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「結婚おめでとうございます。」
家の鏡の前で、結婚式の挨拶の練習をする。
今日は、学生時代に6年間片思いをした同級生の結婚式だ。
たしか、俺がアタックをするたびに、いつの間にか彼氏ができていたな……
結局一度も「俺たち付き合ってます!」ということにはならなかった。
時が経つとは悲しいもので、今ではいい青春だったなーぐらいにしか思わない。
彼女のおかげで、高校を辞めずに卒業することができた。そういう意味では、彼女は俺の救世主だったわけだ。
ネクタイを締め、ベルトを巻く。
過去の思い出を清算すべく、勢いよく家を出た。
結婚式の会場に着いた、結婚式とはいえないほど静かだった。
誰もいないのか、あたりを見回してみる。近くに腰の曲がった職員さんがいたのですこし話を聞いてみた。
「すいません、結婚式は今日ですよね」
どうやら集中して床を磨いていたようでピクリとも反応がない。
「あのぉ! 結婚式は今日ですよねぇ!」
以前、老人ホームに働いたことがある俺は、この手の扱いには慣れてる。
さすがに、1キロ先の人にも聞こえる俺の声が、通じないなんてことはない。
「うるせぇ!昨日じゃボケぇ!ブチ○ろがすぞぉ!」
職員さんが、モップを持ちながら俺を追いかけてきた。
全速力で逃げた。
いやぁ昔からこういうドジを踏むんだよな。ははははぁ……
よく昔から「おい!の○太2世!(略しての○太)」なんて呼ばれてたほどです。
気づいたら日は暮れていた。
かれこれ公園で1時間近くぼーっとしている。
唯一話せる同級生に電話をしたら
「お前だけに、嘘の日付を教えろって言われてたんだ、ごめん!」
と一気に言われ、なにも返すことができず電話を切られた。たくさん練習をした俺がバカみたいである。
「しょうがねえ、一人焼肉でも行くか」
俺の経験上、こういうときは、あまり深く考えず美味しいものを食べるといい。
ガキの頃は、俺はちょっとのことでクヨクヨしていた。
今ではしんみりと成長を感じている。
焼肉を食べ終わった俺は、帰るのが面倒くさくなったため、近くの安いホテルに泊まった。
ベットが少しばかり凹んでいる。俺の気持ちも凹んでいたため、ちょっとしたシンパシーを感じた。今日は風呂にも入らずに就寝。
うっすらと意識が戻る、いつの間にか見知らぬ空間にいた。
夢の中だろうか、全方向全てに白い霧がかかっている。
かすかに女性の声が聞こえる。
「……なたは、……すか」
「フェスト○ム!?」
いやぁ、夢の中でフェスト○ムさんですか。
パターン青、スフィンクス型?
「あな……は、佐部佑さんですか?」
テレビの生中継みたいなラグだな、俺の名前を聞いたのか。
「あ、はいそうです」
思わず敬語を使う。
いつの間にか霧は晴れ、真っ白な空間に浮いていた。これが死後の世界なのだろうか。
「すいません、私の名前も言わずに貴方の名前を聞いてしまって」
絶えず女性の声が聞こえる。
「いいんですよ」
「私の名前はアスクレーピオスといいます。えーと医学の神なんて呼ばれちゃったりします。」
神? 神ぃ!!!
驚いた。だが途中で野太いおっさんの声が聞こえたのにはもっと驚いた。
神がボイチェンを使っている光景が、そこにはあった。
「とりあえずわかりました、神でおっさんでもあるあなたが、何ゆえ僕なんかに?」
思わず口に出てしまうのが俺の悪い癖だ。
「バレちゃ仕方ねえな、えっとお前が勇者になってな。魔王を倒してきてくれよ、すんごい力あげるからさ」
いつの間にか、俺の前に独眼竜のコワモテおじさんが現れた。
オラついてて医学の神なんてすごいギャップ。
オラついてる某絵師さんもこれにはGJするわ。
「わかりました。報酬はなんでもいいんですよね」
昔、こういう小説を読んだことがある。確か現実で死んだあと、異世界に転生をするとかそんな内容だった。チート的な力を得て、異世界をハーレムを作りながら、魔王を倒してウハウハする内容だったはずだ。しかしラストを忘れちまった。
まさか本当に現実であるとは……
これは俺の時代が来ましたよ。ほんとこれ。
「う、うーむそうだな、何がいい?」
神様の顔が少し歪んでいた。焦っているようだ。
そう俺には望みがある。
高校時代をやり直して、あの子ともう一度やり直したい。
今思いついた。
「そうですね…… 今の記憶を継続したまま学生時代に戻りたいです。でも、いくらあなたが神でも、そんなことはできないか。はあ」
チラッと彼の顔を確認する。そしてすぐさま下を向いてガッカリアピール。
完璧だ。誰かにお願いするときには、これをすると良いと教育テレビで教えてもらった。
「できないことは無いと思うけど、正直、人間のお前にやっていいのかわからんわい」
悩んでいる。しかしハッキリしない人だな。ほんと見掛け倒し。
「できないなら、また死にたくないので止めます」
転生ができるように、少し後押ししてみる。これでできないなら潔くあの世に行こう。
「で、できるよ。ゼウスのクソ野郎に借りがあるから大丈夫だよ。」
チョロすぎだわ、これで神様とか、ちょっと心配になってくる。
転生と言えば職業。大抵の転生物語では、あちらの世界に行って職業訓練とかだけど、俺の場合はここで適職検査をして職業が決まるとのこと。
適職検査は、前にある棺桶に入ればおkだそうだ。
「実は転生したら生きていた世の中で、とりあえず良いことをしたら職業に影響されるんだってよ」
棺桶に入る前に一言、言っている意味がさっぱりだった。
「要するに生前、現実で良いことをしたら転生したときに便利ですよってことですね」
あの神様は、ちぐはぐな会話をするあたり、あまり会話していないんだろうな。
ということは友達もいないのかと、よからぬ心配をしてしまった。
「そゆうこと、んじゃその中で十分間眠ってて」
十分後。
ポーンと棺桶の蓋に当たるところにある、ディスプレイから結果が表示された。
ようやく、蒸し暑い棺桶から解放された。
俺は魔剣士がいいな、などと期待していた。
だが、やっぱり何事にも期待するものじゃない……
結果は聖職者だった。
「おめえすげえじゃん、三大超級職業の一角じゃん、俺のところでは初めてだわはぁ!」
神様が勢いよく喋りだした。すごい興奮していることが伝わってくる。
おまけに唾まで飛んできた。
「どれくらいすごいのか、ドラゴンボ○ルで例えてみてくださいよ」
「常時スーパ○サイヤ人ぐらい」
それはすげえ! とりあえず当たり引きました。
神がドラゴンボ○ル分かるのもすごい。
「ま、がんばれよな。お前みたいに気が合うやつは初めてだからさ。せっかくだから俺の最強の奥義を預けようと思う」
自信満々にいう神様、後にこれが大変なことになるとには今の俺には、まだわからない。
「なんすかそれ、オラすっげえワクワクしてきたぞ」
なぜかこちらまでテンションおかしくなってきている。
「聞いて驚くな。不死身になる魔法〈コード〉だ」
「な、なんだってぇ!」
まばゆい魔法に身を包まれた。
俺はそのあと気を失ったらしい。
気づいた頃には真っ白タウンにいた。(真上の看板にそう書いてありました)




