもしたけど、本人は天然すぎるせいで、それを告白と認知できなかったとか。


 何とも残念な学生生活を送ったなぁ、この天然美人め。


『せ、千ちゃん! 今のは聞かなかった事にして!』


「......」


『なんで黙るの!?』


 幽霊の零花ねぇのお見合い相手なんて見付かるかは不安だが、お父さん、立派なお婿さんを見付けてきてね!


 と、言う思いを乗せながらお父さんに向けて親指を立てると、お父さんも親指を立て、零花ねぇのお婿さん探しの旅に出た。


 ......出来れば、私は親の手を煩わせないように、自分で将来の相手を探すことにしよう、そう誓うのであった。


「お、お待たせしました!」


 お、今度は万璃のご登場か。普段から可愛いが、お出掛け用の私服はなんとも言えん可愛らしさがある。


『あら? 二人も出掛けるの? 二人だけで大丈夫? お姉ちゃんもついて行こうか?』


「いやいや大丈夫だよ。それに零花ねぇは日光が苦手でしょ?」


『う、た、確かに......じゃあ気をつけてね』


「うん、行ってきまーす」


「行って、き、ます」


 てなわけで、久し振りに万璃と二人っきりのお出かけ、何処に行こうかな~。


「......」


「ん?」


 なんか、万璃からの視線を感じる......あ、あぁ。


「手、繋ごっか?」


「! う、うん」


 もう長い間一緒に居ると何を要求してるのか大体分かってくるなぁ。


 それにしても、やっぱ万璃の手、小さいな、そして柔らかい......手汗かいてないよね? これで「せ、千お姉ちゃんの手、なんかべたべたしてるね」なんて言われたらショックで今日のお出掛けは一時中断してしまいそうだ。


 まだ家を出て5分しか経っていないのに、


「せ、千お姉ちゃん」


 !? やっぱり手汗!?


「千お姉ちゃんの手、少し大きいけど、指は細くて、綺麗で、暖かいね」


 あ、ガチエンジェルだ。抱き締めたい。


 いやいや、さすがにそれは不味いか......ほっ。


 今日は午前中に服を見て、そこから動物園に行こう。


 てなわけで洋服店に到着。


「いらっしゃいませー」


「ひゃ!?」


 店員さんに声を掛けられただけで万璃は私の後ろに隠れてしまった。どこの小動物やねん。


 そんな万璃の反応を見て女性店員さんがショックを受けてる。こんな小さい子にこんな反応されたら......ねぇ。


「あ、気にしないでください。この子、人見知りと内気属性が付与されてますので」


「......はっ!? そ、そうでしたか。と、ところで、すでに洋服はお決まりですか?」


「いえ、見てから決めようかと」


「でした、これなんていかがでしょう?」


 と、店員さんが薦めてきた服は━━━


~語り手着替え中~


「どうでしょうか?」


「こ、これは......」


 もうすぐ夏が近いからなのか、半袖のボロシャツにミニスカか、悪くない。てか、普通だな、おい。


「せ、千お姉ちゃん......お、お待たせ」


「ん? 万璃━━━━」


 あぁああああああ!? あぁ、目が、目がぁぁぁ、あぁ、ああ!


 なんたる神の采配! 店員さん、あなた様は神か!? 今、万璃がどんな格好をしているかだって? それはもう、言葉に言い表せないぐらいの可愛さだよ! まぁ、簡単に言えば自由の女神ヴィーナスの周りにいる天使のような可愛さであって、


「せ、千お姉ちゃん、に、似合ってる?」


「当たり前過ぎるよ!」


「ひゃあ!?」


「あ、ご、ごめん、興奮しちゃって、万璃が余りにも可愛ものでさ」


「っ!?」


 あ、また顔を赤くしてる。スマホのカメラを起動せねば。


 と、思った矢先に店員さんが私にあるお願いをしてきた。


「あ、あのぉ、営業中ではありますが、妹さんの写メを撮っても宜しいですか?」


「すみませんが、うちの妹の撮影は有料です。一枚一万円頂きましょうか?」


「せ、千お姉ちゃん!?」


 冗談だよ。だが、私なら余裕で払える自信がある!


