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初めての魔王討伐4

「グランインパクト!」


瑠花さんが大槌のミケでシロガネオオアリの前肢を殴り付けると、今の一撃で脚にヒビが入り、バランスを崩しました。


「装甲の型」


その隙に八宵さんは素手が主な攻撃方法の剛鬼さんに物理ダメージを軽減させる鎧を装備させています。


私も剣山のような毛に覆われている相手に近接戦闘は不利だと考え武器をもともと装備していた手甲から漆黒の弓「烏啼(からすなき)」へ変えました。

武器は万引きで手に入れたので売ってある中ではかなりの高性能ですが、いかんせん私の攻撃力が低いのでどこまで役に立つかわかりません。しかし、気を逸らすことくらいはできるでしょう。

因みに名前もその造形も高価なだけあってお気に入りです。


他の方達もそれぞれ武器を取り出しています。

クラマさんは二丁拳銃「ツインブラスターショット」をたかしさんは手甲「金剛手甲・改」を装備しました。


「響、先走ったるかるかに防御バフアイテムを最優先で。剛鬼を護衛で連れていけ」

「はい!」


シロガネオオアリの鋭い肢と激しく打ち合っている瑠花さんですが、大槌は小回りが利かないうえ相手は二本の肢で攻撃してくるので急がないといつダメージを負うかわかりません。

駆け出した私に剛鬼さんが着いてきますが私の方が遥かに素早さが高い為、あっという間に引き離します。魔法の鞄から硬化薬を取り出すと蓋を開けました。

此方に気が付いたシロガネオオアリの前肢攻撃をサイドステップで躱し、恐らく一番攻撃力があるであろう巨大な顎から繰り出される噛み付きをバックステップで躱しました。

やはりそう易々と瑠花さんに近づけさせてはもらえそうにありませんか。

高い攻撃力と防御力、移動速度はそこまで高くはないですが、攻撃速度はなかなかのもので厄介です。素早さを上げるバフアイテムの加速薬を初めに使用しておくべきでした。


シロガネオオアリの振り上げた前肢が再び振り下ろされ、躱そうと身構えましたが追い付いてきた剛鬼さんが受け止め、そのまま前肢が動かないようにホールドしてくれています。


「剛鬼さんナイスです!」

「……」ニッ


剛鬼さんの作ってくれたこのチャンスを無駄にするわけにはいきません。地面を思い切り蹴って急加速してもう一本の前肢と打ち合っている瑠花さんに近付き、アイテムを使用しました。

戦闘中に飲ませるわけにはいかないので、瑠花さんの横顔めがけて硬化薬をぶっかけます。


「てめぇ、覚えとけよ」

「瑠花さんが先走るからですよ。あと、怪力薬も使いますからね」


攻撃バフアイテムの怪力薬も蓋を開け、背中からぶっかけました。飲ませるよりこっちの方が断然気持ちがいいです。

あ、前肢を抑えていた剛鬼さんが吹き飛ばされ壁に叩きつけられました。私も急いで安全圏へ下がりましょう。


攻撃の準備が整ったのかカルマさんと八宵さんも遠距離から攻撃を始めたようです。ここで大切なのは遠距離から攻撃するのにやたら滅多にしてはいけない事です。

今は前衛がヘイトを集めていますが後衛の攻撃の方が多くなると後衛が狙われてしまいます。

私も最近知ったばかりですが。


安全圏へ下がった私も一番ダメージ判定の大きい顔へ弓を放ちましたが、弾かれるばかりで有効打になりません。

シロガネオオアリは高レベルの物理攻撃耐性を備えている為、レベルの低い私の攻撃は相手からしたら気にも止める必要がないのでしょう。

此方をチラリと見ることもしません。


「オラオラオラオラッ‼」


遅れて敵に突っ込んで行ったたかしさんも身体へ拳による連打を叩き込んでいますが、こちらもあまりダメージはないようです。

レベルでは勝っていますが、守護神という職業は高HP高防御を誇りますが、攻撃力は低いためあまり相性がいいとは言えません。

攻撃する度に剣山のような毛によってダメージを負っているようですがスキル「オートヒール」によってダメージを負ったそばから回復していきます。その為時間をかければ倒すことは可能でしょうが目的は魔王なのでそうは言ってられません。


