第二章 第一話 2年後
カズキ・シセンが転生して初戦闘を終え、ステータス確認後にした事は住処を確保するという当然の行動だった。
草原を出て魔物が住まう森へ足を踏み入り、武術と魔法の訓練に勤しむ生活を続けていく中でステータスや身体に変化が見られた。
まず、属性魔法と古代魔法である空間魔法を取得。
属性魔法を1つ取得した時点で、生活魔法という生活をする上で適切な魔法を取得出来るようになった。
解放できる全ての魔法を取得し、全14の魔法を扱い生活基盤を整えていった。
生活を続けて2年の月日が経過した今、カズキは森から出ることをーー
微塵も思っていなかった。
住処は森の中心地点に存在する大木の上に、器用に木材を組み合わせて作ったツリーハウス。
ハシゴはなく、跳躍スキルで出入りしている。
食事は自然の恵が得られ、魔物を倒せば肉を得られる。
全鑑定スキルで食用か、そうでないかの判断もつく。
不自由のない自然との生活に馴染んでいたカズキに、森を離れるという考えはなくなっていた。
特にカズキがのめり込んだのは、前世で会得した『紫閃流』に魔力を帯びさせ体術をいかした、戦闘訓練。
初めはただ、身体に魔力を意識して流す事だけでも苦労していたが、今では自然にこなす事が出来ている。
これからも同じ生活が続く、そう思っていたがこの日は変化が訪れた。
カズキが生活する森に、一体の魔物が姿を現した。というよりも、腹部にキズをおい血を流して倒れていた。
(魔物が倒れている?近くに魔物は…いないか、白い魔物なんてホーンラビット以外に見たことがない…犬型のようだけど…大きいな)
少し離れた茂みに身を潜めて観察していると、魔物の呼吸が浅くなっていくのがわかる。
(他の魔物とは雰囲気がなんとなく違うような…回復させて…無属性魔法でテイムさせれば…いけるか?)
カズキは白い魔物にゆっくり近づき、光魔法『ハイヒール』を唱える。
魔物の体を薄黄色い光が包む。
ポーションは良質な水と薬草、魔力を注ぐことで作られるが、カズキには光魔法があるので必要がなかった為に手持ちに存在しない。
その為の『ハイヒール』だ。
そうこうしている内に、魔物の腹部のキズは塞がり元気を取り戻した様だ。更にカズキは、生活魔法で魔物の体の汚れを落とし乾燥させた。
するとどうだ、白い魔物はより輝く美しい毛並みの魔物に変わっていた。
(犬型とはいえこれは…オオカミか?)
『感謝する。』
「えっ」
キョロキョロと辺りを見回すも誰もいないことから、目の前で佇む魔物が声の主ではないかと思わーー
『我の声が聞こえぬか人間』
はい、確定。
声の主はオオカミさんでした。
「あ、ああ。聞こえる」
返事をするとオオカミさんは黄色い目を丸くさせ驚いた様な表情をした。
『我の声が聞こえるのか?!』
「ああ、全言語理解っていうスキルを持って『バカな!!』ん?」
『あ、いやすまない。それにしても全言語理解だと?そのスキルを持つのは我ら神獣のみでは?まさかお主…神獣なのか?』
「僕は、人間だよ。ステータスにも人間族と表示されてるし。ただ、神様からスキルを貰っただけさ。」
『神に会ったのか?!』
「会ったっていうか転生の前に話したというか…」
『お主、転生者であったか。ならば何故人間の街ではなく、魔物が住まう”悪食の森”におるのだ?』
(ここ悪食の森って場所だったのか。
正直に話した方が良さそうだな。)
「実はーー」
僕はオオカミさんと会うまでの経緯を話した。
『なるほど、理解した。』
『ならば我をテイムしてくれないか?』
(まさかのオオカミさんからの提案!)
『我の寿命はまだ先。少しくらい人間に仕えたところで損は無い。それに”神の使徒”が何をなすのか気になるというのもある。』
(オオカミさん優し!)
『聞いておるのか?』
目が点になっている僕は、慌てて返事をした。
「聞いてる聞いてる!超聞いてる!じゃ、テイムするよ?」
テイムすることをイメージしてオオカミさんに手の平を向ける。
「汝、我に仕えるものその力をもって契約を交わせ。汝の名はーーヴィズ」
オオカミさんとの間に繋がりのようなものを感じた。
『我はこれよりヴィズ、フェンリルのヴィズと名乗ろう』
「え?!フェンリル?ちょっとデカいオオカミじゃなかったのか!」
これが後に、神の使徒と共に歩んだ神獣フェンリルのヴィズとの出会いだった。
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