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第二十五話

「冗談……が言っても通じるような空気じゃないな」


 闘矢の部屋に入るなり、宗司が闘矢を見て呟く。闘矢は勉強机に突っ伏すように座っており、完全にうな垂れていた。やれやれ、という様に頭をかきながら、宗司はベッドに腰を下ろす。


「電話で事情はある程度……まぁお前が認識している部分なんか極小にも満たないが、把握してる。そりゃ落ち込むはな」


 宗司には既に電話で事情を話している。闘矢が見たこと、聞いたこと。ありのままを全て伝えた。そして夜の8時過ぎ、宗司が闘矢の家を訪れた。


「謎の少女、神永海里。何故か突然出てきた御門悠獅。そしてその事態を理解している四之宮夏陽。そんな情報だけじゃ何にも分からねえよ」


 ため息混じりに言った宗司だが、それでも動こうとしない闘矢を見て、更にため息を付く。


「何か喋ってくれないと、俺が独り言話してるみたいじゃねえか」


「……俺、振られたのかな?」


「何か言えとは言ったが、いきなりヘビーな話題振るなよ」


 闘矢は体を上げて、椅子の背もたれに寄りかかった。ギィというきしむ音が響く。


「何でそう思った?」


「何でって言われても……な。何かそう感じるんだ」


 なんで夏陽が謝ったのか。理解できないことは山ほどある。だがそれは究極のところ、別れると言うところに収束しそうな気がしてならなかった。そう考えると、ごめんなさいという言葉が、別れの言葉に聞こえてくる。


「……1つ、聞いて良いか?」


 再びため息を吐きながら宗司が言う。


「なんだ?」


「お前今何したい?」


「なんだいきなり?」


 宗司の問いに、首を傾げる。


「簡単なことだろ。今一番何がしたい?」


 促すような再三の問い。闘矢は一旦顔を上げる。今何がしたいか。夏陽に会いたいという自分がいるのは自覚している。だがその他に、会ってはいけないと思っている自分もいる。夏陽が謝った時、言葉を何も発さなかった。


 つまりそう言う事だ。これ以上夏陽と関わってはいけない。そんな思いが、心のどこかにあった。


 じゃあ今の自分がしたいことは何か。いや、すべきことは何か?


 そう考えた時、答えはあっさりと浮かんできた。


「知りたい……かな」


「何を?」


「この状況を。一体あの会話がどう言う事を意味していたのか。夏陽がどういう立場なのか?そして俺に何が出来るのか。それを聞いてから、色々考えたい」


 夏陽に会いに行くにも、ここに留まるにしろ、どちらにしろ今決めるのは早すぎる。事態を把握してないままに決定を下すわけには行かない。

だからこそ、今は知るべきだ。


「りょーかい」


 闘矢の言葉を聞き、宗司が僅かに微笑んだ。


 そして携帯を取り出す。なんてことは無い、ただの携帯電話だ。しかし、闘矢が記憶する限り、宗司がいつも使っているものとは違った機種である。宗司は携帯を操作して、どこかに電話をかけ始めた。


「誰にかけてるんだ?」


「ん?お前の聞きたいことに答えてくれる人物」


「はぁ?」


「まぁ俺を信じてみろって。お、どうも夜分遅くすみません風間宗司です―」


 どうやら相手が出たらしい。挨拶は正しいのだが、口調がどうも軽く、礼儀正しさが感じられない。小馬鹿にしている様にしか聞こえなかった。


「あれ? 驚いた? まぁそっちも事情分かってるよね? じゃあ今すぐに闘矢の家に来てよ。場所は分かるでしょ? 早く来てね。あれ? そんな文句言って良いの? どうなっても知らないよ? はいはい、分かってくれたなら俺も嬉しいよ。はいじゃあ待ってますよ」


 電話を終えた宗司は何か清々しい表情を見せていた。会話の内容から考えるに、かなり宗司の一方的なものであった。しかも後半部分には何故か脅迫じみた言葉があったが、怖いので追及しないでおいた。


「まぁ10分もあれば来るだろ。ちょっと待ってくれ」


 にやりと笑った宗司の表情に背筋が凍るかと思った。


 宗司の言う通り10分ちょっと、家の前で車が止まる音がした。車と言う事は大人を呼んだのか。そう思った闘矢に、宗司は迎えに行ってくると言って部屋を出て行った。そこから待つ事2分、宗司が後ろに仏教面の湯浅勇魚を引き連れて戻ってきた。


「え、湯浅?」


「何よ!」


 ギロッと睨んできた湯浅はもう既に怒りの沸点に達している。犯人は満面の笑みを浮かべてベッドに腰掛けながらポテチを食っている宗司に違いない。


「いや、車の音がしたからてっきり大人の誰かだと。親の車か?」


「違うわ。使用人に出させたのよ。全く、私だって来たくて来た訳じゃないのに」


 眉間に皺を寄せる勇魚に対して、闘矢は慌てるようにパソコン用の椅子を差し出した。フン、と鼻を鳴らし、勇魚は腰掛ける。


「それで……えーと、どういう状況?」


 闘矢は宗司に助け舟を求める。


「言っただろ。お前の聞きたいことに答えてくれる人物を呼ぶって。勇魚ちゃんが全部教えてくれるよ」


「―ッ!」


 何か言いたげにした勇魚だが、宗司を口惜しそうに睨んだだけで終わった。


「それで、私に何が聞きたいの?」


 勇魚は怒り気味に語尾を強める。眉間にかなり皺が寄っていた。虫の居所が悪いのは明白だった。


「湯浅は状況を理解しているのか?」


「あんたより理解してることは確かね。あんたが昼間経験したことも含めて殆ど知ってる」


 昼間、それは神永海里の事を指しているということは理解できた。


「じゃあ湯浅は昼間のあれがどういう事だか分かってるのか?」


「それを説明するには、あんたには基礎知識が足らない」


「じゃあその基礎知識を教えてくれ」


 闘矢と勇魚の視線が交差する。そして観念したように勇魚がため息をついた。


「日本で一番偉いのは誰?」


「総理大臣……って答えではなさそうだな」


「半分正解で半分外れ。今総理大臣をやってる御門康成も偉い人間の1人ではあるのよ。この国で偉い人間、それは十二宮家と言われる家の人間よ」


「じゅうに……きゅうけ?」


 闘矢が首をかしげる。初めて聞いた言葉……そのはずなのに何か懐かしさを感じる。


 そこから勇魚は十二宮家について語りだした。

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