~語り手変更中~


 どーも、『心城 一兎』です。心配性な零花姉ちゃんに頼まれて妹二人を尾行している。


 零花姉ちゃんはほぼ地縛霊みたいなもんだし、そもそも生前から日差しが苦手な人だったからなぁ。だから俺に頼んだんだろう。


「......なんであたしまで尾行してんだ?」


「いや、だってお前暇そうだったじゃん」


 俺は妹の十夜と共に千菜と万璃に危険が及ばないように見張っている。まぁ、俺達二人がいればまず大丈夫だろう。


「一応言っておくが兄貴。今日は千菜に手を出すなよ?」


「あったり前じゃ~ん。可愛い妹達の大切な時間を邪魔するわけないじゃ~ん」


 そう、今回は千菜に手は出さないさ。本当だよ?


「心城 か━━」


「お前はお呼びじゃねぇ!」


 突如現れた輝美を真っ裸にして、俺達は千菜達の後を追う。


「なぁ、兄貴。あんましあの人を剥かない方が良くないか?」


「あ? なんでさ?」


「......気付いてないならいいや」


 何を勿体ぶってんだ? 心を読めばすぐ分かることだが、俺はこの力はあまり好かんから、今は止めておこう。


「ん!?」


「ど、どうしたの千お姉ちゃん?」


「今、バカ兄貴の気配を感じた気が......」


 えぇ!? 千菜、お前......いつの間にそんな事ができるようになったの?


 お兄ちゃん、なんか妹の成長を感じて......嬉しいのやら悲しいのやら。


「おい兄貴、千菜達があんなに遠くまで行っちまったぞ?」


「はぁ!? お前なんで見張ってないの!?」


「え? だって兄貴、なんか号泣してたからさ、邪魔しちゃ悪いかと......」


「鬼のくせになんだその気遣い!? でもせめて見張りぐらいしろよ!」


「はぁ? 兄貴の超能力なら余裕で追い付けるだろ?」


「あのねぇ! 俺の超能力って、そんなに万能じゃないんだよ!?」


「万能じゃねぇか! 昔、この町に巨大隕石を落としたりしたじゃねぇか!」


「あれは暴走したお前を止める為に仕方なくだな!」


「だー! ちょっと目を離したぐらいで、なんであたしが怒られてんだよ!? このバカ兄貴!」


「あー!? 実の兄をバカ呼ばわりしたなー!」


 ぬぅあんで、いつもいつも、十夜と居るとこうなっちゃうんだよぉ! 千菜ー! 万璃ー! お兄ちゃんとお姉ちゃんを置いてかないでー!


~語り手変更中~


「Hello! Excuse me!」


 うわ、典型的な外国人旅行者が現れた、道に困ってるのか?


 と、万璃が私の袖を軽く引いてきた。て、事は、やはり『アレ』か。


「ね、ねぇ千お姉ちゃん。あ、あの人、やっぱり『英語』で話してる?」


「うん、話してるよ」


 これが万璃の能力、なんとほぼ全ての言語を理解する事が出来るのだよこの子は。

 羨ましい限りの能力、しかし欠点がある。


 それは、相手の言語を理解出来ても『会話』ができないのだ。だって、全ての言語が彼女にとって全て日本語に聞こえてしまうせいで、英語のリスニングを聴いても英語の勉強ができない、英語の発音もできない。


 なんとも不便な能力だ。


 だが安心しろ! お姉ちゃんがこの外人さんを救ってあげよう!


「あー、There is this station if you go straight this way and turn left......o,ok?」


「Oh! Thak you very mach!」


 ......ふぃー、なんとか上手くいった~。


 どや? お姉ちゃん凄いやろ?


「せ、千お姉ちゃん、あの人、感謝してたけど、英語の発音が聞き取りにくかったって」


 それ、言っちゃう?


 まぁいいや。


 そんなこんなで、私達は次なる目的地である動物園に来ました。


 動物を見に来たと言うより、万璃が動物達とお話しがしたくて来たのだ。


「こんにちは! ハナコちゃん!」


「パオーン」


 ハナコちゃん。三歳のアフリカゾウ。万璃のお友達だ。


 時々、万璃はこうして動物園の友達に会いに行くことがよくある、いやー、動物と話せるって、なんか憧れるなー。


 ......あ、一応言っておくと、万璃にはちゃんと人間の友達が居るからね!


