表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリエの絵本  作者: 彼方タクト
5/9

四章


午後のお茶の時間。

夫人と少女は今日も一緒に過ごしていた。


「そろそろ貴女の名前を

聞かせて貰えないかしら」


「ダメですよ、夫人」


「まだダメなの?」


「毎日同じ質問飽きないですね。

規則ですからダメです。」


「それも聞き飽きたわぁ…

本当に退屈ね。

何もやることがないんだもの」


「地上は危険ですから」


「神だの天使だの…

見ても居ないものや天災を恐れて

モグラのように暮らせだなんてね」


夫人は退屈そうに

深く溜息を着いた。


「あ、そうだ。

夫人の名前教えてくださいよ!

私は名乗れませんが、

夫人が私に名乗るのは

規則違反にはなりませんよ?」


「ああ、そういえば言ってなかったわね。

私はね…アナベルよ。

アナベル・ガルシア

2人の時は名前で呼んで頂戴!」


「はい、アナベル!」








鳥の囀り。

今朝は珍しく山のような

通知音が鳴り響かない。

爽やかな目覚めだ。

眼鏡を手探りで探していると、


柔らかい。人肌…?


俺の隣にはアナベルが

気持ちよさそうに寝ていた。


「うわぁあああ、ちょっと待て、

待ってくれっ!!!!

淫行未遂?に、未成年誘拐、無断外泊…

いや、待て、やってないよな??!」


いくら記憶を掛け巡らせても

アナベルを連れこんだ所までしか

思い出せない。

気が触れていたにしても、

無理やり部屋に連れ込んで、

あんな泣きじゃくって…滅茶苦茶だろ。

昨晩の自分を殺してやりたいよ…!!?


「朝からうっるさいわね…

何を喚いているんだか…

あ、シャワーとTシャツ借りたわよ」


「はぁ?!」


可愛い…。めっちゃダボダボ…。

何だこの生き物…って、

いやいや、待て。そうじゃないだろ。


「なんで、そんな普通なの…

適応力ヤバくない…?」


「何を今更。

貴方あの後気を失ったのよ?

昔の小さくて可愛いレクシーなら

抱っこして運べたけど、

ここまでテオを運ぶの

大変だったんだから!

全然離してくれないし!」


あ、やってなさそう大丈夫そう。


「何清々しい顔しちゃって…

それにさっき嘆いてた事だけど心配ないわ。

私の両親海外にいるから。」


「は?アナベル家に1人なわけ?」


「日中お手伝いさんが来てるけど、

ほとんど顔を合わせないから。」


自分の心配ばかりして情けない…。


「済まなかった…

君を無理やり抱かなかったみたいで

正直、安心してる。」


「抱かれても良かったわ。

いっその事、遊ばれて酷く捨てられた方が

諦めがつくもの。」


「そんな事女の子が言うもんじゃない。」


「それにテオが

私を誘拐して乱暴したところで、

誰にも通報されないわよ?

私でさえもね。」


アナベルは俺の肩に腕を回した。


「アナベル、男に対して

その手のからかい方は良くないぞ」


「からかってなんかないわ。

私を抱いたら思い出すかも…よ?」


「〜〜〜だぁ、やめたまえ」


俺は顔を覗かせるアナベルの頬を

手で押しのけた。


「あら、据え膳はなんちゃら

って言うのに〜

私に魅力がないのかしら」


アナベルはベッドから下りると

制服に着替え始めた。

年齢の割に発達した胸。

程よく肉付きのいい体。

くびれた腰。

安産型のおしりなんてもう最高。

魅力がないはずがない。

そんな女がベッドに居たら

飛びつかない男は居ないだろう。


なんでこんな子供に

こんな色気があるんだ…


「私は学校に行くわね」


俺は玄関でアナベルを見送る。


「もうここへは来るなよ。ストーカー」


「それはどうかしら?」


「そんな事言って…」


アナベルは俺の頬にキスをすると

不敵な笑みを浮かべた。


「いってきまーす」


本当に調子が狂う。


俺はグダグダ文句を垂れながら

アナベルに玄関を閉められた。








仕事から帰り家に着く。

今日は残業で

ギリギリ終電に間に合った。

クタクタだ。

風呂も入らず倒れたように

ベッドに横たわると、

直ぐに眠りに着いた。


またあの夢だ…


午後のお茶の時間。

少女はいつものように

夫人の部屋に行くが、

夫人の姿はなかった。

しばらく座って待ってると…


「ねぇ、これを見て!」


素敵なドレスを泥だらけにして

駆け寄ってくる。


「もう、なんでこんなに泥だらけ…

顔にもつけて…子供じゃないんですから…

外に出たんですか?

危ないじゃないですか…」


呆れた表情の少女は、

夫人の顔に着いた泥を

ハンカチで優しく拭う。


「この館からもっと下を掘って、

汚染されてないだろう土に

種を植えてみたの!

土も深さでいくつか試して…

鉢も自分で作ったから、

不細工だけど…」


両手に包み込む鉢植えを

照れくさそうに見せてくる。


確かに不格好な形の鉢。

だが、確かに小さな芽生えがあった。


レクシーは目を輝かせて

涙を浮かべていた。


「まだ、可能性があったのですね…」


「一緒に育てない?

私達に子は宿せないけれど、

この子を我が子のように育てましょう?」


「えぇ、アナベル!

名前はそうね、レクシーにしましょ」


夫人は少女の言葉に

何か察したように口を開いた。


「まさか…

そんな風に名前を聞かされるなんてね」


















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