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第十九話

「依然、度胸試しで夏陽ちゃんに告白をした輩がいまして。まぁそれには相当の代償を払ってもらったのですが、それ以来夏陽ちゃんへの告白に対して厳戒態勢を取っているんです」


 軽く声をかけ悲惨な目にあった大学生の話を聞いた。それ以上の事が起こったに違いない。


「本来なら夏陽ちゃんが選んだ人と言う事で私たちが何かを言う資格は無いのですが念のための警戒です。あなたが本当に夏陽ちゃんの事が好きかどうか確かめる。それが今回の我々SFの総意です」


 澪は闘矢を見ずに、真っ直ぐ前を見つめている。


 その表情は真剣で、先ほどまで闘矢をからかっていた印象はどこにも―


「が、そんなこともう私にはどうでもよくなりましたがね」


 無くはなかった。急に表情を崩し、笑顔でご飯を口に運ぶ。


 呆気にとられた闘矢は口を開けて澪を見る。それを見た澪は口に手を当てて上品に笑った。


「先ほどあなたは私の質問で、あなたが夏陽ちゃんの彼氏かどうか、夏陽ちゃんが好きかどうかに関して素直に答えてくれました。その時点で私の目的は達成していました。あなたが本当に夏陽ちゃんが好きだと言う事を感じましたから」


 確かに澪の言うとおりだった。最初の二つの質問。それは宗司のプランに入っていない、イレギュラーな質問だった。


 だからこそ本音を言ったし羞恥心も感じ、戸惑いもした。


「ですが折角私の対策を講じていたので、後半部分はちょっと付き合ってあげました。棒読み加減が少しイラッとしましたので、夏陽ちゃんにそんな態度は取らないであげてくださいね」


 澪は軽くウインクをした。お茶目な部分を見せている澪を闘矢はどう捉えれば良いのか分からなかった。


 闘矢が夏陽を好きかどうかの確認は初めの質問でしている。だからこそ、澪はそれ以上会話を続けようとはしなかった。澪にとっては続ける必要が無かった。


 そして宗司の思い通りだと思っていた会話、それは闘矢に端を発している。澪が進んで言ったものではない。闘矢は完全に掌で転がされていたのだ。


 呆然としている闘矢をよそに、澪は弁当を食べ終わり、箱を綺麗に片付ける。


「それでは桐崎さん。放課後、今度は全校生徒にそれを証明してくださいね。そのために設けたイベント、誰もが文句を言えないような状況に持っていくためのイベントなんですから」


 口元に人差し指を当てながら、澪はウインクする。


 そしてくるりと反転すると、弁当を持って屋上を去っていった。


 ぽつんと残された闘矢は、昼休み終わりのチャイムを聞き、自分がまだ弁当を全く食べていないという事実に焦った。


 全く、この昼休みは心臓に悪かった。

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