「あら、また来てくれたのね万璃ちゃん」


「あ、沙藤さん」


 沙藤さん。ここの飼育員さんで、万璃とは仲がいいらしい。今年で三十路を迎える独身女性......私の周りには独身女性多いな。うん。


「あら、千菜ちゃんも来てたの? お久し振りね」


「はい、お久し振りです沙藤さん。ところでいつ結婚するんですか?」


「ふ、ふふふふ、相変わらず容赦ないわね」


 ふひひひ、サーセン。


「ところで、これから園内を見てくんでしょ? 折角来てくれたんだし、良かったらソフトクリーム奢ってあげようか?」


「ええ? いいですよ。そんな......」


 優しいけど、優しいけど、この人零花ねぇみたいな残念な部分があるんだよなぁ。


 いわゆるお節介、心配症、これらは無いよりもあった方がいいのやもしれないが、ドが過ぎると、迷惑に感じてしまう。しかもそこには、悪意なんて微塵もない、純粋な良心だから逆に困る。


 ......きっと、零花ねぇの事だ、家を出てから今に至るまで、一にぃと十夜ねぇを使って私達を尾行させてるやもしれない。


「あ、なんでこんな所にウサギさんが、ほら、飼育小屋に戻るよ」


「いや違います! 僕ウサギだけどウサギではありませんから!」


「もう、勝手に逃げ出しちゃダメだよ?」


「この飼育員さん話しきかねぇ!? おい十夜! なんとかし......あれ!? アイツどこ行った!?」


 ......やっぱり一にぃが居た。そして予想通り十夜ねぇも、けど今は十夜ねぇの姿が見えないな。


「ま、あんなアホ兄貴放っておいて次に行こうか......万璃?」


 あれ? いない、どこ行った?


「沙藤さん。万璃見ませんでし━━」


「はぁ、はぁ、やっぱり一兎君の毛並み、いつ見ても綺麗ねぇ」


 あ、この人もか、でも一にぃの女性を魅了しちゃうあれって、何かしらの力が働いてるせいらしいけど、何なんだろうなぁ。


 て、そんな事よりも万璃探さなきゃ!


~語り手変更中~


「ま、待ってよぉ、チュンちゃん」


「チュンチュン」


 あ、あうううう、ハナコちゃんとお話ししてたら、雀のチュンちゃんが私の大切なリボン持ってっちゃったぁ。


 あわわわ、しかもチュンちゃんを追い掛けてたら、いつの間にか千菜お姉ちゃんとはぐれちゃったし......あぅぅぅぅ。


「チュンチュン」


「あ、遊びたいからって、そんな意地悪よくないよぉ、か、返して~」


「チュンチュン~♪ ヂュ!?」


「おいこら、うちの妹に何やってんだ、あぁ? 雀だろうが容赦しねぇぞ? あん?」


 あ、あれは十夜お姉ちゃん! な、なんで居るの?


「十夜お姉ちゃん!」


「おう万璃、お前の大切なリボン取り返したぞ」


「あ、ありがとう......でも、チュンちゃんはただ遊びたかっただけみたいだから......その......」


「......かー、相変わらず甘いなぁ、そんなんだからあんな小鳥にも嘗められるだよぉ」


「ご、ごめんなさい」


「......おら、千菜の所に戻るぞ。今頃お前の事心配してるだろうからな」


「う、うん」


 ......ひ、久しぶりに十夜お姉ちゃんの手を握っちゃった......千菜お姉ちゃんよりも大きいけど、とても温かい手、やっぱり十夜お姉ちゃんは、す、少し乱暴さんだけど、千菜お姉ちゃんと同じぐらい優しいお姉ちゃんです。


「ねぇ君達~、ちょっといいかい?」


「あぁ?」


 あ、あわわわ!? な、なんか恐そうな人が現れたのです!?


「君達可愛いねぇ、姉妹かい?」


「そうだが? ナンパなら他当たりな」


「そう水臭いことを......い、いだだだだ!?」


「気安く触んじゃねぇぞ、こら」


 あ、あぅ、十夜お姉ちゃん、ぼ、暴力は良くないよぉ。きゃ!?


