第五十四話
「マジで嵐のような奴らだったな」
率直な感想。やはり十二宮家は普通の人々とは一味違った何かを持っていると感じた。
「まぁ元々住んでる環境が違う奴等だからな」
宗司は仕方が無いというように肩をすくめる。宗司も社家という十二宮家の一員だが、幼い頃から一緒に過ごしていたからだろうか、悠獅たちに感じるような違和感は存在しない。
「そうだ、いくつかお前に確認しておきたいことがあるんだがいいか?」
そこで闘矢は思い出したかのように呟く。
「おう何だ?」
「お前が夏陽を助ける理由って何だ?」
闘矢の言葉に、宗司は目を丸くする。しかし直ぐに「ほう」と満足そうに微笑む。
「お前はさっき婚約を解消したい悠獅に接触したと言ったが、何故お前が夏陽の婚約を解消したいかってことに関しては何も言っていない。夏陽に同情したっていう見方もあるが、俺にはお前が十二宮家という組織を自らが先導して改変させようと積極的に動くとは経験上思えない。お前は進んでそういう事をしない。率先して何かをするリーダーではなく、リーダーに頼りにされる参謀的位置がお前の立っている場所のはずだ」
「良く観察しているじゃないか。それで、お前は何が言いたい?」
宗司は楽しそうに笑う。闘矢の次の言葉を期待を込めて待っているかのように。
「この際はっきりしておきたい。夏陽を助けるように、お前に指示を出した人間は誰だ?もし俺の推測が正しければそいつは…………天皇家か?」
「その通りですよ!」
闘矢の問いに答えたのは宗司ではなかった。
それはいつの間にかにそこにいた。闘矢が乗っているベッドに腰掛け、柔らかい笑顔を闘矢に向けていた。一体いつからそこにいたのか、天原澪の姿が闘矢の目の前にあったのだ。
「会……長?」
「おやおや、私が来てはいけませんか?」
驚愕の表情をしている闘矢をよそに、澪はクスクスと笑い始める。
これは何かの冗談か、闘矢は現実に起こっている事がにわかにも信じる事が出来ない。澪は先ほどまでその場所に座ってなどいなかった。そもそもこの部屋に入ってすらいないはずである。
もし何かしらの異能を用いて入ったとしても、雛紗の時のように閻陣の異能が即座にそれに反応するはずであり、単に気配を消していたとしても桐崎の絶対拒絶により気配ぐらいは察知できるはず―――という思考が、闘矢の脳に閃きを与えた。
「異能を無効化する……異能」
天皇気功術―不倶戴天
その力は単純明快、ありとあらゆる異能の元である気を消し去るという代物であり、閻陣家が会得どころかその性質ゆえ認識することさえできない唯一の異能。そして閻陣の意思が暴走を始めたとしても、それが気を源としている異能であるが故に沈静化させる事が可能な唯一の事例。ありとあらゆる異能を消し去るが故に、その異能の頂点に君臨する異能。
それを理解したからこそ、闘矢は今回の件に天皇家が関わっていると推測したのだ。
「大正解です!」
まるでよく出来ましたとでも言うように澪は拍手をする。
「じゃ、じゃあ宗司に夏陽を助けるよう指示を出した天皇家っていうのは」
「はい!私です!」
嬉々として笑顔を作る澪に、闘矢は唖然として何も言えなくなってしまう。澪の突然の登場ですら頭がショートしそうなのに、それが天皇家でありそして今回の騒動の黒幕だったと言うことで、もはや脳が理解を拒否する境地にまで達してしまった。
天皇家、それは十二宮家の上に存在する、正真正銘の日本の最高権力を有する家のことだ。勇魚の言葉通り、表の天皇家は影武者であり、本来の天皇家はその存在が公に公表されていない。だがそれが高校の生徒会長で、それもこんな身近にいるとはとても信じられない。
「いや~十二宮家の人と一緒に入ってきたんですが気付かれないものですね。私悲しくなりましたよ。闘矢さんには気付いて欲しかったです。シクシク」
両手を目元に持っていき泣き真似をする澪。確認したわけではないが、もしかすれば闘伍たちが察した何かとはこの澪のことではないかと感じた。つまり桐崎の異能を極めれば天皇家も出し抜くことが出来ると言うことか?と考えるが、そんな光景想像できない。
闘矢はすがるように宗司を見る。
―俺にもこの人は無理だ
宗司の目はそう語っていた。仕方が無い、待つか。という結論を出さざるを得なかった。




