94 魔法都市 お茶とお菓子
お菓子です。
俺達は魔法都市の回復魔法アイテム商店の前にいます。
俺は、魔法剣士ヒルさんと魔法使いヨルさんに、お茶でもどうですかと逆ナンされます。
生まれてこの方、逆ナンとかされたこと無かったからびっくりです。
どっちかって言ったら俺よりも、女神達の方が気になるみたい。
うーん、お茶するだけだからね?
それ以上は無いからね?
俺達は、魔法剣士ヒルさんと魔法使いヨルさんに案内されて、喫茶店の様なお店に着きます。
喫茶店は木造で、テラスにはゆったりとした空間が広がっています。
「このお店のお茶美味しいのよ。それに結構穴場だしね!」
「お茶と一緒に出てくる、甘い食べ物もおいしいのよね~! あ、店員さん! こっち人数分、いつものお茶とお菓子持ってきて貰える?」
ヒルさんとヨルさんは、お茶と食べ物を店員に頼みます。
どうも行きつけのお店らしく、いつものお菓子で注文は通じるみたいです。
異世界で売ってる甘い食べ物とか、あんまり食べた事無かったなぁ。
ちょっと楽しみで待っていると、二人は俺達に話し始めます。
「昨日はありがとうございました。改めて自己紹介します。私の名前は『ヨル』魔法使いです。こちらにいる方は魔法剣士で『ヒル』と言います。貴方様方が居なかったら、私達は、エメラルドゴーレムに倒されていました。それに先程の警備兵の不祥事、改めて謝ります。申し訳ありませんでした」
「俺達の自己紹介まだだったなぁ。……まぁ……言ってもいいかな? 俺はアキラで、こっちにいる女性達は俺の嫁かな? んで、こっちにいるエルフの子がフルちゃん。それはいいとしてさ? なんでそこまで警備兵の不祥事を二人は庇うの?」
「はい、ヒルは魔法都市の警備隊長をしています。私達は、警備隊長の他に魔法学園を卒業後、街の問題事やギルドで討伐できなさそうな問題を解決していました。昨日はエメラルドゴーレムが異常発生する地域に、私の転移魔法で移動して討伐の最中でした」
「すごいです。二人とも16歳位の女性なのに警備隊長とかしてるんだね?」
「いえ、私達などまだまだです。相手の力量も分からずに、戦を続けるような輩ですから……」
「そういえばさ? 二人が闘技場で戦ってたのってなんで?」
「私とヒルの戦いを見たという事でしたら、決勝戦だと思われます。警備兵の中で、向上心高める為の模擬戦ですね。観客を交えることによって、警備兵の強さを民衆に理解してもらう事も含まれます。ただ途中で中止になりましたけどね」
「中止って言うと、あの円盤騒ぎかな?」
「はい、私達は円盤に攻撃や魔法を試しましたが、損傷を与えている様子はありませんでした。いったいあれは何だったのか分かりませんが、現在、円盤の調査解析は学園の方に一任しております」
俺はヨルさんと話します。
話しているうちに店員が何か持ってきました。
「お待たせしました。こちらがヨルムの葉で作られたハーブティーで、こちらのお菓子がモーモーとギムで作られたお菓子です」
店員は、俺達の前にお茶とお菓子を置きました。
飲み物は普通のハーブティーだとして、こっちはミルククッキーみたいな感じがします。
クッキー焼きたてで、香ばしい匂いがします。
俺はクッキーを食べます。さくっという歯ごたえです。口の中でモグモグしてると、とても甘く口一杯にミルクの風味が広がります。少し喉が渇くので、ハーブティーを飲みます。口の中のミルク風味が一掃されて、透き通るようなさっぱり感が口の中に広がります。うん。結構おいしいね!
「この食べ物と飲み物美味しいね! お持ち帰りできませんか!?」
俺は店員に聞いて見ます。
「残念ですがお持ち帰りできません。材料が貴重なのと、当店限定にて焼きたてを食べれるようにしております」
「そうですか残念」
お持ち帰りできないと知って俺はちょっとショックを受けます。
「あ、それなら材料なら少しありますので。私達の拠点で作りま……」
「こんな事もあろうかト! お菓子は沢山用意していまス!」
ヨルさんが提案してきますが、マジちゃんがここぞとばかりにアピールしてきます。
倍率ドン!
