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第四十六話

「と言っても、実を言うと俺としてはお前に黙ってついて来て欲しくないんだよな」


 想がニヤリと笑った。その時闘矢は戦慄した。想の意図を悟り夏陽のいる方へ振り返りながら、斜め上に向かい手をかざした。


藤代気功術―空衝


 外気功により空気を振動させ、衝撃を生む異能が闘矢と想から発せられ、夏陽の頭上で衝突した。夏陽を狙った想の空衝を、闘矢の空衝で相殺する――はずだった。


「きゃ!!」


 破裂するような音と風衝は相殺される。真下にいた夏陽はその音に反射的に身体を怯ませた。だがその瞬間、すでに想により別の異能が発動していた。

風斬気功術―竜閃


 竜の爪のごとき風の一閃が夏陽に向かって降り注ぐ。


 間に合わない。そう感じた闘矢は走り出し、竜閃から守るように夏陽に覆いかぶさる。


「ぐッ!!」


「闘矢君!?」


 背中を鋭利な刃物で切り裂かれる感覚が襲った。血鎧を使い肉体を強化したにもかかわらず痛覚が異常に刺激される。


「閻陣に伝わる戦闘経験。名誉とかそんなもんには更々興味はねえが、俺も武家に名を連ねる人間として試したいことがあるんだよ」


 起き上がり背後に目を向ける。視線の先、想は不敵に笑っていた。


「膨大な異能を使えるお前。それがドンだけ強いのかってことだ」


 突如、闘矢を異様な重圧が襲った。御門の獅帝鳴とは違う。異能ではないただの純粋な気当たり。想が自然に発する気が異常なほど高い質と量を持っているのだ。


「この気の大きさ、お前四之宮の子供か?」


「残念ながら俺は四之宮の子供じゃない。俺はばあちゃんが四之宮の人間だった。どうやらこの気の大きさは隔世遺伝って奴らしいぜ。本来一代だけに行われる気の大幅な底上げ、それが俺にも発現したって話だ。だから俺は武家本家の風斬の異能も使えるし、分家の藤代の異能も使える。理解できたか?」


 閻陣の異能を思い出した闘矢の頭には、四之宮の異能についても詳しい内容が入っていた。


四之宮気功術―再生の福音


 本来代を重ねることで薄まる異能の力の源である気を増幅させ、異能の質を向上させる異能。その異能の大本は男児によって受け継がれていき、四之宮の女子の胎内で育った子供のみ異能の恩恵を受ける。だがまれにその例外がいる。それが想であり、祖母を四之宮に持つ孫の世代に異能が発現する場合だった。


「あぁ。どうもあんたみたいな輩は過去に何人かいたらしいぞ」


「へぇそいつは光栄……だな!!」


 言葉と共に不可視の風の刃、竜閃が闘矢に襲い掛かる。いや、この時闘矢は気付いていた。想の本当の狙いが闘矢ではなく、その後ろにいる夏陽であることにだ。


斑裏気功術―魔鏡


 周囲に気の結界を張り、竜閃の気を弾き返す。だがそれも簡単ではなかった。想の気の質は闘矢の予想以上であり、必要以上の気を消費してしまう。


 弾き返された竜閃は窓際の壁に激突。見事に壁は破壊され外気が入り込んでくる。


「そうそう、それでいいんだよ。十二宮家以外の異能、俺はそれが見てみたいんだ」


 楽しそうに語る想には明らかな余裕が見える。


「何故夏陽を狙う?」


「そんなの決まってるだろ?お前を俺と戦う気にさせるためだよ。逃がすつもりはねえけど、四之宮に危害を加えることを公言すればお前は嫌でもここを離れるわけにはいかない。どこまでマジな話かは知らないが、お前が四之宮を好きじゃないってのは嘘だろ」


 傍にいる夏陽が息を呑むのが分かった。


 否定は出来なかった。図星であることもそうだが、否定をすれば想は一方的に夏陽を標的にするだろう。それはさせてはいけない。そんな蛮行、許すことは出来ない。


「下がってろ」


 手を払うように向け、離れるよう促す。


「闘矢……君」


 今にも途切れてしまいそうな弱々しい夏陽の声に、心が痛んだ。


 やがて夏陽は距離を取るように後ずさった。


「これでいいか?」


「それじゃあ、始めようか」


 嬉々として想は肩を回す。わくわくという表現がお似合いの表情だ。


 両者の間に沈黙が流れる。これから行われるのはお互いの異能の応酬。空気がやけに冷たく感じられた。


 先に破ったのは闘矢だった。何の予備動作も無しに、気付けば想の眼前へと移動していた。


高雅気功術―雷鵺


 走る移動ではなく、床との接触面に気を巡らせることにより地を滑るように動いた。虚を突かれ反応が遅れている想に向かい回し蹴りを繰り出す。唯の回し蹴りではない。


煉李気功術―虎爪


 受け止めようとした想は突然その動きを中断、回避に変更する。バックステップで十分に見切り完全に回避したはずの想だが、右肩にまるで斬られたような切り傷が入る。


「内気功かと思えば外気功の仕込みかよ!」


 噴出した血を抑えるように右肩を掴む。苦痛の表情を浮かべるがその口元は笑っていた。


「おもしれぇなおい!!久しぶりに張り合いがあるぜ!!」


 想の発する気が増幅した。そこで閻陣の意思は闘矢に伝える。膨大な戦闘経験を元に異能者としての想のタイプを分析する。典型的な感情が気に影響を与えやすいタイプの異能者。そのタイプへの対処法は1つ、調子に乗る前に叩き潰すことのみ。


 長引けば長引くほど不利になる。

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