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魔王ちゃんは、魔王を辞職させていただきます。

作者: 藤原 智
掲載日:2026/02/06

「ふん、この程度か」


 中世の城の様な雰囲気がある大広間の奥に設置された大きな玉座に座り、肘をつき声を発するのは、見た目10歳程度の幼くとてもショートカットがよく似合う可愛いらしい女の子。

 人間族に見えるが、頭にある小さな角が人間族では無い事を証明している。

 全身黒のゴスロリの様な服に身を包み、アンバランス差が異様な雰囲気を醸し出している。


「魔王様、流石でございます」


 そう言うのは、ゴブリン大元帥のゴブちゃん。

 髪は、黒でオールバック。

 身長は190くらいでグレーで白色のストライプが入ったスーツを着用している。

 肌の色は緑で耳が長く目と口が大きく口からは八重歯が覗き紳士的な雰囲気を醸し出している。


 暫く玉座の間は静寂が支配していたが、その静寂を魔王が破壊する。

 目の前にある、勇者達四人の死体を見つめながら


「なぁ、そろそろか?」


「はい。そろそろかと」


 そう言った瞬間に勇者達の体が白い光に包まれ一瞬にして消え去った。


「な、なあ、どういう事だ?」


「解りかねます」


「あいつら、死んでは光に包まれて消え去り、またここに戻ってくるよな?」


「その通りでございます」


「ずっと同じ奴等だよな?」


「はい」


 少しの間、沈黙が続いていたが、魔王はある疑問を口に出す。


「生き返ってきているのか?」


「ええ、その様に考えるのが普通かと」


「はあ?おかしいだろ。生き返るて」


「その様に考えないと、説明が付かないですね」


「私が死んでも生き返る事ができるのか?」


「それは、無理かと」


「何で奴等だけ生き返れるんだよ。おかしいだろ」


「勇者特有の神の御加護てやつでしょうな」


「何だそりゃ。卑怯だろ。奴等、私を殺す事しか考えてない頭のおかしい奴等だぞ。そんなのに神の御加護て」


「そういう物だとお考えしていただくしか」


「考えれる訳ないだろ」


「しかし、魔王様のレベルは60。人間族のレベルは大体3から5で、レベルの上昇は無く大丈夫かと思いますが」


「レベル?何だそれは?」


「レベルというものがありまして、まあ、強さの基準みたいなものと御理解下さい」


「そのレベルはどこで見れるんだ?」


「普通に、魔王様の頭の上辺りに表示されてますが?」


「お前にもレベルとやらは表示されているのか?」


「ええ、その筈ですが」


「見えぬぞ?」


「その様な事は」


「マジで見えんが?」


「おかしいですね」


「どういう事?」


「さあ?」


「使えん奴じゃの。そういうのはすぐに調べるべきだろ」


「申し訳ありません。至らぬばかりで」


「まあ良い。で、勇者達のレベルは幾つじゃった?強さの基準なのだろ?」


「今回は、三十から三十二でありました」


「今回?前回と違うのか?」


「はい、前回は十五くらいでしたね」


「お前、言ってる事おかしいだろ。レベルの上昇は無いて言ってただろ」


「言いましたね。しかし人間族のレベルの上昇なぞ聞いた事がございませんが、ただ」


「ただ、何だ?」


「神の御加護なのでは?」


「出たよ。神の御加護。何だよそれは」


「そうと言うしか」


「今、恐ろしい事を思ったんだか、奴等、次もレベルが上がって此処にくるか?」


「必ず」


「はあ?いつか絶対に殺されるじゃねえか」


「ええ、その通りですね」


「おい!私に向かって手を合わすな!」


「つい、申し訳ございません」


「私のレベルはどうやって上げるんだ?」


「その様な方法聞いた事も、昔からの文献にもありませんね」


「どう言う事なんだよ!おかしいだろ!いつか必ず殺される為だけにここにいるのかよ!」


「まだ、大丈夫かと」


「まだだろ?いつかレベルを超えて来るぞ?」


「おそらく」


「何であんな私を殺す為しか考えてない殺人鬼共に神の御加護とやらがあるんだ!それは本当に神なのか?」


「さあ?どうなんでしょうね?人間族の噂を聞いただけなので」


「ちなみにだか、お前のレベルは幾つだ?」


「・・・9です」


「ん?よく聞こえぬ。ハッキリと言え」


「99999です」


「きゅうまん・・・?」


「はい。その通りです」


「はあ?何でお前そんなにあるんだよ!私の1600倍くらいか?お前の方が魔王じゃねえか!!お前が魔王やれよ!私は、お前の部下でいいからよ!このまま黙って殺されるくらいなら!!」


「私は、魔王様をお守りする役目を与えられています。必ず御守りいたしますのでご安心を」


「守らなくていいから、お前が戦えよ」


「私が戦う場合ですが、魔力を開放した瞬間に魔王様も含めて全て消し去る事になりますが?」


「ふざけんな!どっちにしろ殺されるしかないじゃねえか!」


「ですね」


「ですねじゃねえよ!あ!」


「今回は、かなり早く戻ってきましたね」


(おい、手の震えが止まらないんだが)


(ご安心を、私が必ず御守りいたします)


(本当か?信じていいのか?)


(お任せを)


「魔王!何をしている!今日こそ貴様を殺す!」


(お、おい、奴等のレベルは幾つじゃ?)


