表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターになった俺、モンスター娘たちと最強迷宮を経営して大金持ちを目指す  作者: 猫の手も借りたい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/3

赤字店主、神様に転生させられる

 クラクションが聞こえたときには、もう遅かった。


 振り向いた瞬間、視界いっぱいにトラックのフロントが迫っていた。ブレーキの悲鳴のような音と、周囲の叫び声が混ざる。


 体が宙に浮く。


 空と地面がひっくり返り、次の瞬間には視界が暗くなった。


 


 ――目を開ける。


 そこは真っ白な空間だった。


 床も壁も天井もない。ただどこまでも白い世界が広がっている。


「……ここ、どこだ」


 声が妙に遠くまで響いた。


 俺はしばらくその場に立ち尽くしたまま、さっきまでの記憶を思い出す。


 店を閉めたあとだった。


 帳簿を見ながら帰っていた。


 俺の店は、小さな飲食店だった。駅から少し外れた場所にある、十席ほどの店。味には自信があったし、最初の頃はそれなりに客も入っていた。


 だが商売は甘くない。


 常連客が減り、近くに新しい店ができ、仕入れ値が上がり、光熱費も上がる。


 帳簿の数字は、毎月少しずつ悪くなっていった。


 何か一つ大きな失敗をしたわけじゃない。だが放っておけば確実に沈んでいく。


 そんな数字を、俺は毎晩見続けていた。


 そして。


 トラック。


 クラクション。


 衝撃。


「……ああ」


 俺は小さく息を吐いた。


「これ、死んだパターンだな」


「はい。とてもきれいに死にました」


 背後から、妙にあっさりした声がした。


 振り向く。


 そこに立っていたのは、白いローブを着た少女だった。十代前半くらいの見た目だが、妙に落ち着いている。


 少女は軽く手を振った。


「はじめまして。死後案内担当の神です。あなたの死亡確認と転生手続きを担当しています」


「担当ってなんだよ。神様ってもっとこう、威厳ある存在じゃないのか」


「そういうタイプもいますが、私は事務系の神ですね。転生処理とか、そういう仕事をしています」


「神様に部署があるのか」


「ありますよ。転生管理課です」


「急に役所みたいになったな」


 神様は空中を指でなぞった。


 すると白い空間に映像が浮かび上がる。


 横断歩道。止まったトラック。人だかり。そして道路に倒れている男。


 ……俺だった。


「うわ、これ完全に俺じゃないか」


「事故直後の映像です。あなたはトラックにはねられて、その場で即死しました」


「言い方が軽いな。もう少し段階踏んで説明してくれないか」


「そうですか?」


「今のはだいぶサラッとした死亡報告だったぞ」


 神様は少し考えてから言った。


「では改めて言います。大変お気の毒ですが、あなたは交通事故で亡くなりました」


「……今の方がまだマシだ」


「ありがとうございます」


「褒めてない」


 俺は額を押さえた。


 どうやら本当に死んだらしい。


 神様は腕を組んで言った。


「さて、本題に入りましょう。あなたには未練があります」


「まあ、そりゃある」


 店のことが頭に浮かぶ。


 閉店後の静かな店。レジ横の電卓。帳簿に並ぶ赤い数字。


 まだ終わっていなかった。


「経営ですね」


 神様が言う。


「あなたは店を立て直したかった」


「……まあな」


「なので転生させます」


「決定が軽いな」


「代わりに能力を与えます」


「能力?」


「迷宮契約です」


 神様は説明を続けた。


「モンスターと契約できる能力です。契約したモンスターはあなたの眷属となり、その魔力は迷宮を強化します」


 俺は少し考えた。


 モンスター。


 迷宮。


 資源。


 冒険者。


 ……なるほど。


「つまりダンジョン経営ってことか」


 神様は嬉しそうに頷いた。


「理解が早いですね」


「商売の匂いがする」


「そういう世界です」


 俺は腕を組んだ。


「一応確認しておくが、その迷宮って儲かるのか」


「最初の質問がそれなんですね」


「重要だろ。商売として成立するかどうかで話が変わる」


「成立します。迷宮では魔鉱石などの資源が生まれます」


「なるほど」


「契約モンスターの魔力は、特に迷宮に強い影響を与えます」


「つまり仲間が増えるほど迷宮が強くなる」


「その通りです」


 神様は続ける。


「契約方法は簡単です。モンスターに名前を与えてください」


「名前?」


「それが契約になります」


「ずいぶんシンプルだな」


「シンプルな方が使いやすいでしょう」


 俺は少し考えてから聞いた。


「一応聞く」


「はい」


「初期資金はあるのか」


「ありません」


「本当にゼロか」


「ゼロです」


「それはかなり厳しいスタートだな」


「頑張ってください」


「軽いな」


 神様は笑った。


「では転生です」


 


 次の瞬間、視界が白く弾けた。


 


 目を開ける。


 冷たい石の感触が背中にあった。


 湿った空気。岩の天井。洞窟の匂い。


「……ここが転生先か」


 体を起こす。


 洞窟はそれほど広くないが、奥は暗く続いている。


 そのとき。


 岩陰で何かが動いた。


 俺は思わず足を止める。


 青い塊が、ゆっくりこちらを見上げていた。


 ゼリーのような体。小さな丸い目。


「……スライムか」


 神様の言葉を思い出す。


 モンスターに名前を与えることで契約。


 つまり。


 俺は小さく笑った。


「さて」


 静かな洞窟の中で、自分の声が小さく響く。


「まずは、最初の仲間を作るところから始めるか」


 こうして。


 俺――カインの迷宮経営が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