ものまね
最近、娘のミイが、妻の真似をすることに夢中になっている。
週末、僕がソファでうたた寝をしていると、ミイが突然立ち上がって指をさす。
「もう!休日だからってだらだらしてたらダメでしょ!」
声も口調も妻にそっくりで、思わず笑ってしまう。朝、僕が会社に行くときは、ミイは玄関で妻と同じポーズをとりながら、大きな声で「いってらっしゃい、あなた」と送り出してくれる。
なんて可愛いんだろう。愛されているな、と思う。
ある日の午後、僕は最近体調が優れず、いつもより二時間ほど早く仕事を終えて帰宅した。
玄関を開けると、キッチンから妻が夕飯の支度をする包丁の音と、リビングからミイの楽しそうな声が聞こえてきた。
僕は「ただいま」と言いながらリビングに入った。妻はまだ気づいていないようだ。
ミイは、おもちゃの皿を並べてままごとをしている。皿の上には、粘土で作ったらしいカラフルな食べ物が乗っていた。
ミイは、自分のおもちゃの熊の人形に向かって、少し大人びた声で言った。
「ダメでしょみいちゃん。これはパパのだから。ママとみいちゃんはこっちのお皿のご飯にしようね」
僕は思わず立ち止まった。
ああ、言われて気づいたが、確かに妻はいつも、僕が帰宅する頃には僕の分の料理だけを、少し多めに盛られた特別な皿に用意してくれている。僕と妻とミイの皿は、いつも別々だ。
僕は胸が温かくなった。
(僕の健康を気遣って、栄養を考えてくれているんだろう。僕のだけ特別な料理を作ってくれているなんて。本当に、愛されているなぁ)
僕はそう思い、体調の悪さも忘れ、キッチンで料理をする妻の背中に向かって、笑顔で「ただいま」を告げた。




