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この世界には魔物が跋扈ばっこしている。
某RPG出てきそうな魔物の外見をしているものが、いたりいなかったり。
テンプレなろう小説のような世界ではあるが、もう少しはオリジナルをだな……
まあ何もかも普通すぎる俺には、お似合いの世界なのかもしれない。
散々泣いた俺たちは次の町へ向かった。
前の町、真っ白タウン一帯の魔物は、かなり強いらしい。それは魔王の城が近くにあるからだ、とアメリアがいっていた。なぜ知っているのか。
そのため俺たち二人は、物陰に隠れながら次の町に向かった。その途中で見た魔物は、水色のぷよぷよしたかわいらしいもの、夢の国に出てきそうなネズミの2種類。人は見かけによらないように、こいつらもかなり強いんだろうか。
道中に金貨が落ちていた。日本と同じように一と〇で表記されている。アメリアに聞くと、だいたいの食にホテル、装備がそろうほどの金貨らしい。
アメリアとはしゃぎまわった。
時和タウンに着いた。
拾った金貨で、この先強い魔物から逃げるための、用心の道具を買った。
買ったものは閃光玉3個に、音爆弾5個、移動低下術式玉1個。
少し道具の説をしようと思う。
すべての道具は、人間にも魔物にも効く。
閃光玉、文字どおり光る玉だ。使い方は、手りゅう弾と同じように、ピックを抜き、投げる。主に目がある魔物には効果がある。
次に音爆弾、これは爆竹とおんなじ要領で、火をつけると大きな音が鳴る。耳が発達している魔物に効果は絶大。
これはかなり高かった、移動低下術式玉。店の説明書きには「相手に当てると、その相手の動きが遅くなるよ」と書いてあった。術式? なんだろうか、仕組みが一番気になった道具だ。
アメリアは剣コーナーをすごい形相で眺めていた。まるで小さい子供が物ほしそうに、店のおもちゃケースを見るようなそんな感じだ。とくにがっつり眺めていたのは、日本刀の形をした長くて重そうな剣だ。眺めているのを横目に値段を見た。
結構高い、〇が6こ、さすがに今のひもじい時期は買えない。
しっかりとお金が無いと伝える。しょんぼりとしたアメリアの顔を初めて見た。申し訳ないなと思ってしまう。今度お金がたまったらプレゼントしてやろうかな。
そんなことを思いながら店を出た。
その時だった。
「はあっ! そこのかわいこちゃん! そこのショボい男より、この俺とどこかに行かない?」
は? ショボい男? いやしかしここは落ち着け、ここは大人の対応だ。
現代的な顔立ちのイケメンが、アメリアにいきなり話しかけてきた。
がっちりとした体格に、赤くてとても強そうな剣が装備されている。誰が見ても勇者と言えるほど、見かけは完璧な勇者様であった。
しかし、これがこの世界でのナンパなんだろうか。とっても威勢が良かった。
「ごめんなさい。生理的に無理です」
即座に彼女は即答した。しかしキッツいこと言うな。
「ちくしょおおおおおおお。お前が彼氏なのか? それならこのかわいこちゃんをめぐって俺と決闘しようぜ」
決闘、それはPVPといってプレイヤーとプレイヤーを戦わせることだ。
お互いのどちらかのライフをゼロにすれば勝敗は決まる。
昨日アメリアから教えてもらった。だからなんでアメリアは知ってるんだよ。
彼はそのかっこいい剣先を俺のほうに向けた。
「すまん、笑っちまった。意外とこういうのダメだったりするんだな」
笑み交じりにアメリアに話す。彼女は不機嫌だった。
「こういう、自分よがりな人はきらいです」
アメリアは今にもキレそうだ。歯ぎしりをしながら彼を睨み付けている。
こんなアメリアは初めて見た、今度から怒らせないようにしよう。なんて思ってしまった。
「おいっ、俺の話を聞けよ。」
と言いながらイケメンの男が、俺の裾をがっつり掴み上げ、恐喝のそれに入った。どんだけ治安が悪いんだ。とりあえず手を離せこの野郎。
「嫉妬か分かんないけどよ。なんでお前とPVP?しなきゃなんねーんだよ。それといい加減はなせ」
いつもの癖で一言多くなってしまったが、そんなことはどうでもいい。腕を取っ払おうとした。が力が強い。経験値的な差が結構あると、こいつの力だけで分かってしまった。格下を相手にするとはとんだバカ野郎だ。
