第十五話
週明けの月曜日、この日も天気は清々しいほどに晴れていて、外で弁当を食べるのが気持ちよさそうだった。
だが月曜日は一週間で最も憂鬱である。多くの生徒は友人との再会を喜び、土日の出来事を笑いながら話すものの、また今週が始まったのかと落胆する。
そんな中、闘矢は別の意味で居心地が悪かった。机に突っ伏して顔を上げない。
その正面には紙パックのコーヒー牛乳を飲んでいる宗司の姿がある。その表情はなにやら楽しげに緩んでいた。
「ねえねえ今どんな気持ち?」
「死ね」
ニヤニヤ顔で聞いた宗司に対して、闘矢は顔を上げずに答える。
顔なんか上げられる訳がなかった。上げれば廊下にいる面々が再び騒ぎ出すだけだと分かっていたからだ。闘矢を見に来たという多くの生徒が今教室の廊下側の窓にぞろぞろと集まっているのだ。
動物園のパンダとはこんな気分なのか。気楽に笹を食べるのも大変なんだなと他人度との感想が思い浮かんだ。
人が集まっている理由、それは単純なものだった。
ポケットに入れていた携帯に着信があり、出来る限り顔を上げずに開く。メールが一件、夏陽からだ。差出人の時点で、大方の内容の予想が付いた。
『もしかしてそっちも大変?』
速攻で返信する。
『パンダになった気分だ』
『こっちもそんな感じです』
夏陽の返信の内容に苦笑する。
夏陽を遠巻きに見る人間なんてもとからいる。別に今回の件でそれが表に出てきただけで、実質的に人数に変わりはないだろう。
何でこんなことになったんだろう、と闘矢はため息を付く。
可能性としては確かにあった。そこに頭が回らなかった。
それを気にしている余裕もなかった。
帰りたい、切実に。
そう思わざるを得なかった。