断章3 刺激を追い求める者
刺激が欲しい。
この世界に生まれ落ちたからには、自分が存在したという証を刻みたい。
未知のものに出会い、胸が踊るような生き方をしたい。
とある小人族の青年の願望。
コンスタスは人生に刺激を求めていた。
***
「ワタシの勇者パーティに入らないか?」
20歳も過ぎ、ひとりの小人族として故郷を離れ仕事を探していた時。
3人で構成された勇者パーティに出会った。
そのパーティのメンバーはヒューマンの女とエルフの女とドワーフの男で、種族性別関係なく、諍いのない平和なパーティであった。
(まだダスケンデールに来て間もないし……とりあえず勇者パーティに入れば面白いことができるんじゃないかな)
コンスタスは軽い気持ちで、そのパーティに加入した。
しかし、加入して3週間ほど経過した頃だろうか。
彼は気づいてしまった。
自分の実力が抜きん出ている。
幼い頃から才能に恵まれており、そこに技の修練を重ねてきたことで、彼の実力はダスケンデールでも相当なレベルにまで到達していた。
現在所属しているパーティでは、自分よりも圧倒的に強い敵と戦うことができない。
人生とは刺激だ。
冒険なのだ。
理不尽に叩きのめされ、苦難を乗り越え、死ぬ思いで掴む栄光。
それはこの勇者パーティだけでなく、この街全体の勇者パーティに言えることだった。
いわば公務員のような仕事。
給料は安定している上に、敵も確実に倒せるように万全の状態で挑むことになっている。
仲間は優しく、一緒にいて楽な者達ではあったが、圧倒的に何かが足りなかった。
やる気だ。
安定した仕事にその欠如は付き物かもしれない。
コンスタスに彼らを非難するつもりは一切なかった。むしろ、仕事がなかった自分を拾ってくれた彼らに感謝もしていた。
しかし、彼の求める人生は違うのだ。
勇者としての仕事がないからといって、技の修練もせずにのんびり暮らしている仲間達と、何もなかったとしても常に技を磨き続けるコンスタスでは――違うのだ。
「オレ、冒険者になろうと思う」
全員の顔を見渡し、そう言った。
「いいのか? 冒険者は茨の道だと聞く。収入も安定しないし、常に命の危険にさらされ続ける」
ヒューマンの女の目が細くなる。
反対するつもりはなかった。
心からコンスタスのことを心配していた。
勇者パーティとしての生活はあまり不自由がない。それこそ刺激は少ないが、余裕を持って暮らすことができる。
「うんっ! 勿論それはわかってるさ!」
まるで子供のようにあどけない顔で、屈託のない笑みを浮かべる。
残りのふたりも頷いた。
わざわざ険しい人生を歩もうとする人の気持ちが、よくわからなかった。それでも、不安定の渦に自ら飛び込んでいくコンスタスこそ勇者だと称え、握手を交わした。
「またどこかで会えるかもしれないな」
ヒューマンの女は言った。
短髪で、中性的な整った顔立ちをしている。
「立派な冒険者になったら、オレの名前がダスケンデール中に広がるさ。あと数年もすれば、オレは英雄になってるね、フフン!」
コンスタス・ブリトール。
刺激を追い求める者。
栄光を追い求める者。
こうしてレッド達に出会った彼は思った。
ここでなら、危険に満ちた最高に面白い人生を送れるかもしれない、と。
《次回19話 小人とダークエルフの戦いに決着がつく》




