表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/214

190 帝国 勇者と姫

 勇者です。

 勇者が俺達の前に現れます。

 城の中は半壊状態で、瓦礫が散乱しています。


「この勇者ハ、操られていまネ」


 マジちゃんが教えてくれます。

 勇者の動きはぎこちなく「ウウウッ」っと、何かに抗っている感じがします。


 ヴァルちゃんがこちらを向き、俺に指示を促します。

 俺は腕を組みながら、無言で俯きます。

 ヴァルちゃんが前に出ます。

 勇者は震えるような手で剣を握りしめて、こちらに走り出します。

 ヴァルちゃんの剣が放たれます。


「――ヴァル!」


 勇者は短く叫ぶと、その場に崩れ落ちます。

 お前の剣で殺されれば本望だ! と、思って倒れたような気がします。

 直ぐにその場で、勇者は動き始めます。

 ヴァルちゃんが俺に向きます。


「アキラ様、操っていた糸を切断しました」


 ヴァルちゃんが俺に説明してくれます。

 てっきり、アトミック斬でも放ったのかと思ったけど、そんな事は無かったです。

 糸だけに、……意図的に切ったのね? わかりません。

 勇者は立ち上がり、ヴァルちゃんに歩み寄ります。


「これが! 愛のなせる技なのですね!」


 勇者はヴァルちゃんに話しかけ、手を優しく握ります。

 とても嬉しそうです。

 なんで、そんなに笑顔なのか分かりません。

 ヴァルちゃんはきょとんとしています。


 そこに、ドルフォース王国第二王女ラッセル・リリフォードが現れます。

 あれ? リリさん久しぶり。前より痩せてるように見えるけどダイエットした?

 リリさん何か固まってるね? なんだろ。

 そう思ってリリさんが見つめる方向を見ると、「じーっと」勇者を見つめています。

 そんなに「じーっと」見てると、勇者妊娠しちゃうよ?

 とりあえず、勇者に事情を聞いて見ます。


「所で、なんで勇者がここにいるの?」


「お前が『アキラ』か」


「あれ? 勇者に俺の名前教えたっけ?」


「……聞きたい事は山ほどあるが、今はそれ所じゃない」


「何かあったの?」


「お姫さんは――」


「――偽勇者様、初めまして」


 説明しようとする勇者の言葉を遮る様に、お姫様みたいな恰好をした人が現れ話しかけます。

 女性は白いドレスを身にまとって、頭に金色のティアラを装着しています。

 お姫様なのかな? 異世界のお姫様って、皆、髪白いのかな? なんだろ。


「初めまして。私はこの国を治めている『ルリザベート・バートリ』と申します」


「はて? そんなお偉い人が、俺達に何の用でしょ?」


「手荒な歓迎……大変申し訳ありません」


「本当にそうだよ! って、いっても俺なんもしてないけどさ?」


「偽勇者様。ここでは何なのでどうか、移動して話しませんか?」


「それより、この新聞見て下さい。指名手配されてるんですけど、どうなってるのです?」


「私達は貴方方を探していました。その為には、賞金を懸けてでも情報を収集する必要がありました。その話も含め、移動してから話しませんか? 美味しい食べ物等も用意しますので……」


「……仕方ないですねぇ……少しだけですよ?」


 俺はルリザベートに付いて行こうとします。

 べ、別に食べ物に釣られた訳じゃ、ないんだからね!

 どんな食べ物か、ちょっと気になっただけなんだからね!


「ヴァルさん! 騙されないでほしい! 俺を操ったのはお姫さんだ!」


 勇者はヴァルちゃんに伝えます。俺達はルリザベートに付いて行きます。

 ルリザベートさんを見ると「こちらでございます」って、ニコニコ微笑んでいます。

 へー、操ってたの姫様だったの? やばいと思ったら逃げればいいかな?