机の上に、バタークッキーや、チョコレート等が、沢山置かれます。
マジちゃん? 一体どこから入手してくるのか不思議です。
マジちゃんマジ企業です。
俺は早速バタークッキーを食べてみます。
バターの風味が強くとてもハーブティーに合います! 美味いです!
「フルちゃん。このお菓子は食べれそうだけど?」
「はい、頂きます。……何ですかこのお菓子!? 生まれて初めて食べるような味です! とても美味しいです!!」
フルちゃんは目を見開きながら、クッキーをリスのようにカリカリ食べ続けてます。
ほっぺがパンパンです。
ヒルさんも目を見開きながら、俺達を気にせずにクッキーを食べ続けています。
クールな感じな魔法剣士の隊長さんは、我先に食べてて俺はびっくりします。
女の人って甘い物関わると怖いなぁ。
ヨルさんはチョコレートを食べてます。
食べた後、ヨルさんは涙を流しています。
「ヨ、ヨルさん!? どうしたの!? 涙流すほど辛い事でもあったの!?」
「甘すぎます……このような食べ物を私は……食べた事がありませんでした……感動の余り……目から……涙が出ました……」
俺はヨルさんを心配します。
何か……新たな神の存在を確認した感じで、お祈りを始めています。
ヨルさん、魔法使いだよね?
定員が慌ただしく、こちらに向かってきます。
「お客様困ります! 店内では持ち込み禁止でございます!」
定員さんは、お菓子を食べている俺達に注意してきます。
「まぁ、そう言わずに……このクッキー食べてみて下さい」
俺は店員に机の上にあるクッキーを3枚ほど渡しました。
何か言いたげな定員ですが、あまりにいい匂いのクッキーに我慢できず定員はクッキーを1枚食べました。
慌てて残りのクッキーを持って、店の中に入って行きました。
何をそんなに慌てて定員さんは、店に戻る必要があるのか分かりませんでしたが、すぐに理由が分かりました。
店の中からシェフっていうか、パティシエが出てきます。
「このお菓子は! 一体どの方が作られたのですか!? 私は感動しました!! これ程洗礼されたお菓子は食べた事はありません! どうか! これを作られたお人を知りませんでしょうか!? 是非、私を弟子にしてほしいです!! 弟子になる為ならこの店など閉店させても構いません!! どうかお願いします!!」
パティシエは弟子にしてほしいと尋ねてきます。
パティシエの存在など、露知らず、無視して食べ続ける女性陣?
いえ? 女神達はゆっくりと、味わって食べてる様子です。
何だろう……この差は。
俺はパティシエの方に向きます。
「これは、遠い東の国で作られたお菓子でして……作られた状態のものを、そのまま持って来ただけです。詳しい事は知りません」
「そうですか! 東ですね!? 私はこれより東に旅立ちます! 用意するのだ!」
「店長この店どうするんですか!?」
「この店はお前に任せた! 準備してくる!」
「店長!! 考え直してください!!」
パティシエや店員は騒がしいですが、俺達はお茶を楽しんでいました。
全てのお菓子が無くなります。
ヨルさんとヒルさんは首を横に振ります。
どうやら我に返ったようです。
「我を忘れてしまって申し訳ない……あまりにも美味しかったので、私達が美味しいと思って通っていたこの店と、今食べたお菓子の差はなんだったのか……考えさせられてしまった。このような低ランクのお店に貴方方を誘ってしまい申し訳ない……」
「私はこの黒い食べ物を信仰対象として崇拝したいです。こちらのお菓子はどのように作られたのでしょうか?」
ヒルさんは先ほどから謝ってばかりで、ヨルさんは宗教でも始めそうな勢いです。
異世界の女性の人って、甘い物食べる人格変わっちゃうのかな?
勉強になるなぁ。
なにか言い逃れできなさそうな事があったら甘いお菓子の賄賂でも送ろうかな?
グフフ……お主も悪よのぅ。グヘヘ……お代官様こそ。
グフフ……グへへ……グフフ……グへへ。
俺はそんな事を思いました。
「とりあえず、お茶終わったから俺達他の所に行くね? それじゃ! あぁ、そうそう、明日から学園で臨時講師で働くと思うからさ? 用があったらそっちに来てみて?」
「分かりました……」
「学園ですね……」
ヨルさんとヒルさんは、目を細めて俺達を見ています。
俺達は魔法都市にある喫茶店から出る事にします。
「また……見ちゃった……」
とある少女は涎を垂らしながら見てました。
おかしな話です。