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第二十二話

「これまでの立ち回りから、桐崎君は持久戦を選んだってことかしら?」


 マイクのスイッチをオフにした後、澪が宗司に尋ねた。外からだと闘矢は四天王の攻撃を避けるのに精一杯の様に見える。とても反撃に転じられるとは思えない。今四天王は役割が一周し、再び倉田の特攻が始まった。


「いや、そろそろ動くんじゃないですか?」


 ペットボトルのお茶を口に含み、答える。


「反撃に出ると?」


「出るでしょうね」


 再びの澪の問いに、宗司は即答する。


「根拠は闘矢が持久戦を望んでないからです」


「体力的に、という事ですか?」


「そうじゃないです。あいつは10人30分耐久ゲームを耐えましたから。持久戦を望んでいないのは恐らく……四之宮に心配をかけたくないからでしょうね」


 最後の言葉を宗司は小さな声で言った。夏陽本人に聞こえないようにとの配慮だ。その夏陽は泣く一歩手前という表情で闘矢の事を見ていた。心臓に悪い光景だろう。故に、闘矢は持久戦を選ばなかった。それを理解したのか、澪は軽く頷く。


「なるほど、反撃に出る理由が分かりました。でも勝算はどうなのでしょうか?」


「俺が闘矢が勝つに賭けている。それじゃだめですか?」


「でも賭けでは四天王有利と出てますが?」


「そんなもの、俺が情報操作したって分かってるんでしょ?」


「そうやって儲けるつもりですか?」


「親が一番儲かるのが賭けって奴ですよ」


「あなたには困ったものですね」


 澪はしょうがないというようにため息を付く。


「褒めてもらえて嬉しいです。お、どうやら動くみたいですよ」


 宗司の視線の先で遠藤の猛チャージを避け、佐伯の変化球を避け切った闘矢が、4人から後退して距離を取った。


 そこでゆっくりと姿勢を低くし、そこからは本当に一瞬だった。


 追撃してくる遠藤を掻い潜るように避け、背後に抜ける。途端に遠藤が膝を突く。それもつかの間、木村に向かって走り出す。遠藤のダウンに驚いたのか、木村の対応が遅れた。喧嘩慣れをしているとも言えない木村は闇雲に蹴りを繰り出す。闘矢は蹴りをしゃがみ込んで避け、残った木村の片足を払う。たまらず木村はダウン。


 まだ闘矢は止まらない。背後から迫る硬球を避けると、佐伯に突撃。それに対して佐伯は剛速球を投げるが、闘矢はそれを回避、佐伯の眼前に迫る。そして腹部に一撃、軽く触れたようにしか見えなかったが佐伯は遠藤同様膝から崩れ落ちる。


「キエェェェェ!!!!」


 間髪いれずに雄たけびと共に倉田が突っ込んでくる。寸前のところでそれを回避、横に抜け体勢を倉田の方へ変える。闘矢の移動速度ならそこで倉田を落とせるはずである。


 だが踏ん張ろうとした時、異変が起きた。踏ん張った足があろうことか滑ってしまう。佐伯が投げたボールがそのまま放置され、それを誤って踏んでしまったのだ。


 闘矢の体勢が明らかに崩れ、勢いで宙を浮いてしまう。倉田はそれを見逃さなかった。振り下ろした竹刀を横に振り、闘矢を攻める。


 二人の身体が衝突する。当たった、体育館にいた誰もが確信した。


 だが、しばらくの間二人はそのまま動かなかった。


「どう、なったんですか?」


「桐崎の勝ちさ」


 澪の独り言のような問いに答えたのは今まで静かに戦況を見守っていた勇魚だった。舌打ち交じりの言葉だった。


 その言葉を証明するように、倉田がその場で膝を突いた。そして宗司たちが座るステージに顔を向ける。


「会長!我々の負けです!!」


 大半が何が起こったか理解できていない状況で、倉田が敗北を宣言、SF四天王と桐崎闘矢の真剣勝負は幕を閉じた。

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