 勇者はヴァルちゃんを守るかのように、一緒に歩いて付いてきます。


 俺達は案内されます。

 案内される先は、先程より広い通路になって、宮殿を思わせるような作りになっています。

 通路を進むと、とても広いきらびやかなリビングに到着します。

 小学校の体育館位です。

 室内は大勢のメイド達が後ろで待機しています。

 リビングの上には豪華な料理が並んでいます。

 肉料理、魚料理、創作料理等、置かれています。


「それでは、こちらの料理を食べながら話しましょうか」


 お姫さんのルリザベートさんに俺達は案内され、席に着き料理を食べます。

 女神達と、ミルちゃんと、フルちゃん、勇者や、リリさんも、一緒に席に着きます。

 用意がいいのね。


 ……早速、肉を食べると、牛肉の風味があり、味付けが薄いけど、まぁまぁ美味いです。

 魚もなんか、食べやすいけど、薄味です。

 俺が料理を食べ始めると、姫さんが話しかけます。


「それでは、本題に入りたいと思います。私達が貴方方を攻撃したのは、訳があります。勇者の報告や情報を集めた結果、貴方方は魔王よりも力を所持していると思いました。この国を守るために、やむ負えず行った判断なのです。その考えは、今では間違っていると感じております。深い謝罪を込め貴方方を歓迎いたします」


「この料理あんまり美味しくないね。なんで?」


「そちらの料理は、この国で一番美味しい料理になっています。変な物は入っておりません。先程の無礼、どうか水に流して頂けませんか」


「別にどうでもいいけどさ? 新聞の内容修正してね?」


「それはもちろんでございます。代わりに言っては何ですが、偽勇者様方々に魔王軍を討伐してほしいのです。ここ最近で魔王軍四天王の内、三体を倒した事が確認されております。これより帝国軍全軍を出撃させ、魔王城を落とし、魔王を倒すだけでこの世界に平和が訪れます。どうかお力を貸して下さい」


「謝ってるのか、要求してくるのかさっぱり分かんないですけど? なんでです?」


「……お力を貸して頂けないのですね?」


「すみません、説明不足なんですけど……なんで魔王を倒さないといけないの?」


「我々人族は、魔王軍の手によって多くの人を失いました。都市や国も多く落とされました。戦争は沢山の人が死にます。人族が平和に暮らしていく為には、魔族を根絶やしにしなければいけません。それをやり遂げぬ限り、この世界に平和は訪れないでしょう」


「和平の道はないの?」


「ありえません。例え魔族が話せる存在であろうとも、人の命を奪っているのは事実ですならば根絶やしにするしかありません。雑草は根から掘り起こさないと、次々と自生しますから、意味がありませんからね」


「そっか……例えば、俺が魔王を既に無力化させたって言ったらどうする?」


「そんなはずはありません。未だに、魔族の勢力は落ちていません。数日前にも魔王軍はドワーフの国『シルマリル国』に攻めてきました。報告を受ける限りですと、倒したはずの四天王が襲来したと聞いております」


「まぁ、そうだよね」


 俺はルリザベートさんに話を聞きました。

 魔族と人族は戦争中なのね。

 そんな事はどうでもいいけど本当に、新聞の内容修正してくれるのか、よく分かりません。

 ゆっくり旅もできないんじゃ楽しくないからね。


「そういえばルリザベートさん、勇者って、どうやって操ってたの?」


「それは私にも分かりません。私も操られていたので分かりません。黒幕は他に要るはずです」


「嘘ですネ」


 俺はルリザベートに聞きますが、マジちゃんの横やりが入ります。


「貴女は嘘を付いていまス。今の貴女は操られてる最中でス」


 マジちゃんはルリザベートに言い放ちます。

 操られてるんじゃ、仕方ないね。

 うそつきは泥棒の始まりだよね。

 

「仕方ありません」


 姫さんはそう言い残し、指から透明な糸の様なものを放ち、メイド達が消えます。

 メイド達が消えた瞬間、ヴァルちゃんも消えて、空中からメイド達がバタバタ落ちてきます。


「アキラ様に害をなす存在を、無力化させました」


 ヴァルちゃんは剣を持ち、ルリザベートの前に立ちます。

 他の女神達は座りながら料理を食べています。


「精鋭のメイド部隊を操っても駄目ですか。勇者を操った時点でそれは分かっていました。それでは……これでどうでしょう?」


 ルリザベートが指から放たれた透明な糸を、ヴァルちゃんに向けます。

 ヴァルちゃんは、剣で糸を切ろうとしますが切れません。

 糸が身体に絡みつきます。

 ヴァルちゃんは俯き、こちらに向きます。


「……始めから勇者を操るのではなく、貴女を操ればよかったのですね。このスキルは『人形劇場マリオネットミュージアム』と言い、私が操れなかった者は、勇者以外おりません」


 ルリザベートが俺達に言い放ちます。

 ヴァルちゃんは俯いたまま動きません。

 あれ? これやばくね? ヴァルちゃんクラスだから安心して、油断しすぎたかも。

 そんな事をデザートを食べながら思いました。


 就職決まりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