エレベーター
私は、新しいオフィスビルに転職しました。ここはセキュリティが厳重で、社員証をかざさないと行けない階がいくつかあります。
ある日の午後、僕は休憩のために1階に降りようとエレベーターに乗りました。他に誰もいません。
僕は「1」のボタンを押しましたが、エレベーターが動き出した直後、「B4」というボタンが、誰にも触れられていないのに、チカチカと点滅を始めました。
おかしいと思いました。
このビルは地下が3階までしかありません。
僕はすぐにボタンを連打しましたが、エレベーターは僕の操作を無視し、下降を続けました。
地下3階を通り過ぎ、エレベーターはさらに暗い空間へと降りていきます。
そして、「ピーン」という静かな音と共に、表示パネルは「B4」を示し、ドアが開きました。
目の前に広がっていたのは、驚くほど清潔で照明の明るい空間でした。壁は真っ白で、静かなBGMが流れています。
しかし、床には細い線が何本も引かれ、まるで病院の隔離病棟のような、異様な雰囲気がありました。
僕が動けずに立っていると、通路の奥から、白衣を着た女性がカートを押しながら、こちらに向かってきました。
彼女は僕を見るなり、満面の笑みを浮かべました。
「ああ、いらっしゃいませ。あなたのお食事が、ちょうど出来上がったところです」
僕は恐怖で何も言えませんでしたが、女性は構わず、エレベーターの中にまで入ってきました。
「新しいお客様がいらしてくれて、本当に嬉しいわ。これで、また少し、新鮮なものをいただけますから」
彼女はそう言って、僕の胸に下げられた社員証に、そっと指を触れました。
そのとき、僕は自分の社員証の裏面に、小さな文字で、採血の日付と血液型が記載されていることに気がつきました。
僕は悲鳴を上げ、再び「1」のボタンを連打しました。ドアが閉まり、エレベーターは上昇を始めます。
後ろを振り返ると、白衣の女性は僕に手を振り、静かに言いました。
「またね。でも、もうすぐ、あなたの『定期検診』の時期よ。次は、予約なしでは帰れないわ」
エレベーターが地上階に戻ったとき、僕は駆け出すように飛び出しました。