とある記憶が蘇る。それは俺が中学の頃のことだ。DQNメンバーのリーダー核に、このような恐喝をクラスのみんなの前でされたことがある。確か先生にチクっただの、ああだのこうだの言われたんだったな。結局ただの私怨だった。本当にこういう輩は大嫌いだ。
こういう時にこそ冷静にだ。だがしかし、こいつに勝てるのか。
だが、アメリアの前で逃げるわけにもいかない。
「わかった、その勝負乗ってやるよ」
こんな格好のいいセリフを吐いてみる。生きているときに一度は言ってみたかった。
今の俺、すごいかっこいい。と思いながらアメリアに親指を立て向けた。ついでにウインクも付けてみる。これでもうアメリアは俺にメロメロだろう。
アメリアは、がっつり俺を見ていた。しかもすこしばかり顔も赤い。
完璧だ。アメリア攻略完了。
「おーけい、午後一時に噴水前な」
軽く俺を持ち上げていた彼が、そう言いつつ俺の裾から手を放した。
運よくかっこよく着地ができた。ここまでカッコイイ俺。思わず、にやつく。
「そうか、俺の名前は佐部佑。駆け出し勇者だ」
かつてこのようなカッコイイ駆け出し勇者がいただろうか? 否、断じていない。
「俺の名は絶炎のケンジこと、時雨剣慈、この世界で最強のギルドの頭を務めている」
と言いながらアメリアにウインクをする。すごいスカシ野郎で腹が立った。
アメリアは中指を立てていた。アメリアは本当にこいつのことが嫌いらしい。
そうしてあのスカシ野郎はどこかに行った。
圧倒的に装備も、この世界の知識の差もあちらが有利だ。どうするか。
攻略を考えていると、アメリアから。
「全くというほど力が違う相手、佑大丈夫なのですか?」
心配そうな眼差しで俺を見ている。女の子に心配をさせるわけにはいかない。
「大丈夫だよ、なんとかしてみせる」
もちろんそんな根拠はどこにもない。
いつもの考える癖で腕組をした。そうしたら道具ポケットから、先ほど買った道具が落ちた。
……これだ。ふふふふふふふふふっふっふ。俺の勝ちだ盆助野郎。
必勝法をイメージトレーニングをしながら、俺たちは一度、今日泊まる安いホテルに、道具を置きに行った。
噴水に向かう頃には完璧な戦術が思いついた。さすが俺だ。キャー佑さん完璧! と歓声が聞こえてきそうなほど、それはもう完璧すぎる戦術だ。
町の中央にある噴水エリアに着いた。ケンジという物騒な奴は、仁王立ちで俺を待っていた。ほんとうにこいつイケメン過ぎる。ちょっとした劣等感を感じてしまう、だが今はそれすらも力に変えてみせる。ボコボコにしてやる。
瞬く間に、ケンジの剣さばきを目当てにした、ギャラリーが集まってきた。
それもそのはず、彼はこの世界で1番強いギルドの頭だからだ。必然的にファンが多いのは当たり前のこと。
ケンジに向かい合うようにして俺は立つ。作戦どおりにギャラリーから剣を借りる。
「誰か木刀を持っている方はいませんか?」
ギャラリーの中から、木刀が飛んできた。いつの間にやらギャラリーは俺とケンジを取り囲むように集まっている。
「そんな研修用の木刀で何ができるんだ」
ケンジが笑いながら俺を煽る。絶対的な自信が彼にはあるのだろう。
「さあ、はじめようか」
せいぜいほざいていろ。木刀を拾い、剣先をケンジに向けた。
それに合わせてケンジの目はギラギラと、まるでどこかのデュエリストのような顔立ちだ。顔芸乙。
ゾクゾクしてきた。皆が俺を見ている。
先ほど考えた戦術を脳裏にもう一度巡らせてみる。いける完璧だ。
「んじゃケンジ、俺がこの試合の審判するわ」
彼の仲間だろうか、長いローブを着た青年がお互い向かい合っている、少し後ろに立つ。
「ジャッチメント、ケンジto、えっと君名前なんだったけ?」
ローブの青年は俺の名前を聞いてきた。雰囲気が台無しですよホント。
「あ、佑です」
初対面(一部を除く)の人には礼儀が正しい俺だ。
「おk、ジャッチメント、ケンジtoタスク。デュエル!」
ローブの青年の手がおろされた。
作戦どおりに道具袋から閃光玉を取り出し、素早くケンジの目の前に投げた。
凄まじい閃光がケンジを襲う。悠々と剣を取り出しいた彼だ、舐めプは万死に値する。
観客がざわめく。
