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さだめくんとみことさん  作者: アシタ
プロローグ
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プロローグ~隣堂運命~

 僕は隣堂運命りんどうさだめ。今日から晴れて高校生だ。 

「……はあ」

 でも少し憂鬱なことことがあったりする。

 まだ朝の6時にもなっていない今、僕は制服姿で桜並木に彩られた急な坂道を時期に似合わない汗を流しながら歩いている。

 どうしてかって?

 それはもちろん登校のためだ。

 あ、ここで勘違いしないで貰いたいのは、学校が坂の上にあるから、ということではないことだ。

 まだそれだったら僕青春してるなぁ、とポジティブシンキングになれたものを。

「ぜぇ、ぜえ……」

 ところで話は変わるんだけれど、今まで運動という運動をしてこなかった僕には、この坂道はキツイ。夏になったらどうなるんだろうか。

 で、何の話をしていたんだったけ、そうそう、どうして坂道を歩いているかだったね。

 まあ、端的に言ってしまえば、そこにバスの営業所があるから、ということになる。近所で唯一のバス停がある場所だ。

 そこのバス停から僕は高速バスに乗り、県境の高校に通うことになる。片道1時間以上。さらに加えて市バスの乗り換えや電車に乗ったりだとかでさらに1時間、合計2時間以上だ。定期なしじゃ生きてけないような通学だ。

 もちろん僕なんかよりも大変な通学や、通勤をしている人がいるのは判っているつもりだ。でもそれはそれこれはこれだ。何よりも自分が大変だと思いたい。

 どうして、こんな遠い高校を選んでしまったんだろう。

 ……恥ずかしながら一人暮らしのためである。本当に恥ずかしながら。

 まあでも、


「母さん一人暮らしをしたいんだけど……」

「ダメッ!」

「そこをなんとか、家の手伝いでも何でもするからさ!」

「アンタ家事なんてできないでしょ」

「…………」


 そんな感じでねじ伏せられてしまった。いやあの時の僕何か言い返せよ。その結果が今の僕だよ? 家事なんて後から覚えればいいじゃん。

「……ひっひふー、ひっひふー……」

 いつの間にやら僕の呼吸もラマーズ法になっていた。母さんのことを考えすぎたせいかしらん。

 そんなふうに、誰に聞かせるでもないことをぶつぶつ考えながら、歩くことしばらく、ついに営業所が見えてきた。

 すでにバスは停まっているけれど、出発の6時にはまだ10分ほどある。どうやら時間まで待機しているらしい。

「……乗りまーす」

 バスに乗り込むと、時間というのもあるだろうし、田舎っていうのもあるんだろうけれど、座席はすかすかだった。せいぜい疲れが顔に浮かぶサラリーマンたちが数人、といったところだ。

 これから一緒に苦楽を共にすると思うと、仲間意識浮かぶ。頑張って! サラリーマンさんたち。

 なんて座りもせずにサラリーマンさんたちを見ていたら、うちの一人と目が合った。気の弱い僕は、すぐに目をそらしたけれど。

「…………」

 さてどこに座ろうか。

 いやどこだっていいのだろうけれど、こんなに座席が空いているとついつい迷ってしまう。どうも、服を買うときに数時間かかってしまう隣堂運命です。

 なんとなく一番前と後ろは嫌だ。前は酔ってしまう人が座るイメージがあるから、空けておいておきたいし、だからといって後ろは……リア充臭がする。

 だって学校行事とかでバスに乗るときって、クラスのリーダー格とそのとりまきたちがいつも一番後ろの席を占拠していたし。

 じゃあ、真ん中にするかっていうと、それも嫌だ。なぜかっていうと特に理由はないけれど、なんか目立つ気がする。いや、そうでもないか? でもとにかく嫌だ。

「む、むむ……」

 サラリーマンのおじさんたちに奇異の目で見られながら考えることしばらく、迷いなく足を進めて、12列あるうちの前から7番目、入って左側の席に腰を下ろした。前でも後でもない、真ん中から一つ後ろの場所だ。

 なんとなくここが一番僕にしっくりする。

 満足いく席も決めたし、出発までは5分を切っている。これで心配事は何もない。

「忘れ物とかないよな……」

 急に心配になってきた。

 僕はかぶりつくように荷物を入れたリュックサックを前屈みであさる。

 ガサガサゴソゴソ……。

 正直、入学式の今日って、特に荷物とかないじゃん、と今さらながらに気づく。いや、でも上靴とか忘れていたら大変だもんね。うん。それを確認したかったんだ。


「……あ」


 ふと、僕のではない声が、頭上から聞こえた。

 まるで吹奏楽器のような――いや、僕の少ない語彙力でたとえ話はやめよう――とてもかわいらしい声だった。

 自然、声のしたほうに顔を向ける。

 ――すぐ隣にとてもかわいい少女が立っていた。

 こちらを見て少し頬を染める少女は僕と同い年くらいだろうか。よく見ると今日から僕が通う学校の制服を着ている。僕と同じ町からあの学校に通うのは僕くらいなものだと思っていたけれど。

 ふわふわと少し赤みがかった髪は肩ぐらいのセミロング。顔はおとなしそうで、何度も言うけれどかわいい。身長は少しだけ高めで、不覚にも男子の中では小さいほうの僕と同じくらいだろうか。制服のネクタイは赤――僕の通う高校は学年ごとにネクタイの色が違う。僕も同じ赤色のネクタイなので、どうやら同じ学年のようだった。

 そこまで隣の少女を確認すると、


「……っ」


「!?」

 少女が僕の隣に腰を下ろしたのだった。

 どうしてッ!?




 初めてここに投稿しました。

 主人公のバス通学になった経緯は、今の私をモデルにしています。だって一人暮らしは憧れですから。

 そして、そんなバス通学でのあったらいいなこんなことを一応詰め込んだ作品を書こうと思っています。……この先どうなるのかわからないけれど。

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