「おほー、この子髪白いなぁ、アルビノって奴ぅ?」


「ちっ! 他にも仲間が居たのかよ。おい、その子を離さないと、コイツの手首をネジ切るぞ」


「え~? いいんすかぁ? そんな事したら、すぐその場面を動画に撮ってネットに拡散しますよぉ?」


「......じゃあ、てめぇら全員のケータイ壊せばいいだけだなぁ」


 う、うぅ、どうしてこんなことに、このままじゃこの人達、十夜お姉ちゃんに殺されちゃう、きっとこの人達、十夜お姉ちゃんが何者か知らないんだ......だ、誰かぁ。


「う、うぅ、うぅ」


「ん? なんだこの子、頭に輪っかが現れたぞ?」


「!? や、やべぇ、万璃! コイツらには危害は加えねぇから止めろ!」


「う、うわぁぁぁぁぁぁん!!」


~語り手変更中~


「い、いや~千菜さん。マジありがとうございます~」


「うん、どうせ零花ねぇの差し金でしょ?」


 飼育員さんに飼育小屋と言う名の牢屋に入れられそうになっていた一にぃを助けて、一緒に迷子となった万璃の捜索にあたっていた。


「はぁ、やっぱ千菜の頭の上は落ち着くのぉ」


「んなのいいからさぁ、ちゃんと探してよ。一にぃの力ならすぐでしょ?」


「だぁから、俺の超能力は万能じゃないんだってのに.....ん?」


「どうしたの?」


「いや、あれ」


 あれは、まじか、動物達が檻の外に居る!? な、なんで......ハッ!? ま、まさか。


「万璃!」


「おいおい、万璃の奴暴走したのか? 十夜の奴、ちゃんと見てたのか?」


「一にぃ! 早く瞬間移動!」


「万璃の居場所が判らないのに出来るかつっーの」


「~~っ!! じゃあ飛んで! 私ごと飛んでいいから! 空中から万璃を探す!」


「え? そんなことしたらお前......」


「妹のピンチの為なら他人に下着見られようが知ったこっちゃないよ!」


「......オーケー、このまま地上から探すのは危険だし、んじゃ飛ぶぞ!」


「うん!」


 こんなときに下着なんてどうでもいい! 私は一にぃの超能力で空を飛んで、上空から万璃を探す。


「な、何があったのよぉ」


「おうおう、万璃の奴、盛大にやってくれたなぁ」


 ほぼ全ての動物が檻から出てる。早くなんとかしないと!


「あ! 居た!」


「よし! 一気に行くぞ! 」


 動物達に囲まれて泣いている万璃を発見!


 しかも、頭に輪っかが現れてる!?


「お、おーい兄貴に千菜!」


「十夜ねぇ! ......て、その人達は?」


 なんか、十夜ねぇにしがみついてる男の人が二人居るんだが......。


「な、なんなんだよぉこれ!」


「俺達が何......をっ!?」


「ほとんどお前達のせいだろうが! 大人しく寝てろ!」


 わぁお、ちゃんと人の頭を潰さない程度に手加減して殴ったなぁ。昔に比べてだいぶ力のコントロールが上手くなったぁ十夜ねぇ、でもそんな事よりも万璃が......。


「万璃!」


「あ、うぅ、ひっく、ご、ごめんなさい千お姉ちゃん......」


「よ、よぉしよし、もう大丈夫、大丈夫だからその輪っかを引っ込めてねぇ」


「......う、ん」


 万璃の輪っか、天使の輪なんだが、あの輪が出ると、万璃の感情がダイレクトに他の生物に影響を与えてしまうという厄介な代物。


 例えば、万璃が喜べば、それに応じて他の人達が喜び、万璃が悲しめば、他の人も悲しみ、怖がれば、他の人も怖がってしまう。


 動物達が檻から出てしまったのも、万璃の恐怖がダイレクトに動物達にも影響を与えてしまい、パニックになってしまっているのやもしれない。


「万璃ちゃん! 千菜ちゃん! 大丈夫!?」


「さ、沙藤さん。も、もうしばらく待ってください。ねぇ万璃」


「う、く、うぇぇぇん」


「な、泣かないの、もう怖くないないから、万璃が怖がると皆も怖い思いをしちゃうからさ......」


 だ、ダメだ、全然泣き止まない。こ、こうなったらぁ。


「ふに!?」


 ほっぺたふにふに攻撃!


「万璃、怖いときは笑いなさい。例えそれが嘘でもいいから笑いなさい。そしたら、自然とその笑顔は本物になるから、ね?」


「......あ、う、うん、ごめんなさい」


 ふぃー、輪っかが消えてくれた。良かった良かった。


~語り手変更中~


 う、うぅ、ま、また皆に迷惑掛けちゃった......。


 今は千お姉ちゃんと十夜お姉ちゃんと一兄ちゃんと一緒にお家に帰ってる最中です。


 あの後は、私が動物さん達一人一人に呼び掛けて説得して、皆さん檻に帰って貰うことができました。


 特に大きな被害がなくて良かったですが......一歩間違えたら大惨事になってしまうところでした。


 ......こんな力、無ければ良かったのに、見た目も、千お姉ちゃんみたいな普通な感じが良かったなぁ。


 いつも迷惑掛けてばかり......どうしていつもこうなっちゃうんだろ?


