ミカのモノローグ:ないものねだり
ある日、何かのはずみで、彼女の胸に顔を押し付けたことがあった。
それが、人間と同じ感触なのかは分からない。
ただ、分かったことがあった。これが欲しかったのだと――。
何故かは分からない。
彼女ではなくても、そう感じるのかも分からない。他人の胸に顔を埋めるなど、そうそうないことだから。
ただ、とにかく、心がよじれた。嬉しいのに、苦しい感じ。
これは多分、色っぽい話ではない。
母――を感じたのだろうか。知りもしない母を――。胸の膨らみだけで?
匂い?――いや、彼女に匂いはない――はずだ。
一つ言えることは、彼女は、私のたった一人の家族だということ。だから、なのかも知れない。
何でも話せる関係だと思っていたが、そのことは、何故か話せなかった。
一度、ふざけて、彼女の顔を、私の胸に押し付けてみた。
彼女が、何か言うかと思って。
ああ、何か、じゃない。
私が思ったことと同じことを、言うのではないかと思って。
私になら、匂いもあるはずだから――
でも、彼女は何も言わなかった。
切ないのは、私だけなのだろうか?
まあ、共感が得られたからといって、何かが変わるわけではない。
それでも――
時々、彼女の胸を見てしまう自分がいる。それを彼女に気付かれるのが怖い。
ようやく家族を手に入れたのに、切ない想いが完全に消え去ることはなかった。
まあ、そんなものなのだろう。
十分に満たされてはいる。
あとは――ないものねだりだ。
子供じみた、ないものねだり――