「……起爆」


いつの間にかシロガネオオアリの背中に貼り付いていた札が爆発しました。今のは八宵さんの札です。

高い物理攻撃耐性を持つ代わりに魔法攻撃耐性は低いため、その爆発に耐えきれず地面に倒れ込みました。あ、たかしさんが下敷きに……。


「隙有り!第3リミッター解除!ブースター点火!グランインパクト‼」


瑠花さんは先程壁を破壊した際に使用したギミックを展開し、倒れているシロガネオオアリにミケを叩き付けました。

超加速とスキル、更に怪力薬を使用したおかげで先程よりも威力が上がり、あまりの破壊力に床が陥没し、シロガネオオアリの強固な背中が砕け散りました。


「キシャシャシャャャ‼」

「まずい、HPが減ったから攻撃方法が変わるぞ。多分今のは仲間を呼んだ」

「ならさっさと親玉を始末しないとな!」


ズンッと地響きを立てて瑠花さんの追撃が入り、その後洞窟内にカサカサッと昆虫の這う音が聞こえ始め、後衛組の背後からシロガネアリが現れました。

レベルは35、数は3匹。大きさはシロガネオオアリより遥かに小さいとはいえ、2mはあります。


「キャー!!気持ち悪い‼」


八宵さんの乙女のような悲鳴が聞こえました。

分かります。10mを越えるくらい大きくなるとあまり気にならなくなりますが身近な大きさになるとより気持ちが悪くなります。


「こっちの雑魚は俺と八宵で相手をする!そっちは任せた」

「了解!ヘマするなよ」

「分かりました。ダメージを負ってしまったら呼んでください」

「私は嫌よ!それならシロガネオオアリを一人で相手する方がマシ!」

「やかましい、行くぞ」


あの二人ならば問題はないでしょうが、むしろ問題なのはこちらです。弱っているとはいえこちらのメンバーでダメージをまともに与えられるのはシロガネオオアリの持つ高い物理攻撃耐性を越える攻撃力を持つ瑠花さんのみ。

私も魔法が使えたならば多少は貢献できたのでしょうが、魔法は専門外です。

いえ、背中の装甲が壊れた今ならばそこを狙えば物理攻撃でもダメージを与えられるかもしれません。

私は魔法の鞄から加速薬と怪力薬を取り出すと一息に飲み干しました。硬化薬は私の防御力では飲んでも飲まなくても同じでしょう。


瑠花さんと剛鬼さんは真正面からシロガネオオアリと打ち合っており、私への警戒はほとんどしてないようです。私は地を蹴りシロガネオオアリの背後へ一瞬で回り込み、ジャンプと同時に弓を構えました。


「トリプルショット」


高速で放たれる三本の矢がほぼ同時に背中に刺さりました。やはり装甲が壊れた部位は防御力が下がるようです。

着地と同時に駆出しシロガネオオアリの身体中を観察すると、装甲が壊れているのが背中と前肢、壊れかけているのが顔と腹。

狙うならばこの四ヵ所。

走りながら弓を構え狙いを付けます。


「スナイプショット」


飛距離を伸ばし、精密射撃を可能にするスキルを使い顔のヒビを正確に射抜くことができました。


「キシャ」


シロガネオオアリが一瞬動きを止めると全身の毛が逆立ちました。


「まずい!避けろ!」


瑠花さんが叫ぶと同時に全身の毛が射出されました。まるでマシンガンの一斉掃射の様に雨霰と降り注いできます。

その狙いの殆どは敵のヘイトを集めている瑠花さんと剛鬼で僅かながらも私にも迫ってきます。

ですが……今の私にとっては遅い遅い。高速で駆け回りながら毛を躱していきます。


「クッ、イッテェな」

「イテッ」


瑠花さんは大槌で剛鬼さんは鎧で弾き返していましたが何本か受けてしまったようです。


「サ、サンダー‼」


後方から叫び声が聞こえましたがこちらはこちらで手一杯です。

毛を躱すのはわけないですが困りましたね。壁や床など至るところに毛が刺さることで撒菱の役割を果たし、私達の動きを制限することが目的のようです。


「しゃら、くせー!」


瑠花さんの一撃で顔の装甲が完全に破壊されました。

しかし、あと一歩というところで距離を取られてしまい毛のせいで瑠花さんが追撃できません。


「円卓の(インペリアルシールド)!これを使え!」

「たかしさん!」

「ナイスだ‼第三リミッター解除!ブースター点火‼」


シロガネオオアリと瑠花さんの間に現れたたかしさんの盾の呪文を足場がわりに跳躍するとミケを振り上げ


「グラン! インパクト!」


渾身の一撃が決まり遂にシロガネオオアリが沈黙しました。

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