第10話 はじめての魔法を使ったら娘が増えちゃった!?
水って、本当に偉大。水がない生活なんて考えられないし、水があるところじゃないと、人は
アンファンスは大きな川のそばにあるしね。
よく考えれば、お母さんのお腹の中だと、ずっと水の中にいるんだよなぁ。
生まれたばかりの赤ん坊も、産湯に入らされて、体をキレイにしてもらう。
大人になってからも、掃除にお洗濯、料理にだって水は欠かせない。
本当に、私たちって水に生かされていると思う。
でも、なんで人間って涙を流すんだろう。
悲しい時も嬉しい時も、感情がたかぶると自然と涙が出ちゃう。
水がないと生きていけないのに、感情を表に出すためだけに涙を流しちゃうなんて……。
それだけ、悲しいって、嬉しいって、大事なのかな。
ううん。
私たちが大事にすべきなんだ。
自然も神様も、本当に大事なことを教えてくれない。大事にする方法も教えてくれない。
だから、涙を嗤っちゃいけない。
大事にして、受け入れないといけないんだ。
涙を我慢することが、一番辛いんだから。
「リーたん……」
体が重い。
リーたんが乗ってるだけじゃない。
昼過ぎまで寝た時みたいにダルい……。
頭の中でハチャメチャに暴れられたみたいに痛いし。
「……あ。ミース」
リーたん、ひどい顔。
涙でグチャグチャだし、鼻水も垂れてるよ。
昨日も泣いてたし、私、リーたんを泣かせてばっかりだなぁ。
これじゃ、みんなを笑わせるなんて夢のまた夢よ。
もっと頑張れ、私。
「ねえ、本当にミース?」
「うん。ミースだよ」
「精霊に乗っ取られてたりしない?」
「大丈夫だよ。私はリーたんが大大大好きなミースだよ」
「じゃあ、証明して」
なんで胸に顔をうずめているの?
あ、そっか。
「大丈夫だよ。私はどこにもいかないから」
リーたんの髪、いつ触ってもサラサラしてるし、ほのかに甘い香りがする。
孤児院にいた時のリーたんは泣き虫で、こうやって頭を撫でて慰めてたなぁ。
「ミースだ。絶対にミースだ」
頭の撫で方で本人判定されるんだ。
リーたんは猫か何かですか?
まあ、最高にかわいいんだけど。
「もう会えないと思ったよ……ひぐっ」
ごめんね。心配させちゃって。
今はいっぱい泣いて。
その涙は宝物だから。
リーたんの思いっきり泣けるところって、大きな魅力だと思う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
どれだけ頭を撫でてたかな。
1時間は超えてそう。
足の痺れが限界になる前に落ち着いてくれてよかった……。
リーたんはいつもの調子を取り戻したみたいだし、ちょっと質問していこうかな。
「私ってどうなってたの?」
「……たぶん、精霊に体を乗っ取られかけていたんだと思う」
「うわ、こわ。精霊ってそんなことができるんだ」
「普通はない。すんごく気にいられたんだと思う。水の精霊に何かした?」
うわー。
心当たりが多すぎる。
「いっぱい話したり、お茶を出してもらったりしました」
「……はあ。まあ、無事だからよかったけど。細かく説明しなかったわたしも悪いし」
ん?
いつもより言葉が柔らかい気がする。
デレてきた?
「もう私って大丈夫なの?」
「大丈夫だと思う」
「じゃあ、もしかして、魔法が使えるようになってる!?」
「なってると思う……けど、怖くないの?」
たしかに、命の危機だったみたいだし、怖がるほうが当たり前だよね。
でも、私はこれぐらいではへこたれない!
私自身が死ぬことぐらい、全然怖くないんだから!
「よし、早速使ってみよう!」
「……まあ、別にいいけど」
リーたんにはちょっと呆れられたけど、今は魔法を使いたいの!
――って、あれ?
「えっと、呪文ってどんな感じだっけ?」
すっかり忘れちゃった!
あ、リーたんが地面にカンペを書いてくれた。
さすが私の幼馴染にして娘。わかってる!
「じゃあ、やってみるね」
精霊を感じて、精霊の方をしっかりと見て――呪文を、誉め言葉を唱える。
【《〈 水は命を生み出す揺りかご 不浄を清め 洗い流し あまねく世界をめぐる 果てしない抱擁 〉》】
う~~~~~~。
カッコつけた言葉、すんごいムズムズする!
いつもありがとう! 水の精霊さんマジぱねえっす! マジ尊敬っす! ってノリじゃダメなの!?
そういえば、あのミーちゃんってどうなったんだろう。
もう会えないのか?
クソガキだったけど、ちょびっとだけ寂しいかも。
【《〈 水瓶 〉》】
まあ、初めてだからそんなに威力はでないよね――って!
ものすごい出てるんだけど!?
しょんべんぐらいしか出ないかなーって思ってたら、消防車のホースぐらい出てるんだけど!?!?
えっ、これヤバくない!?
どうしようっ!!!
「ちょっ、リーたん、これどういう――」
「ミース、こっち向けないで……あばばばばばばば」
「あ――――――!!!! リーたあああああああああんん!!!!」
リーたんが流されていく――――――!!!
あっ、やっと水が止まってくれたっ!
すぐに助けに行かないと!!!!
「リーたん、大丈夫!? ごめんね」
あれ?
リーたんの顔、なんだかニヤニヤしてない?
「魔法ってやっぱり面白い」
わーお。
魔法バカ、ここに極まれり。
「本当に、魔法バカなのネ」
「「……え?」」
どこからか声が聞こえたんだけど……。
それにこの声、もしかして水の精霊のミーちゃん?
「こっち、こっちダヨ」
すぐ近くから声が聞こえてるのに姿がない……。
肩とか背中にもいなさそう……。
って、胸の間でくつろいでるんだけど!?
女の体になったばかりだから盲点だったわよっ。
「やっ!」
あれ?
精霊って形がないんじゃなかったの?
なんだか羽の生えた小人みたいに見えるんだけど。
まるで妖精みたい。
「ボク、ミースのおかげで生まれ変わったんダヨ?」
「どういうこと?」
「名前をくれたじゃん! それに血もちょこっともらって、ボク、妖精になったんダ」
え?
精霊から妖精にジョブチェンジしちゃったの?
ちょっと私のおつむが悪すぎて理解が追いつかないんだけど。
「つまり、ミースと血の繋がった体をもらったノ。これからもよろしくネ、ミースママっ!」
「……マジですか」
えっと……。
端的にまとめるとこうかな?
女体化してから2日目。
私、娘を産んじゃったみたいです。
…………たはは。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
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新しい家族(?)も加わり、10話にしてかなりにぎやかになってきました!
この3人の話をもっと読んでみたいと感じましたら
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