私の娘は未来を描く
私の娘、ユリカは生まれつき、少し先の未来を「見る」ことができました。
彼女が見た未来は、常にクレヨンで描かれた絵として現れます。車の事故や、隣人の引っ越しなど、彼女の描いた絵は、必ず数日以内に現実になりました。
私たち夫婦はその能力を隠し、ユリカが悲しい絵を描かないよう、常に明るい話題で過ごすよう心がけていました。
ある日曜日の朝、ユリカはリビングで、いつにも増して集中して絵を描いていました。
描いていたのは、私と夫とユリカの三人が、食卓を囲んで笑っている絵でした。
「まあ、素敵な絵ね!これ、いつの未来の絵なの?」
私が尋ねると、ユリカは顔を上げず、静かに答えました。
「これはね、来週の火曜日の絵だよ。三人でおいしいケーキを食べるの」
私はホッとしました。明るい未来の絵でよかった。
しかし、ユリカは筆を止めず、絵の隅に何かを描き加えました。
それは、テーブルの下に描かれた、もう一組の小さな足でした。
「あれ?ユリカ、テーブルの下の足は誰の足?」
私が聞くと、ユリカは不満そうに言いました。
「ああ、これは邪魔ものだよ。早く消したいんだけど、描かないとダメだから」
私は「邪魔ものなんて描かなくていいのよ」と言って、その日は特に気に留めませんでした。
そして、来週の火曜日。
夫が仕事から帰り、私たちは絵の通り、食卓を囲んでケーキを食べました。絵と同じように、三人で笑い合いました。ユリカの予言通りになったのです。
食事中、ふと、ユリカが私の膝を叩きました。
「ママ。邪魔なもの、ちゃんと消えたよ。ね、よかったね」
私は「ええ、よかったわね」と答えましたが、正直何のことを言っているのか分かりませんでした。
夫が「あれ?」と言いながら何かを床から拾いました。
それは猫の首輪でした。
私は娘が未来なんて見えていないことに気がつきました。




