第四十二話
「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!俺は御門悠獅だ!強き、気高き十二宮家の血族だぞ!!お前ら平民とは違う、負けることなど、あるはずが無い!!」
目を見開き怒りに満ちた表情で闘矢を見据え、悠獅は動き出す。
だがそれは明らかに冷静さを欠いた特攻だった。獅帝鳴でも分かることであり、気の扱い方1つとっても悠獅に闘矢を上回ることは出来ない。
振りかぶった悠獅の手は、棒立ちの闘矢の頬に打ち込まれる。攻撃が当たった、否―闘矢が避けなかったのだ。
「ぐぁっ!!」
悠獅が苦痛の表情を浮かべる。打ち込んだ手は常軌を逸していた。まるでコンクリートでも殴ったかのように骨が折れ、指があらぬ方向を向き、血が滴っていた。拳が砕けたのだ。
湯浅気功術―血鎧。内気功により血液を硬質化させ物理的衝撃に圧倒的な耐性を作る異能。
「1つ、言っておく」
砕けた拳で我を忘れている悠獅の襟を掴む。
「今の十二宮家の立場は、古人たちが築き上げてきたものだ。偉いのだとすればそれは十二宮家という組織であり、お前じゃない!!」
そして腕を力任せに動かし、悠獅の身体を持ち上げる。
五後胤気功術―素戔男尊。
暴力的な腕力をもって、悠獅の身体を扉に向かって投げ飛ばす。悠獅の体は扉をいとも容易く打ち破り、その先にある奥の扉をも突き破る。
闘矢は扉の先を見つめる。この先に、夏陽がいる。
一度勇魚の方に目を向ける。二つの気はまだ対峙しているが、明らかに片方が劣勢を強いられている。長くは持たない、そう感じられた。
頬を伝った汗を拭う。異常な疲労感が闘矢を襲っていた。それは異能を使ったことによる脳の疲労、闘矢の気の残量が少ないことを示していた。
何故突然自分が異能を使い出したか、それは闘矢にも分からない。いや、その表現には御幣があった。元々異能は所持していた。だが何故かその異能は一度失われた。そしてその失われた異能が何故ここに来て再び使えるようになったのか、闘矢にはそれが分からなかったのだ。
突然復活した異能だが、これは闘矢に大きな反動を与えていた。運動をしない人間が突然短距離を何本も走ることと同じで、過去に使えたとはいえ突然の異能の発動に体がついていけないのだ。
―あと少し、あと少しだけもってくれ
身体に願う。この後はどうなっても構わない。だが今、この一瞬だけは―。
闘矢は重い体に鞭を打ち、歩を進めていった。




