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クリエの絵本  作者: 彼方タクト
8/9

七章




時は流れ、60年後…




「アナベルグランマ!

またあのお話を聞かせてよぉ!」


「もう、グランマ疲れちゃうでしょ?」


「いいのよ、イザベラ。

…シルヴィアこっちにいらっしゃい」


シルヴィアはアナベルの膝の上に座った。








昔々、世界は壊れかけていた。


地は荒れ、水は濁り、緑は枯れ果てた。


それは人が汚したのだ。


神様は大変怒り狂い


「人を一匹残らず消してしまえ!」


と、世界を創り直すことを決意し、

地上に天使を送った。


まず、人が増えないように

地上に魂を返すのをやめた。


そして、人から光を奪った。


人にとってとても残酷な世界。


そんな中でも愛が芽生えることもある。


中将の家に連れてこられたレクシーと

中将の妻アナベル。


2人は出会うべくして出会った。


2人は女性同士。


同性愛者は子をなさない者とし、

性の反逆と見なされて

殺されてしまうのだ。


そう、

この2人も例外ではない。


密かに愛し合うも

中将に見つかってしまい、

裁きを受けることになった。


こうして処刑されてしまったが、

レクシーは神様に出会った。


「地球を焼き払ったから

創り直すのを手伝って欲しいんだ

人間を知るためにも話が聞きたくてね」


「約束して欲しい。

創造を手伝う代わりに、

私の記憶は消して構わないから

またアナベルと娘に会わせてくれ」


「いいよ〜

君たちが出会えるように

アナベルの記憶は消さないでおくよ

まぁ、地球を創り直すって

物凄い時間がかかるんだけど、

それに合った対価ではあるかな?」


数百年後

アナベルは神様に出会った。


「地球を創り直すのを

レクシーが手伝ってくれたから

彼女との約束を守るために

君を呼んだのさ」


神様は光を大事そうな抱えていた。


「この子はイザベラさ

レクシーが産んだ子だね

うーん、君たち恋人だから

君の子でもあるのかな…?

僕よく分からないけど。」


神様はアナベルの腹に

光を贈った。


「ありがとう」


「僕は人が作り出した言葉で

ありがとうが一番好きなんだ!

それにいいよねぇ、

人には名前があってさ…」


「あなたには名がないの?」


「僕は創造主だから、

人みたいに親がいないんだ

だから名前がないんだ。」


「ものを作るって意味で

クリエーターという言葉があるんだけど

クリエなんてどうかしら?」


「僕に名前をくれるのかい?

今日からクリエだ!」


アナベルは転生のお礼に

神様へ名前を送った。


そしてレクシーを探しに

地球へ旅立って行くのだった…








「なんだ浮かない顔をして?」


「アナベルママが読み聞かせてる絵本

あれ、昔ママが書いたものなんだけど…

ちょっと子供に読み聞かせるには

難しいんじゃないかしら…と思って。」


「そうか?

シルヴィアは目を輝かせているぞ?」


「うーん、ちゃんと理解しているのかしら…

最後はハッピーエンド

っぽい終わりだけど、

結構怖い話よね、アレ」


「まぁ、確かになぁ…」


「登場人物のレクシー

ってパパのことらしいのよ。

それにイザベラ。私も出てくるし…」


「え、そうなのかい?!

それじゃ、君のご両親の前世のお話

って設定なのかぁ〜

意味が分かれば

普通に面白いじゃないか!」


「娘の私からしたら

2人の馴れ初め聞かされてるみたいで

ちょっと恥ずかしいんだけど、

確かにね…設定は素敵なのよね。

ただ、パパが亡くなった時、

ママが全く泣かなかったのも不思議で。

何となく違和感って言うか…

普通最愛の人が亡くなったら…ねぇ?」


「考えすぎだろ?

お義母さんはきっと

みんなを心配させないように、

泣くのを我慢してたんじゃないか?

それにあの子も歳を重ねれば、

今とは違う見え方ができるようになるさ」


「そうよね…」








「アナベルありがとうぉ」


「……シルヴィア?」


「僕との出逢いを絵本にしてくれて…」


「まさか、クリエなの…?」


「うん!100年も待てなかったから

ちょっと前から来てたんだ☆

ごめんねぇ、シルヴィアねぇ、

居ないんだぁ…

ちょっとの間の空想なの

僕が天界に帰ったら皆忘れちゃう

君に近しい人間が、

孫しか思いつかなかったんだぁ…

僕は頭の貧しい神様だね…」


「少し、驚いたけど…

創造主たるあなたに

できないことではないわね。

いいのよ、気にしないで

それよりどうしてあなたが地上に?」


「君を迎えに来たんだよ!」


クリエは自慢げに笑った。


「そう、もしかしてテオを…

レクシーを迎えに来たのもあなたかしら?

なんとなくだけど、そんな気がしたの。

亡くなる前に、

誰かを睨み付けているようだったから

クリエが来たんじゃないかって…」


「うん!そうだよぉ

天使じゃなくて僕が直々に来たんだよぉ

君たちはお気に入りの人間だからね!

イザベラのお迎えも僕がするよぉ〜!

時が来るまでレクシーには、

また創造の手伝いをしてもらってるの!

まぁ、君たちは

あっちでは会えないんだけどぉ…」


少し後ろめたいという表情を

クリエは浮かばせている。

私はクリエを抱きしめ

子供をあやすように

背中をさすってやった。


「本当はもう確実な約束は無効なんだけど…

来世ではまた会えると思うよぉ〜?

レクシーは怖いんだ…

神様の僕を脅すんだ…

僕が操作しなくだって、

君たちほどの魂の繋がりがあれば、

また出逢えるはずなんだけどなぁ〜

わかってて僕をいじめてるんだろーね

暇つぶし程度なんでしょー」


「そう、急がなくたって、

またきっと会えるわよね

それに私は頑固だから

いくらだってあの子を探し回るわ。」


「ねぇ、アナベル〜?

君はこの世界で幸せだったのかい?

どこか直して欲しいところはないかい?

君の頼みなら喜んで修正するよ?

まぁ、君たちは寿命が違うから

同じ日に死にたいとか

同じ日に生まれたいとかは…

ちょっと困っちゃうんだけどぉ

レクシーが先に逝くの気にして

僕とケンカになったんだよねぇ

空気読めとか言われたのぉ

多分、まさに君が

僕が来てるんじゃないか

って思った時にね!」


「ないわ。レクシーと過した日々は

本当に幸せだった…

またイザベラにも会えて

家族として過ごせたもの。

不満なんてなかったわ…!

あの人が亡くなっても

悲しくはなかった。

別れではなく始まりだから…」


「そっかぁ!

この世界を気に入ってくれてよかったよ

作った甲斐があったってもんだぁ

レクシーもきっと喜ぶ!!

あ、そろそろ行こうか。アナベル

あんまり帰りが遅いと、

レクシーに怒られちゃうぅぅ」


「ええ、クリエ」







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