「......万璃」


「ひゃい!? な、何?」


「また自分を責めてるでしょ? そんなことする必要なんてないのに」


「あ、ぅぅぅ、で、でも......」


「自分を責めてばかりいる悪い子には脇こちょこちょの刑に処してやろう」


「え!? ひゃ、せ、千お姉ちゃん!? く、くすぐったいよぉ!」


 あ、あわわ!! く、くすぐったい! は、恥ずかしい!


「......なんか、千菜って、万璃の前だと兄貴みたいな感じになるな」


「はて、なんの事やら? それよりも万璃」


「うひゃい!?」


「......万璃は幼いから仕方ないよ。元々私達家族は全員普通じゃないし、みんな普通じゃない力を持ってるんだから仕方ないよ」


「で、でも......」


「......はぁ、今回みたいな事があっても大丈夫。お姉ちゃんが付いてるし、十夜ねぇや一にぃ、百華にぃ、零花ねぇ、お母さん、お父さんだって居るんだから、何があっても万璃を責めたりしないし、万璃を危険な目に遭わせたりしないから。だから安心して」


 せ、千お姉ちゃん......でも、ごめんなさい。


 また、この力のせいで皆に迷惑掛ける時が来るかもしれない......その時は......いったいどうしたら。


 ━━よ、万璃。


 ━ 一お兄ちゃん!? これって、テレパシー?


 ━━おう、今回の事は気にすんなってのが無理だよな。俺も万璃と同じ歳だった頃、よく力を制御出来なかった事が多かったよ。俺だけじゃない、零花姉ちゃんや十夜も、自分の力を制御出来なくて悩んでた時期もあったし、百華に至っては、普通じゃない外見に葛藤してたしな。


 ━......。


 ━━よう、辛くて苦しいのは皆一緒だ。同じ苦しみを知ってるから、俺達家族は支え合う事が出来るんだ。


 ━!


 ━━お前はよそよそしい部分があるからな。力がちゃんと制御できるようになるまでの間、存分に俺達家族に甘えてもいいんだぞ?


 ━う、うん! ありがとう一お兄ちゃん!


 そして、私達はお家に着いて、お母さんに今日の事を怒られちゃったけど、最後に頭を撫でてくれたのが、とても良かったです。


 お夕飯を食べて、お風呂に入って、そして夜になったのですが......先程の一お兄ちゃんの言葉を思い出してしまった。


「ね、ねぇ一お兄ちゃん。さっき家族に甘えろって言ったよね?」


「ん? そうだがどうした? 今日も一緒に寝たいのか?」


「そうじゃないよ......か、一お兄ちゃん、一緒に夜のお散歩に出てもいいですか?」


~語り手変更中~


 やぁ、一兎だ。まさか、家族に内緒で万璃が俺と夜の空中散歩をしたいと言い出すとは思わなかった。


 万璃は普段から羽を収納してるが、広げると全長2メートルにも達する大きな羽を有している。


 普段は人前でそんなデカイ羽を広げられないが、やはり窮屈な思いをしてるらしい。


「ふわぁ、今日のお月様は綺麗だねぇ」


「月かぁ、あれが満月だったら今頃人に変身してただろうねぇ」


 本当は、こうして羽を広げて空を羽ばたきたいらしいが、日中は人目が気になってしょうがないらしい。


 かと言って、夜の空を一人で羽ばたくのは怖いから、俺を誘ったんだろう。家族の中でも万璃以外に空飛べるの俺だけだし。


「一お兄ちゃん、これからも家族みんなに迷惑掛けちゃうかもだけど、わたし、この家族の一員になれて良かったです! 一お兄ちゃん大好きです!」


 この子、色々吹っ切れると、かなり大胆になるなぁ。千菜もこれぐらい大胆になってくれたらいいが......二年前の十夜の暴走もそうだったが、やれやれ、手間がかかる妹達を持ってしまった。


 だが安心しろ、これから先、何があっても、お兄ちゃんがお前達全員を幸せにするからな、それが、父さんと母さんの意志だから、誇り高き二人の両親の為にも、家族の為にも、俺は家族全員を幸せにしてやるからな。


~おまけ1~


「き、緊張するね......」


 どうも、百華です。今日は恋人の神埼さんとデートした後に、彼女の家で泊まる事となった。


 正直辛い、彼女の部屋が綺麗で、いい匂いがする......!? よく見たら、彼女の下着らしき物が見える!?