「お、なんだ閃光玉か?」
「いや違う閃光魔法?」
始まりと同時の閃光で、観客は場の戦況を探る。
「目があああああああああああああああああ」
彼は目を抑えてふさぎ込んだ。どこぞのラピ○タ王のような、悲痛な叫びだ。
だがここは油断してはいけない。次の道具を取り出す。
移動低下術式玉、彼の足に投げ当てた。これで彼の移動の自由を奪う。
「何が起きているんだ!」
「すげえ、あいつ完全に動きを止めてやがる」
「ケンジファイト!」
観客が声援がヒートアップする。この場の人間のすべてが俺に釘付けだ。
華麗な頭脳プレイを見せる。大音量の歓声が、耳を伝い、脳裏で化学反応を起し、気分を高揚させる。初めての感覚でたまらない気分になった。
「畜生、卑怯だてめえ、しっかり剣で戦えよ」
地べたに情けなく座っている彼。圧倒的レベル差で戦いを挑んだお前は、もっと卑怯だけどな。
「あいつ、ケンジに道具だけで圧倒してるぞ」
「かっけえええええええええええええええええええええ」
「ネクラに見え、本性は卑怯ゲス野郎。たまらん」
「決闘なんだから剣で戦えや、ブサイク野郎」
「正々堂々と戦えや、ゴミ」
最後の締めへと駒を進める。
道具箱から音爆弾を取り出し、彼の耳元に放り投げた。
「鼓膜があああああああああああああああああああ」
ケンジの耳元から血が出ていた。勝ちこそ正義、そうおじさんから教え込まれてきた俺には何とも思わなかった。
「きゃあああああああ」
「凄い音だ、爆発魔法か?」
「爆発してねえよメクラ、どう見ても音じゃねえか」
「ケンジ終わったああああああああああああああ」
「ケンジ死すべし慈悲はない」
観客の声援は絶叫へと変わった。体の細胞一つ一つが歓声に反応し、気持ちいい気分になる。
「降参するか? そういえば見えないうえに、音すらも聞こえなかったな」
そう彼に言う、返答はない。完全に俺の勝利だ。
髪の毛を引っ張り上げ、一度も使っていない木刀を、後頭部に近い首筋に叩き込んだ。並大抵の人ならば確実に気絶をするところだ。
いくらレベル差があるとはいえ、さすがに彼も人間だ。前のめりに倒れた。
「無名が最強ケンジに勝っている件について」
「あいつ、つええええええええええええええええええ」
「わが軍は圧倒的ではないかぁ!」
「へへっ、アイツは俺が育てたんだぜ」
「あのブサイク野郎マジキモイ○ね」
「ケンジざまあああああああああああああああああああああ」
彼が倒れたと同時に、声援はさらに盛り上がる。ここの世界に来てよかったと改めて思てしまった。
「ハイ終了、お前やりすぎ、頭大丈夫か?」
先ほどのローブを着た青年が、倒れた彼を起させ、そう言い放った。
うん、さすがにやりすぎました。だけどあやまりません。
「あのな、そのバカのお守りをしないからこうなるんだよ」
やりすぎたとは思ったが一言いいたかった。ケンカを売ったからこうなる。
「耳から血が出てる。治癒魔法を」
そういいながらローブの青年は、ケンジに治癒魔法をかけた。
ケンジが光に包まれた。そして青年はケンジを担ぐ。
「お前ほんと許さねえから、とりあえず今度会ったら俺と勝負な?」
がっつり俺を睨み付け、ローブの青年はケンジを担ぎながらどこかに行ってしまった。
今回は相手がなめプをしていたから勝ったものの、さすがに次は確実に死ぬんだろうなとそんなことを思ってしまった。
だが、これでいいのかもしれない。人生でやってみたかったことを体験できたんだ。少しやりすぎたけどこれも俺らしい。
そんなことを思っている直後だった。
「佑! とてもすごかったです」
そう言いながら、アメリアが俺に抱き着いてきた。
く、苦しい。胸が。彼女の二つある大きな柔らかいものが、俺の顔を埋め尽くした。
「本当に心配してたんですから、でも佑の意外な一面が見れました。ほんとうに格好良かった」
彼女は泣いていた。人生で一度も、人にここまで心配されたことが無い俺。少しうれしくなったと同時に謝りたくもなった。
「ごめん、心配かけて」
彼女を抱きしめた。いやおっぱい当たる、もっと感触をだな。
「うん、もうこんなことはやめてください」
これは下がおっきくなるわ。まいいやもっとギュッとしよう。
この後めちゃくちゃギュッとした。




