表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある男の最期

作者: 久保 徹

            皆が寝静まり全ての明かりが消えた頃――

           

「く、来るなぁ!」

            一人の男がそう叫びながら雑居ビルの中を走り回っている

           

「あっ!」

            転がっていた鉄パイプに足を取られ男は転んでしまった

 男はそのまま這うようにして壁まで進み、壁を背に未だに叫んでいる

            男は右肩辺りを手で押さえている

 血が出ているようだ

           (くそっ……くそっ!)            男は上着から何か取り出そうとするがパニックになってしまい、なかなか取り出せない

            そんなことをしているうちに、窓から差し込んでいた月明かりが巨大な影に遮られた

            見上げるとそこにはもう一人男が立っていた

 片手には刀を持ち、鋭く冷えきったその目で男を見下ろいていた

           

「誰だ!誰に雇われたんだ!?」

            刀の男は答えない

 代わりに静かに刀に手をかけ、一息に鞘から抜いた

           

「こんな所で死んでたまるか!」

            男は上着から拳銃を取出し、銃口を刀の男に向ける

 だが、引き金を引く前に拳銃は蹴り飛ばされ、遠くに転がった

            そして次の瞬間には男の胸に、深々と刄が突き刺さっていた

            男はそのまま横に倒れた

 壁には血がべっとりと付いている

           

「すまんな、仕事だ」            刀の男はそう呟くと刀に着いた血を降り払い、その場から消えた 

                       男は殺し屋――

 手にした刀一本で、闇の世界を生きる、孤高の始末屋

            今日も依頼は入る

 今日の依頼人はマフィアのボス

           

「今日この時間、この場所に来る男がターゲットだ」            依頼の説明はこれだけ 男はただ淡々と依頼をこなすだけ

            そして指定された時間に、指定されたビルの屋上にやって来た

 珍しく月の出ない夜だった

            屋上には一人の男がいた

 暗くて顔は判らないが背丈は同じくらいだろう            足音に気付いて相手の男が振り返る

 その手には同じく刀が握られていた

 暗闇の中で対峙した二人は、その瞬間に全てを理解した

 互いが雇われの身であり、命を奪い合う関係にあることを

           

「……」

            二人が無言のまま奪い合いは始まった

 静かな闇夜を切り裂くように打ち合う音が何度も響く

 二人の実力は、手の内を知り尽くしたように互角だった

 攻撃を紙一重でかわし急所を狙い斬り付けるも全てかわされる

           (こいつは……)

            男は驚き、渾身の力を込めて振り下ろした

 相手も負けじと下から振り上げる

 今まで以上に激しい打ち合いの結果、刀は弾かれ互いに大きな隙を生んだ

           (ここだ!)

            男はここぞとばかりに刀を突き出した

 刄は相手の体を貫き、先半分を赤く染めている           (ば、馬鹿な……!)

            しかし相手の刄も同じく男の体を貫いていた

                       数日後、二人は発見された

 現場には警察がやって来ている

           

「遺体は?」

「二人……いえ、一人と言った方がいいかもしれません」

「……またか」

            朝日に照らされた、二つの『同じ』遺体

           

「クローンか」

            遺体を前に刑事が呟く                                                       

「これで我らに対する驚異は全て消えた。次は世界を……」

            マフィアのボスが不敵に笑っていた……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] アイデアはよい。もっと結末をふくらまして、文章を読みやすくすればよかった。
2007/01/21 11:56 通りすがり
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