(何故か解りかねますが999になってますね)


「はあ?!?!どういう事だよおおおおお!!!」


「覚悟はいいか?貴様を屠る!」


(おい、殺すとか屠るとか、頭おかしいだろこいつら、気が狂ってるとしか・・・、もう絶対に殺される)


(魔王様に、私のレベルをお貸しする事が出来ますが、それには少々お時間が掛かります。その間、話題を振り誤魔化してください)


(わ,わかった。頑張る)


「人間よ、待て」


「黙れ魔王!私の魔法でお前を殺す!」


「俺の剣の鯖にしてやる!」


「回復は任せて!皆早く魔王をころして!」


(こいつら全員、目が逝ってやがる。おかしい薬やってんじゃねえのか?)


「一つ聞きたい事がある」


「命乞いか?魔王ともあろうものが」


「貴様達は何故私に戦いをいどむのだ?」


「魔王だからに決まっているだろ?」


「なるほどな。確かに余は魔王であるが、余が貴様達に何をした?」


「何をだと?ふざけているのか?何回俺達は貴様に殺されたか」


「何か思い違いをしていないか?」


「思い違いだと?殺しただろ!俺達を!」


「確かに殺した。だが、余から貴様達を殺しに行った事はないぞ?貴様達が余を殺しに来ているだろ?身を守る為にした事だ」


「ふん!そうだとしても貴様は魔王だ!」


「何故魔王を殺しに来るのだ?」


「簡単な事だ!魔族の王たる貴様を殺す!ただそれだけの事だ!」


「確かに王だが、余から皆に人間を襲えと命じた事は一度たりとてないぞ?魔族のものは、山中や洞窟等に静かに生活をしている筈だが?人間の縄張りに魔族が攻め込んできたか?」


「攻めてはきてないが、人間が捕食されたりの被害がでているぞ!」


「ほう?人間が、魔族の縄張りに勝手に侵入し、肉食の魔族に捕まっただけではないのか?我々魔族といえど、単一ではない、多くの種族がいる。草食、肉食、雑食など様々じゃ。多くの者は、古より決まった生活をしている。そこへ無断で立ち入り喰われたとて、文句も言えまい」


「黙れ!人間に被害が出てる以上勇者として黙っている訳にはいかん!故に貴様を殺す!」


「なるほどな。何故貴様は、人間を食った者を狩らずに余の元へ参る?」


「魔王、頭が悪いのか?魔族の頂点だからに決まっているだろ!」


「例えば、ライオンが野生動物の頂点だとしよう。熊が人間を食えば、貴様はライオンを狩にいくのか?」


「行く訳ないだろ!」


「食った魔族の方ではなく、余の方に来ているではないか」


「戯言はいい。行くぞ魔王!」


(魔王様、レベルの交換終わりました。しかし、魔力の解放はご勘弁を、私が消し飛びます)


(わ、分かった。ゴブちゃんが死んだら、私も生きていけない)


「勇者よ。それで私に挑んでくるとはな?私のレベルを確認したか?」


「貴様のレベルは60・・・ ?? きゅ、きゅうまん・・・だと・・・??」


「勇者様・・・」


「ど、どう言う事だ?確かに60だった筈」


「私達では・・・」


「やっと気がついたか愚か者共、貴様達に真実を話そう。魔王というものは、ただの秩序である」


「ど、どういう事だ・・・?」


「そう緊張することはない。余は人間と争う気は無い。余は、魔族が古よりの生活が出来るように守っている存在に過ぎない。その証拠として、魔族そのものが、人間の世界に攻め込んだ事は過去に一度もない筈だ。魔族には、魔族なりの秩序がある。その秩序を監視する事こそ余が存在する理由だ。余を殺せば、魔族の秩序はなくなるぞ?それでもいいのか?」


「それは・・・」


「余に協力すれば魔族による人間の被害をいつか無くす事を約束するが?」


「魔王に協力など!俺達を騙そうとは」


「最後まで余の話を聞くがいい。余の元に来ないと約束するならば、余の力を持って魔族の世界と人間の世界の間に結界を張り人間は魔族の世界、魔族は人間の世界に入れない様にしよう」


「信じる事など出来る訳ないだろ!」


「ほう?ならばレベル99999の余に挑むか?どっちが得か考えなくてもわかる筈だが?」


「くっ・・・。どうやって信じろと」


「信じてもらうしかないがな」


「勇者様」


「勇者、ここは信じるしか。こんな化け物に俺達じゃ」


「勇者様、ここは一旦退くしか」


「魔王、ここは信じるしかない。しかし、貴様が嘘を言っているのならば、必ず俺達は、どんな手を使ってでも貴様を殺しに行くぞ」


「余は嘘は言わぬ。信じて待つがいい」


「行きましたね。魔王様、何とか切り抜けましたね」


「ゴブちゃん、やった!やった!怖かった~

!」


「これからどうします?」


「勇者達、また来るかな?」


「ええ、必ず来るかと、恐らくレベル999が人間の限界レベルかと思いますが、それを超える方法を見つけて、いつか私のレベルを超えて現れるかと」


「神の御加護?もういい!魔王辞める!魔王やってると、命が幾つあっても足りない!」


「それもいいかと」


「ゴブちゃん、私が魔王辞めると、どうするの?」


「私は、いつまでも貴女様を御守り致す所存。これよりもどうか私に、我儘をお申し付けくださいませ」


「やったああ!ゴブちゃん、これからもよろしくね!」


「して、魔王を辞めて如何致します?」


「勇者達と約束した事をする」


「解りました。すぐに立ちますか?」


「うん!こんな所には、もういたくない!」


 玉座には一通の封筒が勇者宛に置いてある。

 封筒には、辞職願いと書かれている。


 暫くして、人間界においてゴブリンの様な大男と幼い少女が人間界と魔族界の境界に結界を張り、魔族による人間の被害が無くなっていっているという噂が人間の間で語られ始めていた。


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