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コメディー系

コント『モテマイスターの先祖代々伝わるモテ術』

作者: 蜜柑プラム

※一部下品な表現がございます。


 喫茶店。

 ミックスジュースのストローをすすり、

 机に向かって大きな溜め息をはく『モテない男』。


「はぁ、モテたいなぁ」


 その隣に座っていたのは、

 『モテマイスターを自称する男』

 と、背中にプリントされたジャケットを着た男。


「モテたいかい?」


 はっ、と顔を上げて隣の席に振り向くモテない男。


「はい、すごく、すごくモテたいんです」


 モテマイスター、らしき男は、手に持ったコーヒーカップをゆっくり下ろし、その鋭い目をモテない男に向けた。


「そうか……。なら、オレが教えてやろうか」


 モテない男は目を輝かせ、モテマイスターらしき男に体を寄せる。


「え、え、ほんとに? こんな僕でも、ももも、モテれるんですか!」

「あぁ。オレはモテマイスターだ。先祖代々伝わるモテ術を会得しているからな。お前さん、ラッキーだったな」


「お、おぉ願いします! 教えて下さい! その先祖代々伝わるモテ術を僕に教えてください!」

「ふむ。まずはだな……」


「(コクコクッ)」

「まず、そうだな……あー……」


「はい……」

「服を着ろ」


「え?」

「え?じゃない。今すぐ服を着ろ。スタバで素っ裸はさすがにモテない。早く服を着ろ。今っすぐだ」


「わっわ、分っかりましたよ。……よいしょ、よいしょ。裸ってだめだったのか……よいしょ……着ました! これで、モテますか?」

「次は……そうだな……、その頭に乗せたウサギ耳の付いた帽子をとれ」


「えっ、このウサギ耳の帽子ですか」

「そうだ。そのクソ恥ずかしいウサギ耳の帽子をとれ。早く、今すぐだ」


「えっ、えっ? どうして? これは僕のおじいちゃんの形見なんですよぉ!」

「うるさい、とれ。じいさんの形見かなんだか知らないが、ウサギ耳の帽子をつけてたら女子というのはヒクんだ。ふつうにキモいからとれ」


「うぅぅ。おじい……ちゃん……」

「まあ気持ちは分かるさ。おじいさんの墓参りは毎月しろ、きっと許してくれるさ。モテとおじいさん、どっちが大事なんだ?」


「モテ!」

「よし」


「イエス・サー!(すぽっ)とりました。これでもうモテるんですね」

「まだだ。次はだ。顔を洗え。その、ガイコツみたいなフェイスペイントを落とせ。今は4月だ。ハロウィン以外でガイコツのフェイスペイントをしてはいけないんだ」


「うそでしょ! 去年の10月にガイコツのフェイスペイントをしたら写メ撮らしてって言われたんですよ。だからモテると思って、それ以来毎日やってたんです!」

「いいか、よおく覚えておけ。毎日フェイスペイントをやっていいのはヒール役のプロレスラーだけだ」


「そう、だったのか。わ、わかりました。(ゴシゴシ)落としましたよ。これでいいですか? これでもうモテますよね?」

「お前……」


「モテます? モテますか?」

「お前なかなか、キュートな顔をしているじゃないか。お目々がクリッとしてて、肌がツヤツヤじゃないか」


「まじっすか! モテ期きたっすか!」

「よ、よかったら……、オレと……、あ、いや、なんでもない」


「オレと? なんですか?」

「いや忘れてくれ。おほん……。それよりもだ。まだ終わってない」


「まだダメですか」

「初めに言うべきか迷ったんだが、お前は、人の話を聞く態度がなってない。人が話している時に、その……両手で股を()くのをやめなさい。絶対モテない。……そう、それだ、人が話してんだから股は掻くな」


「これだめなんですか。……じゃあ、……」

「ケツを掻くのもだめだ。それも存分にみっともない」


「はぁい……」

「ワキもだめだ」


「じゃどうすればいいんですか! なんにも掻かずにいろって言うんですか!」

「なんにも掻かずにいろって言うさ」


「なんにも掻かずにいろって言わないで下さい!」

「うーんしかたない。そういうやつも今まで何人も見てきたからな……。んなら、上着のポケットに両手を入れてお腹を掻いておきなさい」


「んー、こうですか? なんかやりづらいなあ」

「そうだ。だいぶマシだ。なるべく小さく掻くんだぞ」


「あー、股掻きたいけど。モテのためだから、がんばりますよ。股が……」

「よし。これでお前はモテる。オレが保証する」


「やった。じゃあさっそく、あそこの女性に声をかけてきます。やるぞぉ」

「いや待て、オレが見本を見せる。お前はオレのテクニックをよぉく見ておきたまえ」


「分かりましたマイスター! ついていきます!」

「やあ♪ そこの可憐な女子くん、オレたちと……、え、ちょっ……、なんで……」


「……叫んで逃げて行っちゃいましたね……?」

「な、なぜだ」


「ん? 店員がこっちに来ましたよ」

「なんだなんだ? ん? なにっ? オレの? 頭に? うんこが乗ってる?……え、これだめなの?」


「いやあ。イカしてるなぁって思ってたんすけど。その頭のうんこ」

「だよなあ? え? だめ? ……へえ、あ、ふーん……」


「……」

「そっかぁ……」


「……」

「んよし。誰かにモテる方法を教えてもらいに行こう」


「ついていきます! マイスター!」

「コーヒー、全部飲んだら行こっか」


( 完 )

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