「よ、良かったら......一緒に寝る? 鉢植えから出ても大丈夫?」


『も、問題ない、ただ、僕達まだ未成年だし、そう言うのはまだ早いかと......』


「......ふふ、百華君のそういうところ、とっても可愛いね」


 !? か、可愛い!? 僕が? いやいや、どう考えても君の方が可愛いし綺麗だし、眼鏡外した時の顔なんて......っ!


「ちゅ」


『!!? 』


「スキだらけだぞ。努力家君」


 ......僕、生きてて良かった。・゜゜(ノД`)


~おまけ2~


 どうも、心城 不死義です。


 娘、零花のお見合い相手を探しに休日を潰してまで探したのだが......。


「やっぱり、零花の事を考えると、この三人ぐらいしか見付からなかったな、ん?」


 プルルルル、プルルルル、ガチャッ!


「はい、もしもし心城です。ああ荒井君。済まないね手伝ってもらって、今度一杯奢るよ。はは、しかし本当に良かったのかい? 娘のお見合い相手三人の中に君の息子が含まれているが......そうなのか? なら問題ないか、判ったよ。それじゃおやすみ」


 ふう、私もワインでも飲むか。


「あら、付き合うわよ不死義くん」


「古都音さん......ふ、やはり惚れた女性と飲む酒は格別だな」


「あらあら、お上手な事。私も好きよ、それより聞きました? 万璃が力を暴走させたって」


「......仕方ない、万璃はまだ小学生で子供だ、精神面で言えばまだまだ不安定な時期、しっかり我々が面倒を見ないとな」


「ええそう、なんたって、私は家族全員を幸せにしたいからね。だから、子供達が変な方向に行かないように親としてちゃんとみないとね」


 ......古都音さんが、こんなにも家族を大切にするのは、きっと彼女が私と出会う前までは孤独な人生を歩んでいたからだろう。


 だから、自分と同じ道を歩んでほしくない、それは私も同じだ、ハッキリ言って、子供達全員が魔王になれる素質がある。だから子供達には、絶対に私のような魔王になってほしくないのだ。


 だから私は、古都音さんと子供達を幸せにしようと決意するのであった。


 


 いやぁ、それにしても、古都音さんが膝の上に乗って寄り掛かってくるんだが、二人っきりになると、物凄く甘えてくるんだよなぁ。


 そこんところが可愛いんだが......少し重い? ぬぅ!?


「ねぇ不死義くん、今失礼な事考えなかった?」


「い、いや、そんな事は、むしろ古都音さんは可愛いなぁと思っただけだよ......」


「!? ......そ、そう(カァァァァ)」


 ......リア充爆発しろ。


 あ、どうも千菜です。またもや深夜にお父さんとお母さんがリビングでイチャついてました。


 なんか、百華にぃは神埼さんの家でお泊まりイチャラブ、零花ねぇのお見合い相手が見付かる。


 私の周りの人達がどんどんリア充になっていく......い、いや、お母さんもお父さんも家族全員の幸せを願ってるわけだし、私も将来リア充になれるはず、だから心配......してないんだからね!


~おまけ3~


 こんばんは、飼育員の沙藤です。はぁ、疲れたなぁ、万璃ちゃんが暴走するとは思わなかった。大人しいとは言え、やはり魔王の子供か。


「沙藤よ」


「ちょ!? 都会音(とかね)さん!? 勝手に人の家に入らないでよ!?」


「そんな事はどうでもいい、それよりも『心城 万璃』の方はどうだった? 二年前の『心城 十夜』のような大規模な暴走になる可能性はあるか?」


「ありませんよー。あの子はあなた方『政府』が思っている以上にとってもいい子です。でも、今後も彼女を『監視』しますよ。と言っても、あの子がこれから先、大きな事件を起こすとは考えにくいですがね」


「だが、警戒を怠るな。お前は本当は動物園の飼育員ではないのだからな」


「......判ってますよ。ところで都会音さん。せっかく来たんだし、何か食べま......」


 ......帰ったか、本当に神出鬼没な人だな。私だって、元々好きで国の諜報員やってるわけじゃないんだよ。本当は、私も普通に生きたかったなぁ。


 ......ま、もう死ぬまで国の道具として生きる身である以上、何とも言えないか、ハハ。


 騙してるみたいでゴメンね万璃ちゃん、......おやすみなさい。


 続く。

 

 不死義だ、いや不思議だぁ。なんか最近小説を書く気が起きなくてね。なんかごめんね。気が向いたら書くようにするわ。


 次回は十夜お姉ちゃんの話だ。


 では、さらば!

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